二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*参照700突破♪ ( No.207 )
- 日時: 2011/09/25 17:29
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第21話 ツインテールと弟
ピンク色の小型車、その助手席の窓が開く。
月乃には見覚えのある人だった。今日もしっかりゴスロリ服の蜜柑が、おはよう、と笑いかける。
愛「昨日の子だよね、風邪ひいたりしてない???」
月「体調は問題ありません。」
愛「良かったぁ♪」
ホッと胸をなでおろす蜜柑は、次いで何処へ行くの?と質問を投げかける。
月「…ホーリーロードの会場。」
愛「ほーりーろーど?…あ、中学サッカーの日本一を決める大会だっけ。雷門中は〜…名門の天河原中で予選だよね。」
月乃がこくり、と頷く。すると助手席のドアが開いた。運転手は、笑顔で月乃に言う。
愛「こっからじゃ遠いでしょ?乗せてってあげるよ☆」
*
開会式が始まろうとしていた。
1人の、ギリギリ女性と呼べる年齢の女性が席に座った。隣は数人連れの様で仲良さそうに話している。
薄紫色のツインテールは、幼い頃から変わらない髪型。その視線は、フィールドに居る身内に注がれていた。
ふう、と溜め息交じりの息を吐く。
?「…サッカーやってるのは嬉しいけど。」
身内の顔はやる気が無い。面倒くさいと顔に出ている。と、その時高い声が彼女に問いかけた。
橘「ね、お姉さん雷門中の選手と知り合いだったりする?」
?「!」
突然、だった。余りにも突然過ぎて驚く。少女のキラキラした桃色の瞳が、彼女の返事を待っていた。
ソ「美咲、急に話しかけたら迷惑以外の何物でもないの、少しは考え…」
テ「!!!もっ、もしかして…」
ソフィアの言葉を遮り、ティアラが目を見開いて彼女を見ていた。
彼女はティアラとラティアを見て、顔をしかめる。何かを思い出そうとしているかのように。
?「あ、もしかしてティアラさんとラティアさ…」
テ「…鈴音っ???!」
———彼女、南沢鈴音は、橘の隣の席で賑やかに過ごすこととなった。
鈴「…さっきの質問の答え。」
歌「知り合いがいる…って話?」
鈴音が頷いて、またフィールドに視線を戻して答えた。
鈴「…FWの南沢篤志。俺の弟でさ。」
一瞬の沈黙。
テ・橘「えええ???!」
ラ・歌・ソ「!」※クール組(笑)
橘「俺…」
ソ「突っ込み所そこなの?」
半ば呆れ気味にソフィアが言うと、真剣な面持ちで橘が頷いた。鈴音は背番号10をじっと見つめ、目を伏せる。
賑やかな音楽が流れ、花火が空で散った。
と、鈴音を呼ぶ声が聞こえた。6人は声が聞こえた方向へ視線を移す。
鈴音と同い年ぐらいの男性。蓮だった。
蓮「鈴音、飲み物買って来たよ。烏龍茶で良いよね。」
鈴「ども。」
橘「…彼s(歌「橘さん御静かに。」
そして開会式は始まる。
*
愛「…これは。」
運転席で、蜜柑が絶句する。
月「渋滞です。」
月乃が小説を読みながら答えた。ちなみに内容は蜜柑が持っていたファンタジー系。
愛「どうしよぅぅぅ……試合始まっちゃうかも〜(泣)」
月「…私は良いんです。」
え、と顔を上げて蜜柑が月乃を見た。少女は本に視線を向けながら続けた。
月「試合が始まっても、全然…」
寂しげに、彼女が言う。……空で、花火が散った。
*天河原中
関東地方の予選1回戦。
昨年度準優勝校である雷門中と名門天河原中。観客は盛り上がるが、フィールドの上は、正反対で静かだった。
雷門中は1回戦敗退が、フィフスセクターの指示。
鈴「今朝、篤志が…」
開会式の会場から、天河原中まで一緒に来た橘達に鈴音が明かす。弟の意味深な行動を…
鈴『今日、予選だって聞いたけど…最近、練習出て無いんだよな、勝てるのか?』
南『勝つ気ねーし。』
鈴『?!中学校生活、最後の大会だろ????!何…で』
南『試合より将来が大事だろー?』
歌「…試合に勝ったら、将来がダメになるという事…?」
鈴「俺もそう思う。でも意味がサッパリ…」
橘とソフィアが顔を見合わせる。2人は同じ事を思っているらしく、橘が頷くとソフィアも小さく頷く。
橘「色々あるんじゃないですか?受験が控えていて…」
鈴「…去年準優勝の選手が言うセリフ?」
気まずい沈黙。
フィールドの背番号10は、相変わらずスカしていた。
*
愛「…ようやく着いたね。」
何時もより2倍近くかかった時間。蜜柑は駐車場に車を停めると、静かに車を降りた月乃を振り向く。
月「蜜柑さんは、これからどうするんですか。」
愛「此処まで来ちゃったし、私も見て帰りたいんだけど…お店の仕事があるからなぁ。帰る事にする。」
バイバイ☆、と月乃に車内から手を振る。彼女は小さくうなずき、会場を目指して歩き出した。
空は、綺麗に晴れていて。
それでいて、何処か暗い闇を湛えていた。
月乃が会場に入った瞬間、両チームの選手が挨拶をしていた。
よろしくお願いします、と大きな声が聞こえる。彼女はその場で立ったままフィールドを見つめた。
先頭で礼をする神童の姿が目に入る。その正面に居るのは相手チームのキャプテン喜多一番。
月「…」
歌「杏樹、遅かったのね。」
何時の間にか隣に来ていた歌音が、彼女を見つめて言った。下ろした桜色の髪が、空の太陽の光を受けて輝いて見えた。
歌「何してたのか、教えてくれる?」
月乃は何も話さなかった。視線は、不快そうに顔をしかめる神童達に向いていた。
目を閉じ、耳を澄ました彼女はまるで神童の気持ちが分かったかのように、悲しげに目を伏せる。
そして歩き出した月乃に、歌音が静かについて行く。と、何を思い出したか不意に振り向いた。
月「歌音、私が座って良い席、ある?」
*つづく*