二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.49 )
- 日時: 2012/03/21 21:34
- 名前: sicrama;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: fNW8Dqgc)
〈剣城京介root.Episode10.Factor〉
[……ッ……]
感じるのは——水の冷たさと、屈辱。
私はそれを、どこかから遠巻きに眺めていて……。
[アレー? モウ、クチキケナクナッチャッタノ?]
[ツマンナーイ]
[キョウハココマデデオワリニシトイテヤルヨ]
湧き上がる感情も、衣服から滴る冷たい水も、自らのものであるはずなのに、現実味のない——。
それはまるで、スクリーンで映画を観ているかのようだった。
「……あはは。きょうも——やられちゃったな」
言葉はこんなにもすぐ、出てくるのに。
私は——。
《なりたくて、こうなったんじゃない》
きっと、誰もが無責任だと言うだろう。
きっと、私が誰かに助けを求めては、更なる苦しみを与えられるだろう。
今の私には——。
《アア、ハヤクキガエナイト、カゼヒイチャウ》
*
「あれ……架場先輩?」
二校時目の終わり——京介は、少しだけ長い休み時間に、保健室前を通ると、知った顔を見つけた。
それが陽丹だと気づくと、直ぐ様部屋の中に入っていった。
陽丹から、自分は体調を崩しやすい、と聞いていたため、少しだけ不安になったのだ。
「ん? ……きょーすけ!!」
すると、あちらも京介の姿に気づいたのか、大きく手を振った。
「先輩、具合でも……悪いんですか?」
その様子から、元気だということは誰でも解るのだが、何しろ全身を濡らし、バスタオルを被っているのだから心配もする。
「ちがうよー。……ちょっと……ビオトープに落ちちゃってね……」
京介は、彼女の偽りの笑顏が曇ったのを見逃さなかった。——そう『偽りの』。今の彼女の笑顏からは、言い訳がましさしか見受けられない。
……まるで、何かを隠しているかの如く。
「しんぱいしなくても、だいじょー……くしゅっ……」
いつものVサインをつくろうとしたのだろうが、くしゃみによってそれは不発だった。
「……かぜひいちゃうなー。はやくきがえなきゃ……」
頭をガシガシと乱暴に拭くと、カッターシャツのボタンに手をかけ始めた。
「じゃ、じゃあ……失礼します」
京介は、顔を赤くすると、気を利かせて退室した。
——彼女の呟きに耳をかたむけることなく。
《ごめんね。きょーすけ》