二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜イナGO人気投票実施中! ( No.123 )
日時: 2011/09/12 18:55
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第12話 メモリーズ


〜*〜
かなしい。
なみだって、ほんとうにでるんだね。パパ…なんで、なんでいなくなっちゃったの?
どうしたらいいんだろう。ママもいなくって、パパもいなくなっちゃった。わたし、ここにいてみんなとなかよくしていけるのかな?
きっと、みんなはわたしをなかまはずれにする。
パパはわるいんだって、みんなのてきなんだって。そんなことないよ、パパはわたしたちのみかただよ。
やさしいひとが、こえをかけてくれたの。フロォラさんだって。
「かなしみをうけとめきれなかったら、なにかにいっしょうけんめいになるといい」って。
そうだね、わたし、うけとめきれてないんだよね。
すごく、すごく、むねがさみしい。
すごく、すごく、むねがいたい。
フロォラさんのところにいく。でも、でもいつか、パパのかたきはうつよ。
〜*〜

アルモニがノートを閉じる。これは、彼女が尊敬する人の日記。幼い頃のある日の記録。

平仮名ばっかりで読みにくいな、と思いつつも開いている。

この日…尊敬する人がこれを書いた日は記録に残る大参事の有った日で、その人は父親を失った。

ア「え〜っと、何だっけな…あ、思いだした。」


———天界と魔界の3度目の衝突———

アルモニが呟く。

———ブラッド・ワールド…血まみれのセカイ———




絶望しか無い瞳で、少女はその人を見上げた。

差し出された手を、一瞬迷ってから少女は握り締めた。

迷った。自分の父親が死んだ、その惨事に関わった人について行く事を。

でも握りしめた。もう、それしか道は無かったのかもしれない。


—その身に流れる血は運命。善と悪と言われる2つの血を、受け継いだのは、運命。




〜神童side

神「月乃?」

ふと、彼女が居ない事に気付いた。メイドに尋ねてみると「学友様と何処かへ行かれました。」とのこと。

…じゃあ、いないのか。

ふと胸から何かが落ちた様に、ある感情がくすぶり始めた。胸に手を当てて、それが何かを知って、少しだけ驚いていた。

神「…まさか、寂しい、なんてな。」

直ぐに戻って来る、なのに何で俺…。



1階に降りた時、丁度月乃が家の中に入って来た。

視線が合い、月乃が即座に「只今戻りました」と言う。少しほっとして「おかえり」と言おうとした、のに。

表情があった。

月乃が無表情じゃ無く、何か…迷っている様な顔をしていた。困惑、という単語が似合う。

落ち着いて無く、辛い、という感情が顔に出ていた。

…もしかして、記憶に関わる事が?

神「何か…あったのか?」

月「いえ、特に。」

そう言って、月乃は顔を背けた。視線は相変わらず下で、何かあったのは確かだ。

無表情なんて、人形みたいなことで俺はあまり良くは思っていないし、笑ってほしい、とも思う。

月「…!…兄…様?」

でも、辛い顔は…今の辛そうな顔はもっとしてほしく無い。

神「……今は、辛いなら言わなくても良い。でも、話した方が、気は楽になると思う。」

月乃に歩み寄って、そう言うだけで良いと思った。

でも気付けば、抱きしめていて。彼女は一瞬驚いた様に体を固くしたけれど、その後は…表情は分からない。

ただ、俺の服を握り締めて何かに耐えていた。

月「………サッカー、」

神「!?」

俺が月乃を抱きしめて、彼女は服を握り締めて体重を俺に預けて。その体勢で彼女は呟いた。

月「……ったし、サッカーはきっと嫌い。でもっ…でも…!」

泣きたくないとでも言う様に、必死で言葉を絞り出していた。

神「サッカー、してみるか、ちゃんと。」

月「っ…。」

体を固まらせている、それだけで驚いていると分かった。が、直後ゆっくりと頷く。

頭を撫でて、視線を玄関にあるサッカーボールへ向けた。

…記憶を失くした事がない俺には、分からない。彼女がどんな気持ちなのか、どんな風に今の生活を受け止めているのか。

それでも、やっぱり記憶はあった方が良いと思う。だから俺は、手を貸す。

記憶を早く思いだして、痛みを味わう時を、1秒でも短く出来る様に。




ある程度、月乃と距離をあける。大体…3メートルより少し長い位?

俺はボールを足元に置いて、それを軽く蹴って月乃にパスした。彼女は受け取ると、それを恐る恐る、という感じで蹴った。

神「っ!」

バシュン、とボールは勢いよく飛んで来て、右足に当てると収まった。…凄く、恐る恐るで威力は弱いはずで…。

苦し紛れに出すパスの様なスピードだった。キック力が…凄いってことなのか?

そんな感じで暫くパス練の様な物をしていた。加減が掴めたのか、ふんわりとしたパスが来るようになり少し安心する。

やがて空が暗くなって、メイドが夕食の時間だと呼びに来た。月は雲に隠されている。

すっかり時間を忘れていて、月乃の方を見てみたが俯いていて表情が分からない。

神「…そろそろ入るか。」

歩き出すと、体が進まなくなりバランスを崩しかけた。振り向くと月乃が服の袖を引っ張っている。

神「…?」

月「…ボール、蹴ってみて…最初は、やっぱり体がボールを蹴る感覚知ってて、怖くなって…。」

右手で俺の服の袖を掴み、左手は拳にして震わせていた。

月「嫌いって知ってた、だからサッカーに関わってたんだって思って、さっき私はサッカーやってたって確信した。でも嫌いだから、何か嫌な事があったって事も確信してる…。」

服を握る力が、少し弱くなった。

月「それでも、さっきボール蹴って…少しだけ、楽しい、って思ったんです。」

雲が少し動いて、月光が俺達を照らした。

月「……私、好きでサッカーやってたのかもしれません。」

そう言った時の、月乃の顔。

微笑して、俺を見ていた。


神「…ッ〜!」

月「?あ、兄様…?お顔が」

神「夕食だし屋敷の中に入るぞっ!」


何でだろう、すぐに入らないといけない気がする…というか何か行動しないと耐えられない…。

神(〜ッ////)

月「?」

…不思議そうな顔をして、俺をじっと見ている。

あのな、急に、急にあんな風に微笑むなんて…確かに笑ってほしいって思ったけど!

……あれは、可愛い…って言うのか?



月「サッカーの事、誤解だったのかもしれません。写真のおかげです、ね。」

部屋で、彼女はそう呟く。

月「それにしても…ティアラさん達は一体何処へ…?」


*つづく*