二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*人気投票結果、発表! ( No.170 )
- 日時: 2011/09/20 19:36
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第18話 rain‐雨‐
音「雨、降って来たね…」
音無が、右手のひらを空へ向けて呟く。その手の中へ、ポツリと雨粒が落ちた。
隣で大きな袋を持つ月乃も、空を見上げた。灰色の大きな雲が空を覆い、冷たい風が吹いている。
彼女の顔に雨粒が落ちた。とっさに顔を下へ向け、雨により波紋を広げる水溜りに視線を移す。
月「……あ、め…」
小さな呟き、そしてその言葉を待っていたかのように、雨粒が一層大きくなった。遠い雷鳴が2人の耳に届く。
音「杏樹ちゃんっ、こっち!!」
近くの店の下へ月乃を引っ張る。ずるずると引きずられながら、怯えている女子中学生は避難した。
月「——っ!」
雨に当たらない所まで来た時、彼女はついにしゃがみこむ。大丈夫?と音無が声を掛けた。
月「…り、………とり、独り…なの、なん、で…!!」
音「杏樹ちゃん????」
怯えて、震えて、ただ涙を流さずに彼女は苦しんでいた。
ザーザーと降る雨は止まない。それ所か、一層強さを増し通行できそうになかった。
音(どうしよう…全然やみそうにないし、杏樹ちゃんは…)
傘が無い…雨具は無く、売っている所も見当たらなかった。雨が止むのを、待つしか手段は無い。
———不安そうに、空を見上げる。
神「…月乃、帰って来ないけど…」
メイドにそう言うと、私も分かりませんという答え。
突然の豪雨だった。雨粒は大きく、ザーザーという音が防音の壁を通り越して聞こえる。
テニス部の月乃も、もう帰って来る時間帯のはずなのに帰って来ない。
ゲリラ豪雨のせいだろうか。
メ「拓人さん、橘と言う方からお電話です。」
神「橘?」
何処かで聞いた名前。暫く考えて、ようやく1年生だと思いだした。
しかし、何で家の電話番号を…。
半ばひったくる様に受話器を受け取る。受話器の向う側から聞こえて来たのは雨の音。
神「もしもし。」
橘「…初めまして、月乃さんの同級生で同じ部活の橘美咲と言います。」
同じ部活?
橘「月乃さん、先生のお手伝いで荷物の受け取りに行ってると思うんですけど、帰ってませんか。」
神「いや、帰って来てないが…何処に居るか知ってるのか?」
ザーザーという音。その中に紛れる様に聞こえていた声が聞こえなくなった。
返事が無い。不安になって「もしもし」と言うと、ようやく声が聞こえた。
橘「雨、大丈夫かな。」
神「?」
橘「あの子、確か雨に良い思い出は無いから…」
神「!良い思い出って、お前もしかしてあいつの事!」
橘「…やっぱり、一緒に住んでるけど記憶ないんだ。」
神「っ!!!!」
しまった。
月乃の存在が普通になって…こういう事に気を付けないといけなかったのに。
相手がどう出てくるか警戒していると、今まで通りの暗めの声で橘が続けた。
橘「別に、知ってどうこうと言う訳でもないです。誰にも言ったりしません。月乃さんのいる所教えますから、傘持って迎えに行ってあげて下さい。」
でも知っているなら、自分が行けば良いのに何で俺に…?
とにかく、教えられた場所に行くしかない。電話が切れると、直ぐに玄関まで走った。
*
〜春奈side
もう30分位雨宿りしてるけど、雨がやむ気配は無い。隣の杏樹ちゃんもしゃがんだまま動かないし…
愛「まだこんな所に居たの〜?」
音「蜜柑ちゃんっ!」
顔をあげると、さっきの格好に黒のすごいリボンがたくさん付いた傘を持って蜜柑ちゃんが立っていた。
愛「…この子、どうしたの?」
しゃがんだ杏樹ちゃんを指さして、凄く心配している顔で蜜柑ちゃんが尋ねる。
音「月乃杏樹ちゃん。雷が怖いのかも…。」
愛「…全力で否定してるっぽいけど?」
隣を見ると、首を横に振る彼女が居た。じゃあ…何で?
愛「タオル、持ってくるね。」
音「ありがと…」
蜜柑ちゃんがお店に戻って、さて理由を聞こうと思ったら杏樹ちゃんが口を開いた。
月「キライ、雨もみんなもキライ…」
…何か、本当に杏樹ちゃん?って感じで、どうしたの、と肩を揺すると虚ろな目で彼女が私を見た。
月「だってみんな裏切るの、私が力持ってるから、強い力を持ってないから、みんな私を避けてるの……」
音「…あん、じゅちゃん…?」
月「でも、私もみんなをきっと裏切る。だから裏切られても良い…そう思ってたのに。」
何を話してるのか、良く分からなかった。でも、でも彼女は苦しみを真正面からしか受け取れないんだって思った。
月「わた、し…神様にも見放されて…」
音「—!」
月「!」
辛い辛い声。どうして、どうしてそんなに悲しそうなの。私、一人で抱えてほしく無かった…。
月「音無、せんせ…」
ぎゅう、と彼女の背中に手を回して、強く抱きしめた。雨に濡れて冷たい体は、震えていた。
音「神様が見放しても、私は見放さないから…そんなに辛そうにしてたら、放っておけないよ。」
月「………。」
静かになった彼女は、蜜柑ちゃんが持って来たタオルを頭の上に乗せると大人しく受け取った。
ピンクと黒のゴスロリカラータオル。これ、お店の物じゃ…(・・;)
雨は相変わらず強く降り続いていて、もうどうしたらいいんだろう、って不安になった時。
杏樹ちゃんの名前を呼ぶ、聞き慣れた声が響いた。
*つづく*