二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【霧野蘭丸root】 ( No.14 )
日時: 2012/02/01 18:21
名前: Chaos;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: yTgpXhnH)

〈霧野蘭丸root.Episode6.Event3〉

 今、あたし——日向未律は、人を待っている。駅前で、人を——霧野蘭丸を。
 何故、土曜日である今日、霧野を駅で待たなくてはならなくなったのかというと、発端は先日の勝負にある。グラウンドで行われた、あの、一対一の勝負のことだ。
 ——手短に話すと、あたしは霧野との勝負に負けた。あの、スライディングの一件の後、どうもあたしは調子が狂っていた。顔が熱くなって、ぽーって……って! それで、容易くシュートを許してしまった。
 賭けの景品である『負けたほうを自分の言いなりにできる』権利で、勝った霧野は、あたしに買い物に付き合えと言ってきた訳だ。
 これは、世で言う——
 
 「でででで、でーとみたいじゃないかっ……」

 顔から火が出そうだ……。
 いやいやいやいやいやいやいやいや……あくまでも、いつも通りだ!! うん、いつも通りの格好……

 あたしは、そこまで考え、自らの長い髪に触れると、ふーっと長いため息をつく。

 ——ちょっとだけ、期待……してる? 

 今日は、服装こそいつも通りのボーイッシュスタイルだが、髪をシュシュで結わえたりなんかして……。

 「日向! おーい、ひーなーたー!!!!!!!!!!」

 乙女な思考を張り巡らせていると、遠巻きに中性的な男の声がきこえた。……ひーなーた! って、あたしと同じ名字? てか、あたし?

 「ひゃっ、霧野!!」

 ——あたしだった……じゃなくて、霧野だった。
 つ、つか……近ッ!!!!!

 「ボーッとして、どーかしたのか?」

 鼻の先が触れそうなくらい、近い距離に立っていた。

 「ど、どうもして、してません¥¥!!!」

 テンパッて、何か敬語とか出てきたし!

 「『ひゃっ』って、メチャ可愛い声出しやがって……。日向じゃなくて、未律ちゃんって呼ばなきゃか?」

 そんなあたしをくすくす笑いながら、半分ガチな顔で可愛いとか言いやがる……!!

 「……んー……でも、ここはやっぱり……『みお』とか?」
 「は?! みお……?」
 「うん」
 「あたし、みおと」
 「うん、知ってる。でも、みお」
 「いや、何で?」
 「何で、って……何か、特別な感じするじゃん! いいじゃん、みお!!」
 
 と、特別……?! 言われて悪い気はしないけど……けど……しないけどけどけどけど……しないな。

 「じゃあ、みおで」
 「やった! ……じゃあさ、俺のことは——」

 霧野は、あたしの正面にある顔を、隣に持ってきて……ええい!! ——あたしの耳元に、口を近づけて……

 「蘭丸、ってよんで?」

 甘い甘い声で、囁く。

 ……いや、彼には囁いてるつもりはないんだ! きっと!! そうだ!!!

 「ら、らんまる……っ」

 すると、蘭丸は満足気に微笑むと、顔を離す。

 「んじゃ、いこっか」
 「?!」

 そこには、差し出された手。

 「デートだから」

 あたしは、しっかりとその手を握った。