二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*人気投票実施! ( No.440 )
日時: 2011/12/03 21:15
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

映像の方で書いた短編です。



「消えちゃえば良いの、そうすれば何も無くなるわ…」





美しい少女だった。

揺れる長い金髪は、彼女の『美しさ』と『強さ』を表しているように見える。銀色の瞳は美しく澄んでいて、可愛らしい制服の様なミニスカートの下から覗く白い脚も、『綺麗』の一言に尽きる。ただ、その冷たい声の響きは、大して酷くも無い言葉を冷酷に彩った。


———少女は、自分の5M程前にいる1人の男性を見下ろす。
その男は普通では無かった。服はズタボロで殆どなくなっていて、体には複数の切り傷がある。悔しそうに少女を睨んでいた。そして、何より普通では無いのが……背中の、黒い翼。

「クッ…そ、」
「…どうしてそこまで悪魔側に居るのか私には分からない。ただ自分の兄弟を殺す様な事しかしない魔王に、何故従うの?」
「俺からしたら貴様等の方が悪魔だっ…!!!」

銀色の瞳で、少女は男を見つめ続けた。それから溜め息をつくと、足元にあるふちなしのメガネを拾い上げる。しかし、もう使い物にならない程壊れていた。左手を開いて、メガネを乗せ右手をかざす。と、柔らかい光が溢れてメガネは新品同様に直っていた。
メガネをかけて、少女は言う。

「何とでも呼んで。でも、例え貴方達が何と言おうと、私が『天使』である事に変わりは無いのよ。……生まれ変わったら、悪魔にならない様に気を付けることね。」
「っ!!!」

背中が輝き、現れたのは左右対称の白く大きな羽。
少女が指を鳴らしたその瞬間、男を包む様に光の壁が現れ爆発した。彼女は自らその煙の中に飛び込み、辺りが鎮まった頃、両手に水晶の様な物を持っていた。
それは男の魂であり、体はチリと化して消え去った。

「これが悪魔…いえ、私達の運命ね。」




この世には、天上界がある。
天上界は更に『天界』と『魔界』に分かれ、天界には神と女神と天使、聖霊がいる。神は1人で女神と天使は数人から数十人。死んだ人間や動物たちは聖霊となり生まれ変わる順番を待つため、数えきれない程いる。
魔界には1人の魔王と何百人もの悪魔。悪魔には階級があり、それ故賢く強い者と、弱く捨て駒の様に扱われる悪魔が居る。彼等は人間界を支配しようと企み、天使たちはそれを阻止しようとしている。天使は人間を神から生まれたと考える為、自分と人間を兄弟だと思っているのだ。

「…まったく、余計な仕事は増やさないでほしいわ…」

先程悪魔を倒した天使———ソフィア・アテネーは魂を女神に預け、休憩していた。女神に預けておけば、魂は聖霊となり元のサイクルに戻っていく。丸く収まるという訳だ。
ソフィアは自らの羽を1枚ぬく。そして左の手のひらに乗せて右手をかざすと、美しいメロディーが溢れだした。ソフィアは目を閉じてその音楽に耳を澄ます。やがて、綺麗な高音の歌声も重なった。

天使が使えるのは『魔法』と呼ばれるものに近い。実力のある天使は思うがままに魔法が使える。だから彼女はメガネをすぐ元通りに出来るし、体が記憶している音楽を羽から再生する事も出来る。

「わぁ…綺麗ですね。」
「これって何ですか???」
「こんな歌が歌える人が天界に居るの?!」
「音楽も綺麗に揃ってる…」

集まってきた天使や聖霊の声に、ソフィアは目を開けた。新入りばかりだ。
と、大地の女神であるガイアが小走りにやって来るのが見えた。ガイアはソフィアよりも長く女神をやっている。

「私、これ大好き!」

月光の様に穏やかに、それでいて強く響くその歌声は、聴く者の心を大きく揺らす。その後ろで歌声を支える音楽は美しく、また強弱やヒビキを完全に計算された上で成り立っている。
天界の歌姫と奏者の共演。それは一昔前の出来事だった。




嫌な事があっても、疲れていても、かつて妹の様に隣に居た小さな奇跡の友達の歌声は、私にとっての睡眠時間。
天使長であり女神でもある私は多忙を極め、さらに改革の時期に立ち会っている様な物だから…考えるだけでも嫌。
魔王の寿命が近くて、かつての友達は神様によって隠されてしまった。結果、これまた神様によって決められた婚約者と離れ離れになって、私とも離れて…。あの音楽は、婚約者と奏でた最初で最後のメロディー。

「…ヴィエルジェ、」

すっかり人間になったはずの友達。




孤高の天使、小さな奇跡。

天国の悪魔、胸の内の涙。

果実の女神、信じない心。



彼女の歌声は、優しく夢の世界に導くと共に、







                        






                                      私の瞳から、涙を引き出す。






「ガイア、私懐かしい音楽を聞いたのだけれど…」

月の女神セレネーに言われて、ガイアは花が咲いた様な笑顔で答える。


「あれよね、え〜、と……」



















奏者マエストロと歌姫フローラの特別共演!



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