二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 貴方なら、どう攻略する?【剣城京介root】 ( No.54 )
日時: 2012/03/29 20:46
名前: sicrama;ほだす ◆w6bR1QqEtU (ID: fNW8Dqgc)

〈剣城京介root.Episode13.sign〉

 「すみません、先輩。……ちょっと、いいですか?」
 「ほぇっ?」
 部活終了後、陽丹は今日、優一のお見舞いに行く予定はなかったのだが、京介に呼び止められた。
 「どーしたの、きょーすけ?」
 「あの……。もうすぐ兄さんの誕生日なんですが……」
 京介の話はこうだった。
 優一の誕生日がもうすぐで、何かプレゼントを買いたいのだが、何を買って良いかわからない。
 「そっかぁ。よにもなにかかわないとだなぁ……」
 陽丹は、京介から優一の誕生日のことを聞くと、早速何かを買おうか考えていた。京介はその横で、何やら顔を赤くしている。
 「……きょーすけ……かお、あかいよ?」
 陽丹は、熱があるのではないかと心配し、京介の額に自らの手を当てる。
 「いっ、いえ……大丈夫ですっ……」
 京介は、陽丹に触れられたことによって、更に顔を赤くさせた。そして、ぶつぶつと何かをつぶやくと、やがて、観念したかのように口を開いた。
 「今週の日曜日、プレゼント買いについてきてもらえませんか? ……も、もちろん、都合が良ければ……ですが……」
 京介のほうが身長は高いはずなのに、上目遣いになっているようにみえるのは気のせいだろうか。まるで、告白の返事を待つ少女のようだ。
 「そういうことならまかせなさーい!」
 陽丹は、その不安な表情を払拭するかのような笑顏と、大声でそれに応えた。
 「あ、ありがとうございます!!」
 それとともに、京介の表情もぱぁっと明るくなった。







 「……えへへ……」
 帰り道。笑みをこぼす陽丹を、三国は不思議に思い、問う。
 「どうしたんだ、陽丹? ……えらく御機嫌じゃないか」
 「へへへ……わかっちゃった? にちようびにね、きょーすけとおかいものするんだぁ……」
 三国は、街灯に照らされた陽丹の笑顔を見て、聞かなければ良かった……と後悔する。
 彼女のこんな笑顏、見たことなかった。まるで、自分の存在を否定されているようで、辛かった。
 「ね。……たいち」
 すると、陽丹は何かを察したのか、三国の目をじっと見た。
 「どうした?」
 どきり。心臓が跳ね上がった。
 「たいちともこんど、おかいもの……したいな?」
 ぎゅう。陽丹は、ねだるように三国の学ランの裾を引っ張った。
 三国は、動揺しているのを隠すようにして、言葉を紡いだ。
 「ああ、そうだな」
 素っ気ない二つ返事でも、陽丹の顔を明るくするには十分だった。
 「ぜったい、だよ……?」
 でも、何故か、今の彼女の顔には、明るさと暗さ——明暗が両方現れているように見えた。
 「ああ、絶対だ」
 くしゃくしゃ。彼女を落ち着かせるように、さらさらの髪を撫でた。