二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

[ 彩音と亜美 ] ( No.44 )
日時: 2011/09/22 19:32
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: KCnf7FEj)

 キラキラと輝く瞳は既にくすんでしまっていた。綺麗な桃色のパッチリとした瞳。ふわりと翻されるワンピースの裾。最早そんな姿の彼女は存在していなかった。胸元に光るソレは、かつて己が使用していたもの。エイリア石という名前のソレを引きちぎる為に手を伸ばす。しかしその手は行き場を亡くしてパタリと下ろされた。桃色の瞳の奥に見える闇は其処が無く、深いもので。
 ——どうしてなの!? 疑問と衝撃が入り混じったそんな言葉を発し、彼女へと手を伸ばす。指先がかすめるエイリア石。数センチ、数ミリがひどく遠く感じた。

 助けてよおっ……!

 酷く掠れた声が、耳孔に響き渡る。彼女は助けを必要としているのに私は無力だ。己を罵る言葉だけが渦巻く中、亜美はぽたりと雫を零した。親友が、幼馴染が、苦しんでいるのに。
 ふわりと手を伸ばせば、それはいとも簡単に振り払われた。全てを拒む瞳が、幼馴染を、親友を、全てを拒絶した。そこで亜美は彼女の遠さを初めて知る。手が届く場所に居た彼女は、苦しかったんだということを今知った。

「——亜美ちゃん、あたしね、強くなりたかった。亜美ちゃんは最強でしょう? とっても強くて、遠い存在。だからあたし、亜美ちゃんに近づきたかった。亜美ちゃんの視点でモノを見たかった、——亜美ちゃんと同じ存在になりたかったの」

 ぽた、ぽた。パチリとした瞳の奥に控える闇は未だ消えず、濁った雫が落ちる。向かい合って立っている彩音は口を開き、今まで溜め込んでいたものを全て吐き出した。己は最強じゃないのに、と亜美は今更ながらに感じる。エイリア石のお陰で強くなれてたんだから。そう言うときっと彩音は言う。じゃああたしも強くなれる? と。
 拒まれることを、護れないことを、頼られないことを、不安に思っていたから亜美はその石に手を伸ばしたのに。拒まれてばかりで、守られてばかりで、頼ってばかりで。彩音は相反する意識を強く強く持ち続けていたのに。

「—————ごめ、なさいっ」

 今更悔やんでも、何が変わるというのか。誰にでも無く呟かれた謝罪の言葉は、何時の間にか降り出した雨音にかき消されて彩音には届かず、彩音はただ泣きながら笑うだけだった。






彩音を守ろうとする亜美と、亜美に迷惑を掛けたくないと思う彩音の擦れ違い、とか。