二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*質問等受付中! ( No.235 )
日時: 2011/09/30 23:37
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第25話 初戦突破 


勝った。

神童は、じわじわと実感して来ていた。

自分がシュートを決めて、化身を操るのは疲れたけれど…、耳に届いたホイッスルの音に目が覚める思いだった。

もう1つの喜び。それは化身を完全に出せた事。

キーパーの三国が駆け寄り、やったなと声を掛けた。自然に笑みがこぼれる。天馬達1年生も喜んでいた。

そして、やっぱり思う。自分達がしようとしている事は間違いではない、と。

沸く観客席。ベンチに視線を移すと、笑顔の円堂が目に入った。顧問の音無も嬉しそうに笑っている。

神「!」

三「?」

少し驚いて目を開く。駆け足で来たらしい月乃が視界に入ったからだ。が、彼女の視線は別の所へ向いていた。

その視線を辿る——他の選手がいた。

まだ反抗の意思を固めていない、フィフスセクターに従った方がいいという考えの選手たちだった。

会話は聞こえない。ただ速水が崩れているのが見えた。





———勝利は単なる喜びで片付けられなかった。



速水が「終わりだぁぁ…」と崩れる様子を訝しげに見ていた。月乃は試合終了後に駆け足でベンチまでやって来て様子を見ていた。

納得できない部分はあった、しかし次の瞬間聞こえた言葉にその想いは打ち消される。

剣「面倒な事をしてくれたな。」

月乃は自身に掛けられた言葉じゃない事を悟った。しかし、気になる物は気になる。振り向けばソフィアと剣城が正対していた。

悔しそうな彼の瞳が赤く光る。やがて、それは月乃に向けられた。

——ニヤ、と目の赤い剣城が笑う。

月「っ!?」

その瞬間、恐怖を強く感じた。体が強張り、足は動かない。

ベンチ、は誰もいないも同然。試合終了の閉会式の様な物が行われていて、マネージャーもそれに釘付だったから。

ソ「っ、やめ…」

剣?「今回は挨拶程度にしておく。…天使長ソフィア、さん?」

ソ「!!」

月乃に駆け寄るソフィアに向かって、剣城はそう言った。体がビクリ、と震えた。

——図星と言っているも同然。

フィールドから出ていくその後ろ姿を、苦々しく彼女は見送る。

今すぐに始末したい想いを抑えて、自分の腕の中の少女の顔を覗き込んだ。しゃがみこんで、震える少女——月乃を。

真っ青だった。大丈夫、と声を掛けても震えは収まらない。そっと頭を撫でて落ち着かせる事と声を掛ける事しか方法が無かった。

月乃を睨んだ剣城の様子を、ソフィアはもう一度思い出す。そして確信した。この大会には悪魔が絡んでいる可能性が高い事を。

神「月乃?!」

ベンチに戻った神童が月乃を見つけた。ソフィアはその場を立ち出口へ向かう。

何とか月乃は立てたらしい事が話し声から推測できた。もう一歩、という所で彼女は振り向く。

月乃は神童と肩を組んでベンチに座らされた。音無がしきりに声を掛けている。

ソ「…ひとまず大丈夫そう、ね。」

彼女は、完全に姿を消す。


金色の、渦巻く風を残して……




〜神童side


神「大丈夫か?」

声を掛ける。答は、返事は分かっていた。それでも言わずにいられない。

こくり、とただ頷く。分かっていた。きっと、大丈夫で無くとも返事は同じという事も。

神「…疲れたのか?」

月「いえ、そんなこと無いです。」

じゃあ何で、と聞くと、月乃は口を噤む(つぐむ)。似たようなやり取りを、もう何度繰り返したのだろう…。

勝利は嬉しい、でも、何処か悲しげな表情で隣を歩く月乃に笑ってもらえたら…と思う。

月夜の昨夜、僅かながらに微笑んだあれとは別の類の…勝利を喜ぶ天馬みたいな…それはあり得なそうだ。

月「…いつか、きっと全部分かると思います。」

唐突にそう言われて、隣の月乃を見つめた。

いつか。…それは、何時になるんだろう。それが遠い日である事は、何となくわかった。

神「そのいつかが、早いと良いな。」

隣の彼女が目を見開く。視線がぶつかった。

自分より、ほんの少しだけ小さなその少女は、また、こくりと頷いた。





そのカーテンは静かに揺れた。僅かに開けられた窓の、緩い風に乗って。


「今日はどうだ?」

ツインテールの女性。答の帰って来ない質問を投げかけた。それでも分かっている。答くらい…分かっていた。

とある病院の部屋。入院患者の見舞いに訪れていた。

持って来た花束を花瓶に刺そうとして、つい最近他に見舞いに来た人が置いていったらしいバスケットが目に入った。

鮮やかな、黄色いガーベラ。

それを少し見つめて、花屋の人に任せて作ってもらった花束を花瓶に挿した。カスミソウしか分からないが。

「…昨日な、ホーリーロードの予選があって…俺の母校、勝ったんだ。」

早く去りたいのに。
それでも言わずにいられない。

薄紫色のツインテール。

それを、廊下を通った1人の少年が偶然見つけた。



「…もしかして南沢の…」

少年——剣城が思わず漏らす。が、次の瞬間ハッとして病室のドアに視線を向ける。


プレートを見て、目を見開いた。




剣「…何で、あいつの姉が…」



ソ「仕事終わり…っと。何でこんなに仕事多いの、もう神訴えたい…何処に、って話ね。」

ソフィアが愚痴をこぼして一人突っ込み。

伸びをした。天界に帰って来て、仕事の量を見て落胆した。2時間で何とか山の様な仕事を片付けその場に寝ころぶ。

ソ「…天使長だけに絞ろうかな…」


あんなに真っ直ぐな人間は見た事が無かった。

勝利の女神、その単語が重くのしかかった瞬間だった。

ソ「…冗談。」

体を起こすと……アルモニが遠くで手を振っていた。戻って来ているのは意外で目を見開く。

ア「会議、始めるよ〜!!!」


——余計な仕事、持ち込まないで。そうすれば、もっと休めたのに。


疲れた体に鞭打って、ソフィアは会議に臨むのだった。


*つづく*