二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.29 )
日時: 2012/02/21 18:07
名前: macra;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: DoyHUJg.)

〈剣城京介root.Episode2.架場陽丹Side〉

 「はぁぁ……こわかったよぉ……」
 「どうしたんだ、陽丹?」

 架場陽丹は、教室へ戻り、自分の机で突っ伏していた。声をかけたのは——三国太一。陽丹の幼馴染で、クラスメイトでもある男だ。サッカー部に所属しており、ゴールキーパーを任されている。
 
 「たいちー……かいだんからおっこちかけたぁ……。おちなかったけど……」
 「……落ちなかったのか」
 
 三国は、ほっと胸を撫で下ろす。陽丹は、昔からドジっ子で目が離せないのだ。

 「んー……やんきーのおとこの子にたすけてもらったんだ。ふわーってお姫さまだっこ」

 陽丹はいわゆる天然キャラというやつなのだろう。本人は説明をしているつもりでも、相手には全然伝わっていない。だから、聞き流していてもあまり問題はない……というか、この少女の話にいちいち耳を傾けていると、こっちが疲れ切ってしまうのだ。
 だが、三国も「やんきーのおとこの子」というのには、引っかかたのだろう。ぴくりと肩を動かした。

 「ヤンキー……?」

 三国が眉をしかめると、陽丹は何かを察したのであろう、食いついて来た。

 「うん。むらさきのせいふくで、なかぎがあか。かみがすっごくて、目がとってもきれいなおれんじ色」
 「……それって、やっぱり……」

 三国には思い当たる人物がいた。これは、思い当たるとか、おそらくとかそういうレベルでなく、確実に。

 「剣城……じゃないか?」
 「つ、つるぎ……?」

 陽丹は三国の言葉をおうむ返しすると、顔をしかめた。……いつにもなく真剣な顔つきだ。

 「ねぇねぇ、たいちー。そのひと、サッカー部?」
 「ああ、そうだ」
 
 剣城京介——雷門中サッカー部の一年だ。元は、フィフスセクターという管理組織の狗——シードであったが、今は改心し、持ち前の高いキック力と足の速さでチームの勝利に貢献している。

 「んー……」

 三国からの説明を大半は聞き流し、一時「うーん」と唸ると、

 「たいちー。よに、今日、サッカー部いく。つるぎきょうすけくんにお礼いいたい」
 「……」

 すると、次は三国が唸った。

 「陽丹、部活は結構遅くまであるぞ?」
 
 帰りが遅くなることを懸念しているのだろう、難しい顔をしている。遠まわしに「駄目だ」といっているようなものだ。

 「かえりはたいちに送ってもらうから、もんだいなーしv」

 陽丹は、それを跳ね除けるように、右手でブイを作ってみせた。
 だが、三国の眉間の皺はとれない。

 「それは当たり前だ。……そうじゃなくて、風邪ひいたらどうするんだって話だ」

 風邪ひいたら——今は、6月。もう随分蒸し暑い時期だ。「風邪をひく」なんて言葉とは無縁の時期のはずなのだが……。
 
 そこに、夏だというのにカーディガンを羽織っている理由がある。
 陽丹は、昔から体が弱い。少しでも体を冷やせば、すぐに風邪を引いてしまう。しかも、一度引いてしまうと長引く。悪化すれば入院……というのも珍しくはない。

 三国とは昔からの付き合いで、それを知っていて心配しているのだ。

 「よに、いっぱいいっぱい着る! ……だから、ついていってもいいでしょ?」

 ……しかも根っからの頑固である。
 こうなってしまえば、彼女を止められるものは誰もいない。

 「……わかった。ちゃんと着ておくんだぞ」
 「はーい。……わーい、たいちのふとっぱらー」

 三国はしぶしぶ了承した。