二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.53 )
日時: 2012/03/29 20:20
名前: sicrama;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: fNW8Dqgc)

〈剣城京介root.Episode12〉

 [架場陽丹さんへ]
 ひらり。陽丹が靴箱から自分の靴を取り出すと、紙切れ——白い、封筒が落ちてきた。
 「……また」
 差出人の名は[佐藤]となっており、それが隣のクラスの佐藤くんだと解ると、ため息が出た。内容は、こうだった——。
 [架場さん
話があるんだ。放課後、屋上で待ってる。]
 話——何の話か、陽丹には解っていた。
 沈む気持ちを持ち直し、早足で屋上へと向かった。







 「佐藤——くん」
 ガチャリ。屋上のドアを開けると、彼は手すりに寄りかかり、落ち着かない様子で待っていた。
 「架場さん……」
 「ごっ、ごめんね。またせちゃって」
 そう言う自分の笑顏が引き攣っていることくらい、解った。
 「話……なんだけど……」
 「う、うん」
 二人が向きあうと、佐藤くんはだんだんと顔を赤くし、口を開いた。
 「好き……なんだ。架場さんのこと……。だから、付き合って下さい!!」
 解っていた。毎日のように人の思いを聞き、毎日のように人の思いに応えられず……傷つけ。今日、告白してきた佐藤くんもそうなるのだと考えると、胸が痛かった。
 「ごめんなさい……。よに、すきなひとがいるんだ」
 ぽつり。譬え小さな声で呟くように言ったって、彼を傷つけてしまうことに変わりはないのに。
 「そ、っか……」
 すぅ……隣にいる彼の横顔は哀しく、大きく息を吸って。
 「じゃあ、さ……。せめて、好きな人が誰なのか、教えてほしいな」
 その真っ直ぐな瞳に見つめられ、陽丹はたじろいでしまう。
 「えと……ごめんなさいっ。……すきに、なっちゃいけないひと……だから」
 いつからだろう。こう、答えるようになったのは。 何かの口実にこれを使ったことは何度とあった。でも……。本当に好きな人ができてからは、なんだかその言い訳も、苦しくて。
 「ほんとに、ごめんなさいっ……」
 ただ、謝ることしかできなくて。その場から——その苦しみから、逃げ出した。









 「どうして……」
 どうして皆、私を好きだというの? やめて、やめてよ……私、苦しい。
 「どうしてっ……」
 どうして皆、私を苦しめるの? 私は何も悪くない。皆が私を好いてくるだけ。
 「どうして……」
 どうして——。


 [今日もまた、靴箱に靴が入ってないんだ]