二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【霧野蘭丸root】 ( No.15 )
日時: 2012/02/05 17:48
名前: Chaos;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: DoyHUJg.)

〈霧野蘭丸root.Episode7.Event4〉

 「ねぇねぇ! みおはさ、スカート、穿いたりするの?」
 「スカート?」

 あたしたちは今、電車の中にいる。何でも、此処らでは一番大きな三駅くらい先の街に用があるのだそうだ。
 
 「んー、穿かねぇな。うん」
 「ふーん。女の子らしいカッコ、嫌いなのか?」

 あたしたちが乗った時、電車の中はほぼ満員でかろうじて一席開いている程度だった。蘭丸はあたしにその席を譲ってくれて、自分は、あたしの真ん前につっ立っている。
 
 ——どうしても目線が上から下りてくるから、責められてる気分だな……。

 「え、えと……ま、まあ……あたしもこんな形だし、ひらひらのワンピースなんて似合わねぇだろ」

 脳裏に、嫌な記憶が蘇る。
——皆が嗤う声。
——目の前で、罵声を浴びせられる光景。

 そして——……。

 「みお? 何か、顔色悪いけど……もしかして、乗り物酔いする人?」

 蘭丸の心配そうな声色で、あたしの思考は強制終了された。

 「あ、ああ……大丈夫だ! ……ちょっと、昔のことを思い出してな」

 あたしはいらぬ心配をさせぬよう、爽やかな笑みを取り繕う。

 「昔のこと……?」

 だが、あたしのなかには、蘭丸に甘えたい——蘭丸の優しさに甘えたいという思考が生まれ、本音が漏れてしまっていたようだ。

 「……えと、うん……」

 あたしが、苦そうな顔をしていると

 「俺で良ければ、話、聞くよ? ……今でも思い出すくらいなんだから、相当辛いことなんだろ? 誰かに話せば少しは楽になると思うけど」

 無理強いしない所が、蘭丸の優しさだ。
 少しずつ、あたしの心は——溶けていく……。

 「あのさ、あたし、昔はさ……結構女の子らしい子だったんだ——」

 そう。あたしは、ピンクのひらひらでレースのついたワンピースなんかが大好きな、女の子らしい女の子だった。アニメなんかに出てくる、お姫さまキャラの可愛いらしい女の子に憧れていた。
 実際、可愛いワンピースを着て、髪をツインテールに結わえて、女の子らしい言葉遣いして……。
 でも、その反面、あたしは一度も女の子扱いされたことがなかった。いや、母親だけはあたしのことを女の子扱いしてくれて、ワンピースやアクセサリーなんかをよく、買ってくれた。
 周りはそんなあたしのことを、嘲笑った。男がワンピース着てるって、嘲笑ったんだ。
 ——それだけなら、良かった。
 体だけ奪って、あたしの総てを見てくれなかった昔の男。
あたしは、好きだったから——ただ好きだったから、何も抵抗しなかった。
 それなのに……。

 「みんな、あたしの弱いとこを踏み躙って……」

 思い出すだけで、涙が出そうになる。

 「……だから決めたんだ。もう、女としては、生きないって。……実際、そうしてから誰もあたしのことを嗤う奴はいなくなったから」

 必死に堪えて、笑う。

 「みお……」

 あたしが丁度話し終わった頃、電車は目的の場所へと到着した。
 蘭丸の碧い、澄んだ眸に影が見える。

 「ま、気にすんなって! あたしもそんなに気にしてないからさ。……聞いてくれて、サンキュ」