二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.51 )
日時: 2012/03/22 20:20
名前: sicrama;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: fNW8Dqgc)

〈剣城京介root.SideStory.きょーすけのキ・モ・チ〉

 「おお……京介。最近、よく来るな」
 病室のベッドに横たわっているのは、誰よりも大切な貴方。俺は、貴方から総てを奪ってしまった——。
 貴方に向けられる笑顏は、確かに笑顏なのだけど——悲しそうで、辛そうで……貴方は決して弱音を吐いたりしないけれど、俺には解るんだ。
 「むぎゅー……よにもいるのでーす」
 「陽丹ちゃん。……ほら、制服がしわになっちゃうぞ」
 そんな貴方を、いつだって本当の笑顏にしてくれるのは——天使。嫉妬なんてしない。ただ、自分の無力さに肩を落とすだけだ。
  
 [俺には、貴方を笑顏にする力など……無い]

 「きょーすけも、むぎゅー……だよ?」
 それは、兄にとっての天使であるはずなのに……。
 俺はいつしか、天使の——貴女の笑顏に囚われていた。
 「きょーすけ……あったかい……」
 ふわり。貴女の香りと、笑顏がすぅ……っと体中に染みこみ、身体が暖かくなる。貴女のもつ『人を幸せにするチカラ』によってもたらされた暖かさで。
 ——俺が貴女に抱いている思いで、身体が火照って。        
 [きょーすけ]
——ただ、名前を呼ばれるだけで
 [て、つないでもいい?]
——ただ、手と手が触れているだけで
 [むぎゅー……]
——ただ、その可愛らしい声を発して、小柄な身体に抱きつかれるだけで
 [きょーすけ……すきー]
——ただ、その一言を発せられるだけで

 ……俺の総てが、貴女に支配されていく。——俺の願いとは裏腹に。

 [もう、兄さんから、何も奪いたくない]

 兄さんから総てを奪ったあの日——。
 もう、二度と、兄さんから何も奪わないと誓った。
 なのに……。

 [架場……いや、陽丹先輩]

 貴女は、兄の生きる支えになった存在なのに……。

 [……俺……先輩のこと……]

 今にも。言葉は。俺の中から。出てきてしまいそうで。
 今すぐ。貴女を。この場から。奪い去ってしまいたくて。

 それでも——。

 










 [好き、だなんて——言えない]