二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜 ( No.29 )
- 日時: 2011/08/31 21:45
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第4話 編入試験とピアノの音色
月乃杏樹。
さっき記憶喪失の少女が言った言葉が、神童の中で響いていた。
ツキノアンジュ?
神「記憶…戻ったのか?」
月乃が首を横に振る。考えたんです、と付け足して。
月乃(以下:月)「これから、月乃でよろしくお願いします。」
神童が学校へ向かい、月乃はメイドが買って来たTシャツにショートパンツ、髪は下ろしたままでメイドに付き添われ学校へ。
月「私は…」
メイド(以下:メ)「貴女様の事は学校へ連絡してあります。警察にも記憶喪失という事で連絡済みですから安心して下さい。これから貴女が通う予定の雷門中の編入試験を受けてもらいます。」
突然、だった。
編入試験。私立の中学に入る場合の試験の事だ。
月「…そうですか。」
メ「合格すれば制服も必要になりますね。」
メイドがうきうきしてる。
月乃は俯いて道を歩く。…彼女の心の中には、不安があった。
天「う〜ん…職員室って何処だっけ(-_-;)」
天馬が1階をぐるぐると彷徨っていた。好い加減校舎の中は覚えても良い時期だが。
職員室に、自分の忘れものを秋が届けに来たと先生に言われた。給食の時間の事だ。
「ガチャッ」
天「!」
自分が通り過ぎようとしていた部屋から、突然数名の人が出てきた。女の人と、私服の女子、と校長。
天馬は校長に驚き、足を止めた。
校長「松風君!?もう給食は始まってるはずだろう?」
女子が振り向く。天馬は職員室が分からなくなってしまって、と答え冬海に直進だと怒鳴られた。
月「…あれは…」
校長「気にしないで下さい、いや、それより頭が良い子が入ってくれるのは喜ばしい事です!」
私服の女子—月乃を見て校長が笑顔を向けた。彼女はじ、と天馬を見ていたが。
昨日の事が蘇る。シュートを外した少年、松風天馬。
月「明日からよろしくお願いします。」
月乃はとりあえず、という感じで頭を下げ、天馬とは逆方向に—職員玄関の方へメイドと歩いて行った。
〜一方、何処かで…
?「ソフィア!何かヤバイ事になってるぅ!!」
黒髪を両耳の後ろで縛っている少女が、金髪のストレートの少女へ話しかけた。
ソフィア、と呼ばれた少女はゆっくり振り向く。
ソフィア(以下:ソ)「何、アルモニ…余計な仕事は持ち込まないでね、忙しいんだから。」
アルモニ(以下:ア)「あのっ、悪魔が時空を…!!」
ソ「!!」
ふちなしのメガネをかけたソフィアが驚いて目を見開く。悪魔が…、と繰り返し顔をしかめた。
ア「お願い行かせて!」
ソ「そんな簡単な事じゃないの、あのね私達は」
ソフィアが言葉を切る。アルモニが肩を震わせていた。
ア「あたし待ってばかりなんて出来ない!!!」
あのお方が危ないのに、と涙声で付け足し、何処かへ走り去った。
残されたソフィアはふう、と息を吐き彼女の背中を見ていた。
ソ「あのお方…だって、笑えるわね。」
〜稲妻町
メ「制服って高いのね…。」
月乃が自分が持つ紙袋を見た。中には、自分の制服が入っている。
編入試験をクリアした月乃は、正式に雷門中の生徒となる。明日から通う事になり、部活動紹介の紙やら教科書やらでメイドも手がいっぱい。
メ「杏ちゃんは部活どうする予定?」
メイドはすっかりタメである。杏樹を略して「杏ちゃん」と呼ぶ。
月「まだ考えてません…。」
メ「サッカー部かと思ったんだけど…意外!」
月乃の視線は何処か遠く。
剣城のシュートを止めた感覚が蘇る。あの時、何か感情が噴き出した気がした。
メ「明日は拓人さんと一緒に登校した方がいいね、あっ、でも朝練が(月「早くても全然…」
家に到着した。
柵を挟んでいる表札があるらしい所に目を向けると、何かえぐられた様な傷が付いていた。
案外、深い。月乃がそれに手を触れようとして慌てて離した。自分はこれに触れてはいけない様な気がしたから。
と、突然足音が止まった。
神「月乃…」
月「兄様、まだ学校では…(神「退部届を出して帰って来た。」
月乃の後ろに立っていた神童は、そう言うと家の中に入ってしまった。彼女は目を見開いてから彼を追いかけた。
月「キャプテンだったんですか…。」
ソファーに腰掛けて、お互い向き合いながら話していた。
現在のサッカー部の状況を聞き、フィフスセクターの話などを理解した彼女は目を伏せる。
神「苦しいんだ…自分が…逆らったから、それに1年の話を聞く度に……サッカーが好きなのに。」
神(何で、月乃に話してるんだろう…)
溢れる気持ちは断片的な言葉となって出て来る。月乃が口を開いた。
月「天馬って1年生の…」
頷く。あいつの言葉は真っ直ぐに届く。真っ直ぐに心に語りかける。
月「兄様を説得しに来ると思います。」
神「っ!」
目を見開いて、それから俯いた。
席を立ちピアノに向かう。彼女はそれを見つめ、それから部活動紹介の紙に手を伸ばす。
サッカー部の紙は、無かった。
天「大きいな〜…」
部活後、天馬は神童の家を訪れた。
扉の前まで来た天馬をメイドが迎えた。しかし神童家、そう簡単に会わせる訳にはいかず、メイドは月乃に確認を取って来るよう頼む。
メ「杏ちゃんよろしく。」
月「!はいっ…」
月乃は何となく天馬を避けて、奥のピアノの部屋まで向かう。
天(あれは校長先生と一緒に居た…)
響くピアノの音。
それは途切れず、まるで…深く聞く者の胸を締め付けるかのような音色。
部屋に入る。一心不乱にピアノを弾く神童の姿があった。
月「兄様、松風天馬さんが来ました。」
ピタリ、とピアノの音が止まる。
神「…話す事は何も無い。」
月「ですが、天馬さんは話したがっています。」
神「…」
兄様、ともう一度月乃が説得する様に言う。
自分でも避けたい相手なのに…それでも神童が苦しんでいるから。
月「このままで、良いんですか。」
神「…っ、分かった、通してくれ。」
円堂監督程じゃないが、と神童は心の中で呟く。
神(月乃も…真っ直ぐになるんだな。)
彼は再び、鍵盤に手を乗せた。
*つづく*