二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: たからものの死臭 【鋼錬トリップ】 ( No.1 )
- 日時: 2011/08/27 22:55
- 名前: 一条夏樹 ◆iYEpEVPG4g (ID: l4scGqhv)
00のせかいときみ 長編 − 0 −
何かが壊れるような音がしたのは気のせいではなかったらしい。
きっとそれは前々から感づいてはいたのだけれど否定する気がないから放っておいた。
人を壊すのもものを壊すのも大好きだけれどそれはわたしが壊すから意味が在るのであって自分以外の他人にそんな狂気じみた性癖があるとは到底思えない。
だから硝子玉を2階から落とすのもわたしだけができる行為だとおかしな自己満足に陶酔していてその音がするまで気付きたくなかった、それが粉々に砕け散るときどんなにたまらない興奮と快感を得られるのと恍惚に焦がれていた。
ベランダに置いておいた硝子玉は白い地面にひとりでに落ちてしまっていた。誰にも知られずひっそりと、下を向いても硝子の破片が太陽を反射してきらきらとひかるだけ。
(つめたい)頬をつたる液体を感じた
(どうして)わたしはきみを壊したかったはずなのに
(きみは)ああおねがいいかないでなぜ死んでしまったの
(みたしてゆく)突き刺さる尖ったひとつの悲しみとそれを覆う朝もやのような感情
(わたしは)きみを愛していた?わたしが今まで壊してきたものはわたしが愛していたものだった?哀しみも寂しさも喜びも幸せもぜんぶきみがおしえてくれた。
最後に残った独り善がりなわたしの愚かさとほんのすこしのきみへの愛憎。きみに許してもらう術も愛してもらう術ももうなくなってしまった。きみはもう帰らぬ人となって去り際にわたしのこころにぽつりと穴をあけていった。
きみがいない世界はひどく憂鬱で汚れた手も錆と血の赤が黒く変色してべたりと肌にへばりついている。鉄の臭いが鼻について笑いがこみあげてきた。
もうどうでもいいや、何が誰が?しらないそんなこと、誰かが死んだ?そんなひと居たの?ねえ、どうしてだれも応えてくれないの、だれもいな、い?わたし、が?きみ、を。やめてやめて考えたくない!
青と白のいろを映すひとみ。太陽が白く昇り人工物の壁のつめたい匂い。ワンピースの裾がはためく。足元を蹴った。無機質でかなしい死が身近に感じられた。コンクリの地面がだんだんとその面積を増しては耳をつんざく轟音が薄くなって、そのうち色も音も消えていった。