二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 一羽目 ( No.2 )
- 日時: 2011/08/29 16:56
- 名前: 和華 (ID: gPFHbtSu)
- 参照: http://fblg.jp/sasuyuki/
「坊、俺帰っちゃだめですかね…」
ヘタレた志摩の声が耳に入る。
これで何回目や。まったく。
「やかまし。そんなウジウジしとる暇があったらさっさと来んかいドアホ」
「そんな…!俺が往生してもええんですか!」
「おん。」
「酷い!俺は坊をそんな子に育てた覚えはありまへんよ!?」
「し、志摩さんおちついてぇ…」
ギャーギャー喚く志摩を子猫丸が宥めた。
このやり取りももう10は超えとる。
学園長から「西正十字街の路地裏に沸いた虫豸の駆除をして欲しい」と頼まれた。
もちろん志摩は即座に依頼を断ったが、
俺が半ば強制的に連れてきた。なんやかんや言って志摩は強いと思っとる。
…虫が絡むとダメやけど、まぁそこはなんとかなるやろ。
「やかまし、俺はお前に育てられた覚えはあらへん。」
「まぁ、志摩さんは一回往生して煩悩断ち切ったほうがええですよ…」
「子猫さんまで!」
志摩から煩悩を抜いたら何がのこるんやろか。
ヘタレか?
そんなことを考えとると、左頬を何かがかすった。
「ぎ…ぎゃぁああああああぃ!?前、前ぇぇええ!!」
虫豸や。
そこには、ぎょうさん虫豸がおった。
「すごい量やな…」
「学園長もまた面倒なこと押し付けましたね…」
「なんで平気なん!?あんたらなんなんですか!?」
喚く志摩を無視し、俺は印を結ぶ。
子猫丸も同じく印を結んだ。
「志摩、お前虫豸の致死節暗記してるか?」
「してると思いますか?」
そう言いながら志摩は錫杖を組み立ている。
…アカン、こいつホンマ詠唱騎士なるつもりあるんかいな…
「まぁええわ、援護頼むわ。」
「え…援護ってまさか」
「俺らが詠唱し始めたら、一斉に虫豸が狙うてくる。せやからその立派な錫杖でガードを頼む。」
「俺に虫と戦えいうんですか!?俺が往生してもええんですか!?」
「いくで、子猫丸」
「あぁ、もう!こうなったらヤケクソやぁあ!」
志摩が俺らの前に出て、錫杖を構えた。
それを確認し、二人で詠唱を始めた。
「「汝 汝の代にて神の御旨を行い 終い眠りて 先祖たちと共に置かれ かつ朽腐に帰したり…」」
一斉に虫豸がおそいかかってくる。
志摩は情けなく悲鳴をあげながら錫杖を振り回し援護をしてはる。
だんだんと虫豸が少なくなっていく中で、俺はあることに気づいた
虫豸は「何か」に集っている…?
次第に虫豸が少なくなっていき、残すところあと100匹くらい。
そこで俺はその「何か」の正体がわかった。
「子猫丸!お前は詠唱を続けろ!」
「え!?あ、はい!!朽腐に帰せざらんべし…」
詠唱を子猫丸に任せ、俺は虫豸の群れへと駆ける。
「志摩、錫杖!!」
「ふぇ!?」
通りざまに志摩から錫杖を借りる。
そして一気に虫豸の群れに突っ込んだ。
「キキキキキ…キキキキキキキキキィ!!」
「クソッ!オラァ!!」
勢い良く錫杖を振り回す。
子猫丸の詠唱のおかげもあってか、虫豸はだいぶ少なくなってきた。
そこで志摩もその「何か」に気づいた。
「坊…!?そ…それ…」
「あぁ、虫豸はコイツに集っとったんや」
やがて、子猫丸も詠唱を終え、こちらに走ってきた。
志摩も虫豸が居なくなったことを確認し、おそるおそるこちらへやってくる。
そう、
「人…ですよね…?」
虫豸にたかられたせいか、血まみれになった人が、横たわっとった。
幸い、まだ意識はあるようで、俺はそいつの頬をペチペチと叩いた
「起きぃ!おい、しっかりせぇ!!」
「ぼ、僕人ぉ呼んできます!」
「あぁ、頼む!!おい!しっかりせぇ!!」
やがて、ピクリとそいつの肩が動く。
志摩はほっとした様子でそいつに話しかけた。
「だ、大丈夫です…?」
「誰…ですか……?」
「え、え!?えぇと、俺は志摩廉造いうて、正十字学園高等部…」
「ここは、どこですか?」
志摩の自己紹介を華麗に無視したそいつは、
空を見上げて場所を訪ねた。
「西正十字学園町や、ところでお前は…」
お前はどうしてこんなところで虫豸におそわれとったんや?
ときこうとしたところで、後ろから能天気な声が聞こえてくる。
…正直イラっとせえへんかったと言うと、嘘になる
「おやぁ…?皆さん、どうなさったんですか?」
振り向くと、そこには、相変わらずふざけた格好をした
理事長がおった。