二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.44 )
- 日時: 2012/03/10 20:21
- 名前: macra;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: 8gvA/W.A)
〈剣城京介root.Episode7〉
積もる話もあり、京介が陽丹を送る頃には、9時近くになっていた。辺りは暗く、足元を照らすのは、道の端々にある電灯だけだった。
「きょうすけくん……今日は、ありがとう」
「……いえ。こちらこそ、ありがとうございました」
にこり。本当に嬉しそうな顔が、電灯の淡い光に映し出される。
「そういえば——」
そう言って、話題を変えたのは京介だった。おそらく、照れ隠しのつもりなのであろう。
「架場先輩は、兄弟はいるんですか?」
「きょうだい……か」
陽丹は、京介の問に少しだけ口ごもった。
「いる——っていってもいいのかな……」
「……?」
その迷いは、その存在の否定を示しているようにもみえ、追憶に思いを馳せているようでもあった。
「よにには……おにいちゃんが『いた』んだ」
「……いた?」
そこには、いつかの悲しい顔があった。——それは、数時間前であったか、数年前であったか。
「こうつうじこで、しんじゃって……ね」
それに……と、陽丹は続ける。
「よに、おとうさんもなくしちゃってるんだ。……こっちは、びょうき。だから、今は、おかあさんしか……かぞくはいないんだ」
京介が返事も出来ず、沈黙が流れると、更に続けた。
「おかあさんも、かいがいでおしごとしてるから……おしょうがつくらいしかかえってこないんだ」
……一人暮らし——否、本当に彼女は独りだった。
[ずっと独りで]
父親も、兄も、母親も、皆彼女を置いていってしまった。
——或いは、彼女もまた、その後を追いかけるのだろうか。
京介は、陽丹はどこか遠くに行ってしまうようで、あらわしようのない寂しさを感じてしまった。
だから。
気づけば——。
[また]
「また……兄と——俺と、会ってくれますか? ……いや」
「傍にいて……くれますか」
[うん。よには、ずっとそばに……ずっときょーすけのそばにいる]
貴方は、兄さんの生きる支えになったヒトだから。