二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*参照1000突破!!! ( No.306 )
- 日時: 2011/10/10 11:02
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第32話 ——明るい病室に——
実況と歓声と。多くの声で沸く会場は、熱気に包まれていた。
橘「……」
ソ「珍しくテンションが低いけど…」
テ「大丈夫?調子悪い??」
俯いているとティアラやラティア、ソフィアに心配されて、そのたびに大丈夫、と言うけれど。
ソフィア、橘、ティアラとラティア。人数は減ってしまい、今日は4人で試合観戦。
鈴音は、南沢が来ていないから恐らく居ない。
ソ「…今日も、この前の様にやる気の無い試合になるのでしょうか。」
ラ「1試合毎にかわって行く…それが私の知る雷門中よ。」
テ「守の頃だよね!」
円堂守、彼が率いていた頃は1試合毎に試合の中で成長していった。その彼が監督になった雷門に、変化が起こらないとは思えない。
過去のFFの話で盛り上がり始める3人から外れて、橘は1人フィールドを見つめる。視線の先には、雷門中ベンチ。
橘「…ーラ様、カヲル君………蜜柑…もう分かんない…」
ぎゅ、と小花柄のワンピースの裾を握り締める。
大好きだった人達の名前を口にしても変わらない事位わかっていた、それでも…苦しい想いを和らげる事は出来る。
ソ(……まさか、こんなに出会う事になるなんてね。)
選手達が入場してくる。4人は、緊張とはまた違う空気の重さを、雷門から感じた。
*
南沢が来なかった事もあり、雷門中のテンションは全体的に低かった。そんな中で、やはり勝敗指示を守るという選手は半分は居た。
サッカーをする機会まで奪われたくない、と。
月「…天馬さんは。」
西園と霧野に挟まれている天馬は、考えて考えて考えて…結果、指示には従わず勝利を目指すと言いきった。
神童と三国も西園も同じ考えだ。
霧「…ったく、仕方無いな。神童、付き合ってやるよ。」
神「!霧野…」
霧「お前達が漕いでいる船に乗ってやる。」
霧野が月乃と視線を合わせた。じっと見る月乃に、小さく笑みを返す。迷いを断ち切れたと、報告する様に。
歌「フィフスセクターに反抗するのは選手の中で5人…約半分ね。」
こうなると、シードである剣城を含めた従順側が有利に見える。
波乱の幕開け——否、波乱どころではないかもしれない。
*
キャプテンの磯崎がベンチに来た時だった、その男が話しかけて来たのは。
あからさまに不快そうな顔で返事をした磯崎に、男は「雷門を潰したくなったら悪魔を呼ぶと良い。」と言った。
聖帝イシドシュウジの元に現れた男だ。
言葉の意味を測りかねて、磯崎は男が狂っているのかと思った。しかし警備員がいるのにベンチまで来れたと言う事は関係者だろう。
磯「悪魔だと?」
男「ただ、心の中で悪魔を呼べばいい。そうすれば悪魔は君に手を貸すだろう…安心しろ、安全面は配慮する。」
全く相手にしない方が良いと感じた。
磯「あー、一応やっておくさ。」
そんな場面が来る事無いかもしれないが、と心の中で付け足して。
男は満足したのか、にやりと笑った。自信の勝利を確信したかのような笑みだ。
男「よろしく頼むよ…」
男は、ベンチから去って行った。
*
試合が始まった。
万能坂のFWが攻めて行くと、剣城が軽やかにボールを奪った。それは一瞬の出来事で、全員が驚く。
剣城のボールを渡してはならないと思っていた霧野も、試合前に指示には従うと言わせた磯崎も驚いて目を見開いた。
直ぐにタックルを挑みボールを奪おうとする磯崎をかわして、シュートの様なバックパス——否、バックパスの様なシュートを剣城は雷門に叩きこむ。
月「自らの手で確実に指示に従わせる…」
歌「!もしかしてオウンゴール狙い…ッ??!!」
——ホイッスルが鳴り響く。
まさかの、オウンゴールだった。
*
「あ、すごい展開。」
「里愛〜、声が結構呑気だよ〜?」
「そう言う風香もな。」
…とある病室だった。
地デジ対応のTVをベッドの脇に置いて、ギリギリ20代の若者が集まっている。
それはかつての日本一。
里「何か久しぶりだねー、こうして集まるのも。」
風「里愛から電話来た時はホントに吃驚したよ、見慣れないケー番だったから電話切ろうかと思った(笑)」
蓮「僕も。」
迷「…その日の占いで懐かしい友達から電話が来るでしょう、って言ってたからもしかして、とは思った。」
泰「その占いスゲーな。」
龍「シュークリーム買って来たよ〜!」
玲「よし、魁渡にお供え」
鈴「死んでないから!!!」
奏「…玲央、右に一歩ずれた方が」
奏太のアドバイスはワンテンポ遅かった。スパァン…、とキレの増したハリセンの音が、病室に響いた。
里愛の50センチハリセンだ。
鈴「ナイスリート。」
里「魁渡を死んでる風に扱ったらオノ取り出すから。」
蓮・風「あるの?!」
と、里愛が自分の持つハリセンを見つめる。急におとなしくなった彼女を、風香が心配そうにのぞきこんだ。
視線はハリセンから、ベッドで眠る男子に移った。
目を閉じている少年。どう問いかけても、返事をしてくれない少年。その隣のテーブルにはテレビと黄色いガーベラと花瓶。
鈴音が差したカスミソウと赤系統の花々。
里「…」
鈴「…ハリセンで叩いたら起きるかも、なんて考えてる?」
全員が息を呑んだ。
鈴「あれから10年経つけど……魁渡は、全然起きないからな。」
——テレビから聞こえる歓声と機械の音だけが、ただ病室に響いていた。——