二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 第5話 ( No.34 )
日時: 2011/09/02 20:53
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: l78GGQ1X)
参照: スランプ? いいえ、ノマカプにハマっただけでs。

*彩音視点*


 ——監督、何考えてるんだろう。あたしは小さく溜息を吐いた。監督は監督として、考えがあるのは分かるが新人を起用するのはあたしは賛成しない、な。奏ちゃんは強いから良いけど、この子、——まともにパスも出来そうにないし。
 多分、あたしより弱い。それに——あたしが顧問を務める学校に挑んだらきっと負けちゃう。嗚呼、でも、勝敗を決めるのはフィフスセクター、か。少し、寂しくなった。
 、豪炎寺君に、あいたい。抱き締めて欲しい、会いたいのに、苦しい。会いたくない、——あ、れ?

「彩音ちゃん、大丈夫?」

 どくん、と胸が脈打つ。震える手に、亜美ちゃんの温かい手が重なる。ゆったりと笑みを広げれば、亜美ちゃんもゆっくりと笑んだ。豪炎寺君に会えるのはきっとまだまだ遠い未来だけど、あたし、やっていけそうだ。亜美ちゃんが、仲間がそばに居るから。
 ゆっくりと目を閉じ、開ければフィールドが目に入る。試合が再開され、あたしはふんわりと笑んだ。楽しみだなあ、——松風君の、能力が、技術が。
 下がってきたのは紫色の髪の子。なんかお兄ちゃんと声が似てる気がしないでもないかなあ、まあ、気にしないんだけど。

「あたし、あの子を円堂君と重ねてる、」
「——何かしてくれるよね、あの子なら、きっと」

 顔を見合わせて笑い合う。試合が再開され、松風君がボールを取ろうと突っ込んでいくは良いものの、テクニックは一回りも二回りも相手の方が上で、躱されるどころか味方にボールをぶつけられる。
 気が付けば、奏ちゃんは平然とした顔で立っていたものの、殆どのイレブンが地に伏していた。

「、酷い……」

 ぽつり、と誰かが呟く。あまりにも一方的なそれは、以前も見たことがある光景。FFの決勝戦の時も、エイリア学園の時も、

「どうしたァ? ——お前のサッカーへの愛もそんなものか」

 黒の騎士団の——剣城君が見下すように松風君に言う。苛立ちが、悲しみが、募る。どうしてフィフスセクターは管理してしまったんだろう。サッカーにさえ、自由は無いというのか。
 ただでさえ縛られがちな世の中を、自由にしてはあげられないのかな。無力さだけが残った。

「っぷ……あはははははっ! 馬鹿みたい! 下らない!」

 奏ちゃんが突然笑いだす。くすくす、と未だ笑い声は止まない。その場に居た全員は目を見開いた。何事だ、と。
 奏ちゃんの姿が、不意に亜美ちゃんと重なった。似ていると、そう感じた、けど、奏ちゃんは亜美ちゃんよりも冷たいものを纏っている気がした。

「サッカーに、愛? 馬鹿みたい、アハハハッ! サッカーを愛してるの? 松風君は、さ! キミもそうだよ、サッカーへの愛を認めてるってわけ? 意味わかんない、ボク、初めて見た、そんな人! ——正確に言えば二度目かもだけど。サッカーに愛情なんて要らないんだよ? 理解してる?」

 くすくす、と奏ちゃんは笑う。冷たく、悲しげに笑う。無意識に眉を寄せていたらしいあたしに、亜美ちゃんがゆっくりと視線を俯かせた。嗚呼、重ねているんだなあ、と感じる。亜美ちゃんはきっと、自分と奏ちゃんを重ねてる。
 エイリア学園の時の、自分と。

「……私、もう行くね。一応帝国の顧問やってるし、さ。彩音ちゃんだって天河原の顧問なんでしょ? 行かないと。私は鬼道くんに怒られちゃう。彩音ちゃんも、待ってるんでしょ、生徒さんが。ほら、行こう」

 ぐい、と半ば強制的に腕を引っ張られる。丁度、ホイッスルが鳴り響いた。気になるのに——見たいのに、気になるのに、見たくない。亜美ちゃんに促されるままにあたし達は雷門を去った。其々の勤める学校に向かって。
 ——あたしの仕事は天河原の皆を優勝させる、ことだから。亜美ちゃんは帝国の皆を。それが叶わない願いだと知っているけど。フィフスセクターに管理されている今の時代じゃ、どうせそれは叶わないのだから。
 あたしは雷門を再度振り返り、小さく笑んだ。亜美ちゃんも、笑っていた。

「「——革命を起こせ、雷門イレブン」」

 最早決まり文句になっているそれを呟けば、二人で顔を見合わせて笑い合った。懐かしくて、温かい気持ちになった。奏ちゃんの成長もそうだけど、何よりも雷門イレブンがどうなるかが気になる。
 ——松風君の存在がきっと大きく影響してくるだろうから。ゆったりと笑みを深めて、あたしは漸くその場を立ち去った。







二人はこの後しばらく出てこない、かも((ぇ