二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 第6話 ( No.35 )
日時: 2011/09/03 18:54
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: l78GGQ1X)
参照: クラスの男子曰く、「フルパワースパイクあるかもな」←


 黒の騎士団の一方的な試合。それはあくまで、ボクが考えた物語の一部。そうだね——本気を出すのも良いけど、彼の力を見るのも良いかな。ゆったりと笑めば、神童先輩、というよりは雷門イレブンが此方を睨むように見ているのが分かる。
 そりゃあそうだよね。ボク、あんなこと言っちゃったし?

「すみませんキャプテン、俺、フィールドに居ても何一つ役に立ちまでんした……」

 眉を下げ、悲しげにぽつりと、無力な己を責めるように言うチョココロネ君、基、松風君。そうだね、キミが役に立ったら立ったで怖いかもしれないよ? なんちゃって。己のことを責めるっていうのは良いよ、もっともっと——強くなれるから。

「、でもっ……このままサッカー部が取られちゃうなんて嫌です!」
「落ち着け。——俺だってサッカー部は渡したくない。だけどあいつ等、半端じゃない。悔しいけど、俺達を凌ぐ力だ」
「——だよね。先輩たちが今のまま進化しなかったら、サッカー部は駄目になっちゃう」

 くす、と笑って横槍を入れると黙ってろと言わんばかりの皆の視線が突き刺さる。協力したいのはそうだけど、——自分よりも弱いチームで、自分の実力を出せないっていうのは少し嫌、かな。

「……フィフスセクターの指示に従おうとは思わないけどね、」

 ぽつり、と小さく呟けばその場を立ち去る。フィフスセクターなんて大っ嫌い。別に潰したいとかそういう理由じゃなくて、ボクだって思い切りするサッカーは大好きだ。だから、嫌いなんだ。
 聖帝とかそういうの、ふざけないでよ——っていう感じだ。ゆっくりと辺りを見回して、溜息を吐く。早く——早く終わらせたい。この試合を、下らないこの試合をね。

「さあ、後半開始です! リードされている雷門、どう出るのか?!」

 実況の声が響く。ホイッスルが聞こえる。始まった試合——ボールは黒の騎士団から。いきなりスライディングを掛けた神童先輩が吹き飛ばされる。ふうん、結構やるかもねえ。

「キャプテン!」
「どうしたァ? 早くも降参か」

 厭味っぽい言い方の不良君に苛立ちを見せながら、ボクは余裕ぶっている不良君からボールを奪った。なっ、と驚く声が聞こえる。ふわりと笑み、足元のボールを黒の騎士団のゴールへと思い切り蹴ってやった。
 それは誰にも止められない、けれど、普通のシュート。お兄ちゃん直伝だから、とっても強い。(お兄ちゃんは強いんだよ!)

「チッ……」

 でも——それは不良君によって止められた。黒の騎士団の中ではきっと一番強いんだと思う不良君がそれを止め、ボールをキープする。嗚呼、やる気が起きない。低レベルな戦いなんて好きじゃない。
 しかし、それで逆上させたのか激しい攻防が続く。——というよりは一方的な試合になってきた。ただのドリブルで吹っ飛ばされるわ(ボクは避けてたけどね。面倒だし)、ドリブルをするだけしてシュートも何も決めない。つまり、だ。不良君はただ人を傷付けようとしている。それを悟ったボクは、気が付かない間に拳を握りしめていた。
 ボクだって、心も存在する。同情もする。でも、これは違う。ボクはサッカーを汚されることだけは大っ嫌いだ。人を傷付けるというのも、受け付けない。ふざけるな、と呟いた。

「——あ、」

 ボクと交代していた水森という先輩がサッカー部を去っていくのが分かる。恐れをなして逃げる人は、嫌いだ。

「皆が、潰される……」

 そこで松風君にボールが渡される。ボクは小さく笑った。人を信用するのは好きじゃないけど、この子は何かが違う。信用するわけじゃないけど、直感的にそう思った。頑張れ、と声を掛ければ驚いたように見開かれる瞳。
 松風君はパスだ、と言われても誰一人としてパスを出さず、ただ走り抜けるだけだ。スルーするのは、確かに賢明かもしれない。松風君は、仲間にボールを渡さないことで護っているのだから。其れに気づかない皆は少し駄目なんじゃない、かな——。

「っふ……そう上手くいくかよ」

 ぱちん、と不良君が指を鳴らせば松風君はあっという間に囲まれた。速いね——。小さく感嘆の息を漏らした。先ほどまで普通にマークしていたくせに。
 くすくすと笑った。

「もう逃げられないぜえ……」

 オレンジの髪の人がにやにやと笑う。黒の騎士団流石に性格が悪い、ね。思わず苦笑を漏らせば、ボクはそれを見守った。何も言わず、ただ見るだけだ。面白そうだったし、——きっと彼自身の力で何かしてくれるだろうから。

「松風天馬、」

 不良君が松風君につかつかと歩み寄る。奥に控えている監督とかいう黒木っていう人に何かを指示されたらしく、それでも半ば本音とでも言うかのように顔を歪める不良君。

「その顔……気に食わねえ。——下らねえんだよ、サッカーなんて!」

 そう言うと思えば、不良君の後ろに黒い影が揺らめく。ま、さか、そんなこと——ある、か。フィフスセクターのシードは化身使いだという噂がある。つまり、彼も使えるということだ。

「嘘でしょ……」

 ぽつり、と気付かぬうちに呟きが零れていた。こんなんじゃ、勝てないんじゃないのかなあ。