二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 十三.五羽目 ( No.43 )
- 日時: 2011/09/20 19:22
- 名前: 和華 (ID: imuS2CMi)
- 参照: http://id15.fm-p.jp/data/301/sayuki302/pri/86.jpg
夜の正十字町に佇むひとつの骨組みのビル。
骨組みだけのそのビルは、まるで怪物のように夜の街に佇んでいる。
そのビルの一角から、正十字町の夜景を嗜む、ひとりの男——メフィスト・フィレス。
彼は、己の弟の声に反応し、にやりと笑う。
「遅くなりました。」
「…久しぶりだな、アマイモン。『地の王』よ。」
「ハイ…お久しぶりです、兄上。」
彼—アマイモンの手元から伸びた鎖につながれている鬼がグルルと唸っている。
「して、父上のお答えは?」
メフィスト・フィレスが弟に問う。
アマイモンは一瞬何かを思い出す仕草をし、再び口を開いた。
「父上は、兄上の申し出を受けると。」
その答えをきいたメフィストは、自らの寄生体の口元をニィと歪めた。
それは、何かを企む悪い大人の顔にも、新しい玩具を買ってもらった幼子のようにも見える。
「では父上には、『我らの小さな末の弟は私の羽根の下ですくすく育っている。万事うまくいっている』とお伝えしてくれ。」
「解りました…。そうだ。『アイツ』から伝言を預かっています。」
「アイツ?…あぁ、『彼』…いや、『彼女』の件か。」
メフィストは、夜景から目を離すと、再びニィ、と笑い
アマイモンを見た。
「はい。『全て兄上にお任せするが、アイツが死ぬようなことがあったら、承知いたしません。』とのことです。」
「ほぉう…」
メフィストの視点は、既に夜景に戻っていた。
そんなメフィストを前に、アマイモンが自らの兄に問う。
「…兄上は実家には戻られないのですか?」
彼は顔色を変えずに、静かに弟に「行け」と囁く。
「父上をお待たせするな」
「…ハイ。」
そうして、アマイモンは去っていく。
弟の姿が見えなくなり、再びメフィスト・フィレスは正面をむく。
「フフフ…。戻らないとも。」
派手な帽子を、クイっとあげ、
まるで殺戮者のような眼差しで下界を見下す。
「私の様な放蕩者にとっては、こんな愉快な玩具箱はないからな。」
両手を広げ、薄笑いを顔に浮かばせる。
その道化師は、マントを靡かせ、ライトアップされた正十字町—玩具箱—を目に、こうつぶやく。
「楽しいお遊戯はこれからだ」