PR
二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- [ 彩音と亜美 ] ( No.55 )
- 日時: 2011/09/22 19:31
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: KCnf7FEj)
あたしには、亜美ちゃんには、香奈ちゃんには、本当の母親が居ない。だから、母親の温かさを、知らない。亜美ちゃんはお父さんが居るだけで幸せなんだ、って笑うけど、本当はお母さんが恋しいのをあたしは知っている。
たった一人の姉を亡くした亜美ちゃんは、悲劇のヒロインだ。でも、亜美ちゃんは笑うんだ。「"悲劇"のヒロインは私だけで良いよ。彩音ちゃんはきっと"喜劇"のヒロインなんだ」。優しいその言葉がやけに、悲しそうだったのは今でも覚えている。
お母さんが欲しい、というのはあたしの、亜美ちゃんの、——香奈ちゃんの願いなんじゃないかなあ、とあたしは思う。キャラバンの皆は確かに温かくて、幸せだったけど、何かが違う。
「—————……ねえ、亜美ちゃんは、さ」
すやすやと寝ている亜美ちゃんの頭を軽く撫でてから、あたしは誰に問うわけでもなく呟いた。
「お母さんが、欲しい?」
何時だって温かく包容してくるお母さんが、何時だって笑顔で頭を撫でてくれるお母さんが、何時だって傍に居てくれるお母さんが———ッ
「彩音ちゃんは、欲しいんでしょ?」
何時の間にか目を覚ました亜美ちゃんが、ふんわりと笑った。
*
結局おかあさんが欲しかったのは彩音ちゃんなのでした、
PR