二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.40 )
日時: 2012/03/08 17:53
名前: 最後の受験終了;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: 8gvA/W.A)

〈剣城京介root.Episode6.Event1〉

 その後、陽丹は京介を困らせてしまったことを負い目に感じたのか、直ぐ様いつもの笑顏に戻ると、ただ——

 「ごめんね」

 とだけ、ぽつりと言った。






 「うわあ……よに、がらにもなくきんちょうしてきたよぉ……きょうすけくん、て、つないでもいい?」
 病院の前まで来ると、陽丹は思い出したように騒がしくなり、京介の手をぎゅう……っと握る。
 「大丈夫です」
 了承の意と、彼女を落ち着かせる意を持って、彼女の小さな手を握り返した。





 「お、京介」
 病室の扉を開けると、いつものように優一はベッドの上にいた。兄の笑顏に安堵しつつも、やはり、その姿を見ると心苦しくなる。
 「兄さん。……今日は兄さんに会わせたい人が——「むぎゅー」
 その考えを払拭し、陽丹のことを紹介しようと口を開いている最中、京介はあることに気づいた。……が、次の瞬間、彼女の行動によって、それは呆気無く示されてしまった。
 「ゆーいちくん。よには、だれでしょうかー?」
 優一の布団がもぞもぞと動いていた。
 優一は、ビックリしたように——それでも何かを思い出したように、顔をぱあっと明るくさせた。
 「陽丹ちゃん、久しぶり」
 優一がそう言うと、陽丹は布団から顔を出し、優一に抱きついた。
 「よくわかったなぁ……よにのことおぼえててくれたんだー」
 「陽丹ちゃんが、自分で名前言ったんだろう」
 優一もまた、抱きしめ返す。
 「ゆーいちくん。あいたかったー」
 「俺もだよ。……陽丹ちゃん、大きくなったね。それに——すごく」
 少しの間。
 それは、嫌な沈黙でもなんでもない、歳相応の『照れ隠し』。
 「綺麗になった」
 「よにももう、ちゅうさんだからねー。きょうすけくんの、せんぱいだよー」
 「そうか……。雷門中か」
 
 ——京介は、その様子を遠目で静かに見守った。
 「一人に幸福を与えることが出来たのなら、それで満足でしょう」