二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜イナGO人気投票実施中! ( No.108 )
- 日時: 2011/09/12 04:44
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第11話 バカ
どうぞ、と静かな声が響いた直後、カチャリと食器同士が当たる音。
琥珀色の紅茶が入ったティーカップが歌音の前に置かれた。彼女はそれを少し飲み、運んで来た月乃に視線を向ける。
自分の分を取った彼女は、歌音の向のソファーに腰を下ろしていた。
何故、月乃が神童の家に住んでいるのかと不審に思い、じっと彼女を見る。
桜色の髪は、彼女の自宅に入った直後に後ろでお団子にして一つに縛られていた。
顔立ちは美人、という訳ではなく可愛らしい顔。
歌「貴女、見た所神童の親戚には見えないけれど。」
月「気にしないでほしい所です。」
即答。
歌音は顔をしかめ、また月乃の顔を見る。今度は、しっかりと見つめ返して来た。
月乃は、こういう時視線を外そうとしない。相手が外すまでじっと見続ける。
歌「…分かったわ。」
——ティアラ姉が捜している人に、似ている様な、似ていない様な…
あやふやなら。
似ていると思う。何か知っているんじゃないかとも。
月「…」
紅茶を飲みほして、歌音が立ちあがる。ピンクの髪のポニーテールが揺れた。
そして凛とした声で、月乃をしっかりと見据えて言う。
歌「私の家に、来てくれるかしら。」
大きな家。
世界一大きな会社と言われるクラリス家、そこと知り合いで有り一緒に住む歌音の家は半端無く大きい。
月乃は無表情のまま見上げて、歌音に招かれ家の中に入る。
リビングには特に目立つ物は無い、否全てが目立ち過ぎて逆にそう想うだけかもしれない。
月「…」
歌「そこに座って待ってて。」
ソファーを指さして歌音が言う。月乃は大人しくそこに座った。
彼女にとっては見慣れた物、見た事が無い物等、いろいろある。シャンデリアもあったし名前すら分からない物も。
世界各国から様々な物が集まっている屋敷。
歌「ティアラ姉、呼んで来てくれる?」
近くに居たメイドにそう声をかけると、メイドは直ぐに2階へ上がって行った。
様々な物を興味深そうに見ていた月乃、…しかし疲れたのか、小さな欠伸を1つ。
歌音はその様子を見て思いだす。
初めての部活で疲れていた、そして自宅まで歩き、そこから此処まで歩き。
歌「…ごめんなさい、疲れさせちゃったわね。」
月「いえ。」
右手を口に当てて欠伸をした彼女。と、階段を下りて来る足音が響いた。
テ「珍しいね、歌音がお友達連れて来るなんて!」
歌「ティアラ姉!良かった、家に居て…」
ティアラ・クラリスは自分で脱走が得意と言う程。家から良く勝手に居なくなる。
そんな彼女の視線はソファーに座る来客へ向けられた。
少女は自分の後ろにある物をじっと見ていて、ティアラが来た事に気づいていない様子。
歌(…あそこにあるのって、確か…)
ティアラは、写真を大事にしていた。幼い頃のアルバムなどは勿論だが、飾ってある自分で撮った写真も。
その1枚に、FFIでイナズマジャパンが優勝した直後の写真がある。
—見つからないの、
彼女はそれを見て、涙声で呟く。
—どうして、この世にもう居ないみたいに見つからないの…
彼女を苦しめる、とある少女。
歌音は、ティアラに泣いてほしくないから。
だから、一緒に捜すことにした。
そこで見つけた月乃は、その写真をじっと見ている…。
月「…円堂監督。」
少し拍子抜けしちゃいそうな声で呟いた。
歌「…ティアラ姉、クラスメートの月乃杏樹さん。月乃さん、こちらティアラ・クラリス…あの、聞いてます?」
月「ええ、しっかり聞いてます。」
くる、と彼女が振り向く。
歌「クラリス家は知ってるわね。」
月「知らないです。」
場の空気を凍らせた一言。
歌音が目を見開いて月乃を見つめる。が、ティアラは案外呑気に「クラリス家もまだまだかぁ…」と呟く。
歌「え、月乃さん本当に(月「これ、何の写真ですか?」)え…」
本当に、歌音は驚いてばかり。
FFIを知らないと言う彼女に、ティアラが駆けよって話をする。
自分の体験談を主に。
例えば、雷門中に行ったこととか。
テ「瑠璃花に韓国戦のチケット送ってもらってマークと一緒に行ったんだ〜!で、抜け駆けしてベンチで見てたの!」
歌(…抜け駆け…結局ベンチじゃチケットの意味が…)
心の中で突っ込みながら、なかなかやって来ないラティアの部屋の辺りをじっと見ていると。
テ「…ね、流星瑠璃花って知らない?」
急に声のトーンが低くなって、振り向く。月乃に、写真を指さして「この子」と説明するティアラの姿が目に入った。
月「…知らないです。」
歌「!」
そっか、と悲しそうな声が聞こえた。
歌音もショックだった。せっかく希望の糸を掴んだかと思ったのに、それは偽物で直ぐに切れてしまった。
ぐ、と掌を握り締めているとふと自分に影がかかる。それはティアラの物で。
テ「ラティアー!そろそろ行くよー!!」
歌「…何処に?」
知り合いのとこ!と明るく彼女は答えた。
沸き上がってくる疑問。知り合いなら自分からじゃ無く、何時もは相手からやって来る。
わざわざ自分達が行くなんて滅多にない。
テ「一緒に行く?ついでに杏樹ちゃん送って行こ?」
月乃は疲れているし丁度良いかもしれない、と歌音は思った。
月「私は構いませんが、奏宮さんは。」
歌「…月乃さんが良いのなら、そうしたいけれど。」
テ「…何で名字呼びなの?友達でしょ?」
月「クラスメートです。」
即答、だった。
ティアラは顔をしかめて「じゃあ今から友達になりなよ」と提案する。
名前で呼び合った方が良いよ、と。
歌「…」
テ「そっちの方が気楽でいいと思うんだけど。」
歌「月乃さん、より杏樹の方が短くて確かに良いわね。」
それで良い?と確認するために月乃を振り返る。俯いていた彼女は、ポツリと呟いた。
——好きに呼んで。
テ「似てる気がするな、瑠璃花に。どう思う?」
車の中でティアラが妹に呼び掛ける様に言った。隣に座る彼女の妹は、ちらりと自宅に入っていく月乃を見た。
テ「…聞いてる?ラティア。」
ラ「聞いてるわ。」
溜め息交じりに返事をする。その時、バタン、とドアが開き歌音が戻って来た。
それから今更だけど、何処へ行くの?と尋ねる。
ラティアが、ほんの少し微笑した様に見えた。ティアラがその様子を見て僅かに苦笑。
ラ「そうね…差し詰め、」
テ(退院したらこの先の言葉を聞かせてあげよ、絶対ああなる…でも久々にみたいかも)
ラ「バカの所、ね。」