二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜 ( No.23 )
日時: 2011/08/31 18:32
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第3話 サッカーを?


—記憶の深く…記憶の深淵、其処にある小さな光…

少女「…。」

落胆した様に、少女はボールを足元に置いた。そして聞こえてくる足音から逃げるように草むらに身を潜めようとした。

…あえ無く見つかったが。

少女を睨む剣城。彼女は驚いて目を見開いたまま視線を受け止めていた。

剣「…お前。な(神「いたっ!」

剣「!?」

霧「??!剣城っ…」

少女の背後から、神童と霧野が剣城を見つけ驚き、少女は神童の服の袖を握り締める。

が、直後に少女が下にあるボールを見つけ、少し見つめてから其れを剣城の方向に転がした。

剣「?!何のつもりだ。」

神・霧「!?」

少女は彼をじっと見据え、やがて剣城は笑ってボールに足をかけた。

剣「こういう事か?……デスソード!」

神「なっ…」

剣城が放ったデスソードは、彼等に向かっていた。少女は無表情のままそれを見つめ顔をしかめる。

霧野が彼女の手を握りかわそうと引っ張る、が。

少女「……ぃ。」

霧・神「っ??!」

少女が右手を伸ばす。ボールは、彼女の右手に大人しく収まった。

全「っ!!!!?」

霧「…片手で…止めた?」

少女はボールをじっと見て、そして突然走りだした。影になる所へ。

神「!」

円「お前ら、まだ残ってたのか!」

霧「え…円(剣「あいつはコイツに会いたくないのか?」

円「あいつ?」

円堂が顔をしかめ、それから神童と霧野を見て笑顔を作った。

円「2人共、もう練習は終わったぞ!明日はちゃんと来るんだぞ!」

霧「あ…はい。」

霧野は神童を見る。彼は俯いたまま、僅かにお辞儀をして立ち去った。円堂は何も言わず霧野に視線で「行け」と合図した。

霧野も小さくお辞儀をして友を追う。

円「…誰が、剣城のデスソードを…」

1人残った円堂は、疑問を抱えたまま、階段を上った。


てくてく、と1人来た道を戻る少女は、走って来る足音を聞きつけ振り返る。そしてその姿を確認すると駆け寄った。

神童だった。

息も切れ切れで、少女はおろおろしながら深く頭を下げる。勝手に帰ろうとしたから彼は疲れている。

少女「……に、ごめんな…い。」

神「!?」

霧「神ど…!」

後を追って来た霧野が足を止めた。少女が口を開いている。

少女「…ってに、ごめんなさい…。」

一生懸命に声を出す彼女に、神童は一瞬ポカンとしていた。霧野も目が点。

神「お前っ…喋れるのか?」

少女「勝手に、ごめんなさい!!」

声聞こえてるよな、と一瞬疑う程、彼女は必死に謝っていた。霧野も驚いてお〜い、と声をかける。

少女「神童さん…と、霧野さんですよね。」

2人を見ながら彼女が言う。

しっかりと声を聞いた。声は女子らしく高く、澄んでいるが弱弱しい。

霧「ああ。でも本当に記憶喪失なのか?」

少女「…覚えて無いんです。何であそこに居たのか、何をしたのか…」

神「中学生…だな。」

こくん、と彼女が頷く。学年は、1年生だった気がするらしい。物凄くあやふやだが。

霧「神童の家に住むのか、こいつ。」

神「…!」

記憶喪失に気を取られ、忘れていた問題。

家。

何処に住んでいたのかなんて覚えているはずが無く、何より急がなければいけない問題だろう。

神「…」

少女を見る。

家の前で倒れてて、霧野が見つけて、話せなくて記憶喪失で、恐ろしいシュートを片手で止めて、話せるようになって。

神「お前さえよければ、家で面倒を見ても良いが…」

霧(…他人の中学男子と女子が一緒に住む、か…説明も無しに言ったら大問題になるな…)

頭が働く霧野である。

霧「先生とかにはどう説明するんだ?」

少女「すごく遠い親せき…で良いですか?」

すごく、を強調して彼女が答える。と、空が暗くなり始めた。霧野は2人と別れて帰路につく。

神「…帰るか。」

少女が頷く。不意に言った。

少女「親せき…」

神「?」

少女「命の恩人です、何と呼べばいいのか…」

神(命の恩人??!)

とぼとぼと歩きながら、彼女は必死に考えていた。そして「あ」と声を漏らし彼に向かって提案する様に言う。

少女「…兄様。」


緋色の空の下、桜色の髪を風が撫でて行った。




〜神童side

兄様…何だか大袈裟な気もするが、あいつにとって普通の「さん」や「君」付けは有り得なかったようだ。

命の恩人…俺はそんな事をしているとは思えない。自分で好い加減になっている気がするんだ。

真っ直ぐな監督…。何でフィフスセクターが送って来るのか信じられない。勝敗指示だって破ることもありえそうなのに。

外はもう暗く、あいつは直ぐに眠りに落ちた。体力も回復しきれていない所を歩かせてしまったから仕方が無いな…

綺麗な神々しい月は闇を照らす。

…ふ、と笑みがこぼれる。

自嘲的なのか、何が可笑しいのか分からないけれど、ただ、笑いがこぼれた。




〜ノーマル

?「…何で大丈夫なの?」

1人の少年が、少女の部屋を覗き込んで呟く。信じられない、という風に。

?「…こう言う時って、観察を続ける、だっけ?」

利発的な少年はそう言って。


消えた。






—翌朝。

少女は一足早く起きて、リビングに居た。メイドが作ったらしい朝食が並んでいる。

神「おはようございます…」

メ「おはようございます拓人さん。学校へ行かれるんですか?」

苦笑して頷く。少女の目の前の席に座り、しめ切れていないYシャツのボタンをしめた。

少女「…おはようございます兄様。」

神「おはよう…」

そう言えば名前は…と、言葉に詰まる。

すると少女が、何かを呟く。声が小さかった事に気付き、もう一度、声のボリュームをあげて言った。


「名前…は、月乃杏樹です…。」





*つづく*