二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*人気投票結果、発表! ( No.186 )
日時: 2011/09/21 16:09
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第19話 umbrella‐かさ‐


〜神童side

耳に届く音は、雨が道路を叩く音と、水溜りから跳ねる水音。

翠色の傘を右手にさして、左手には月乃の分の紺色の傘を持って、俺は走っていた。

教えられた場所は若い女性が行きそうな場所。

何でこんな所に先生は用があって行くのか分からなかったけど、とにかく月乃は豪雨で足止めを食らっているんだろうと予想がつく。

たくさんの大きい雨粒が、視界を霞ませる。

雨に濡れて寒いはずなのに、真っ白になりかけていた頭では気にならなかった。何で、俺はこんなに必死に走っているんだ…?

どうして、どうして…

こんなに、月乃に惹かれる…?



どうして。

ふと疑問に思ったこと。足をゆっくり止めて道路を見つめる。

道路に直撃した雨が高く跳ね返っている。自分のジャージの長ズボンを見れば、結構濡れていた。

分からない、でも月乃は…。

真っ直ぐ前を見ると、3件先の店の下、見慣れた青い髪が目に入った。サッカー部顧問の音無春奈先生。

数歩歩いて目を凝らすと、音無先生の隣で月乃が体育座りをして、顔を両腕にうずめていた。

神「月乃ッ!!」

走りだしながら、叫んだ。また泣いていないか、怪我をしていないか、心配になる。

音無先生が振り向いた。月乃も、ゆっくり顔を上げて俺を見た。

音「神童君?!」

月「あにさ、ま…?」

月乃のかすれた小さな声は、先生には聞こえなかったらしい。近寄って大丈夫か、と声をかけると小さく頷く。

音「どうして神童君が…杏樹ちゃんの」

ハッとする。…また、やってしまった。どう答えようかと迷っていると月乃が囁く様に言った。

月「遠い、遠い親戚、なんです。」

その一言で、先生は納得した様な顔をした。…きっと内心、疑っているんだろうけど。

音「分かったわ、神童君、明日試合があるんだから風邪ひかないようにすぐ帰って(神「先生も風邪ひかないで下さいね。」

そう釘をさして、ふらつきながら立ち上がった月乃に傘を渡す。世界一有名なネズミ柄の傘だ。

傘を開いた月乃が先生を振り返る。そして自分の傘をじっと見た。

月「…明日、返して下さい。」

と言って、傘を渡した。

…え?

月「先生、傘持ってないんです。貸しても良いですよね。」

確かに、明日体調を崩されても困るけど…。先生は俺の顔を窺っている。…月乃は俺の傘に入れて帰るか。

神「じゃあ、明日持って来て下さい。」

音「ごめんね神童君^^;」

月乃が手に持っていた袋を受け取り、先生は大急ぎで帰って行った。

俺達も帰ろう、と言えば、また頷く月乃。大人用の大きな傘だが、中学生2人だと少し狭かった。

傘に雨が当たる音を心地よく感じながら、帰りはゆっくりと歩く。雨に少し濡れたのか、月乃の髪は湿っていた。

神「…迎えに行くの、遅くなって悪かったな。」

月「もしかして、橘さんから電話があったんですか。」

少し驚きながら、頷く。何で月乃はそれを…。

月「私と先生があの店に居るのを知っていて、兄様に連絡をするという選択をするのは橘さんしかいません…。」

神「そう、か…」

…でも、話の内容からすると月乃は電話がかかって来た事を知らない。頭の回転が良いんだな、とぼんやり考える。

家についても雨は止まない。

メ「杏ちゃん無事で良かった〜!!!」

…メイドが月乃に抱きついてそう言う。

メ「あんまり心配かけないでね、拓人さんすごく心配するから!」

神「ぇ!」

月「…」

ちらり、と月乃が俺の方を振り向く。それからメイドの方を向き直り「はい。」と返事をした。

確かに、心配はする…でも、メイドにそんなに分かってしまう程だとは思わなかった。

メ「お風呂に入って来て、風邪ひいちゃうから!」

月乃はメイドに押されて風呂場に向かう。

されるがままだな。



〜アルモニside

ア「ソッフィア〜!」

随分上機嫌ね、と冷静な声が返って来る。冷たいっ!

現在、私は自分より位が高い…上司的存在(?)のソフィアに報告しています。

雷門中に転入し、あのお方を探すためにソフィアの反対を押し切って此処まで来ちゃったわけで…もう此処は逆らえません。

ア「明日サッカーの試合があるの!息抜きに来な(ソ「貴女のせいで少し余計な仕事が増えてるの、考えて。」

う゛

ア「でっ、でも…もしかしたら…あのお方は、サッカーが好きだったから!」

ソ「そこに居るかもしれないって言うの?悪魔が時空の壁を粉砕し、あの人が好きだったサッカーに全く警戒しないとでも?」

ア「確かに見つかり易いサッカーに関わってくる可能性は低いよ?でも可能性は0じゃないじゃん!」

ソ「可能性が0じゃ無いことまでいちいちやってられる訳無いじゃない。」

がくっ、と泊っている部屋の壁に寄り掛かる。ソフィア…は、仕事が凄く大変で何時も何時も疲れてる。

あ。

ア「悪魔が無警戒じゃないとしたら…来る可能性だってある!ね、倒しちゃえば良いじゃん!」

ソ「人間界でごたごたを起こしたら、大変なのは私たちな…」

突然、声が途切れる。

少しの沈黙、何が起きたんだろうって心配していると、僅かに見下したような笑みを浮かべてソフィアが言う。

分かる訳無いけど、きっとそんな表情で言ってるんだろうって想像。

ソ「状況が変わった…私も、明日行ってみるわ。」

ア「え?」

ソ「——その試合、悪魔が関わる可能性が出て来たの…」


*つづく*