二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*更新再開! ( No.489 )
日時: 2012/03/17 14:19
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第48話 ダ・カーポ +悪夢+


強く、強く、胸を締め付けられた感覚があった。

非常識な見舞いの数分後、俺は自分でも良く分からない笑いをこぼす。何で笑っていられるんだ?瑠璃姉がいないというのに。

笑いとは反対に、皆の言動については良く分かった。

目を覚ましたばかりの、しかも10年も眠っていた俺に、身内が蒸発—自殺—したなんて言えるわけ無いな。

魁渡「…瑠璃姉…」

鼻の奥がつん、とする。

何度でも、思い返すごとに、涙を流していた。

もう朝の光が差し込む、明るい部屋。結局、あんな事があっても眠れたおかげで目やにが酷い。

気分の良くない朝を迎えている。

どうしたら良いのか。瑠璃姉の事を、俺はどう受け止めるべきなのだろう?

これから、どうサッカーに向き合えばいい?


答なんて、直ぐには見つからなからない。

だから、ただ考えるだけで時間を無駄にはしたくないんだ。

ただでさえ10年という長い時間を、ベッドの上で息をするだけで過ごして来たんだから。

前向きになれ…俺。


とにかく、今日からリハビリをどんどんこなさないと!医者に何と言われようが、やってやるんだからな!!!

魁渡「体を動かせば頭だって動くよな!!」

今日から、流星魁渡は完全復活だ!!!











…少し、気が早いか☆





彼女がラケットケースを肩にかけている姿は、なかなか様になっていた。


今日は、月乃の練習試合の日。サッカー部の練習があるから見に行く事は出来ないが、調子も悪くない様だし大丈夫だろう。

ジャージの下には、テニス部のユニフォームを着ている。長い髪は、試合の邪魔になるからとメイドがポニーテールに結んだ。

結構強引だった。←

神童「月乃、良い結果待ってるからな。」

正門に着いた時、俺は月乃にそう言葉をかけた。

対戦校までは、部活で手配したバスで行くらしい。既に数人、バスの周りに群がっている。

月乃「…兄様、サッカー部、ホーリーロードで次に当たるのは…」

神童「?帝国だったな。確か、昨日円堂監督から連絡があった。フィフスセクターが組み替えたって…。それがどうかしたのか?」

無表情な表情に、少し緊張が走っている。月乃は俯いたまま首を左右に振って、特に、とだけ呟いた。

不審に思っていると、背後から元気な声が聞こえた。

円堂「神童じゃないか!」

神童「!円堂監督。おはようございます。」

どうしてこっちの方まで?

サッカー棟と正門は、決して近くない。それに駐車場はサッカー棟の近くだ。しかもサッカー部はもう少しで練習が始まる時刻。

…つまり、俺はもう行かないといけない時間?

月乃「…監督、何故ここに。」

円堂「ああ、月乃、お前は今サッカー部に所属してるだろ?でもテニス部の練習試合に行かないといけないって事で色々大人の問題が発生する(かもしれない)からな!」

説明が面倒だったのか、円堂監督の記憶力の問題なのか。

つまり、サッカー部員である月乃がテニス部の練習試合に参加するとなると、今まで面識の無かった円堂監督とテニス部の顧問の先生との間で、連絡を取り合ったりしなければならなくなる。だから円堂監督は連絡先を聞きに来たのだろう。

…大変ですね。

円堂「それに…」

神童「?」

円堂「………否、何でもない。」

明るい笑顔を見せる円堂監督。何を言いかけたのかは、分からなかった。

月乃「…兄様、行ってきます。」

神童「!ああ。思いきり、やってこい。」

言葉を言い終わると、月乃は頭をペコリと下げて背中を向けた。

その行く先では、円堂監督とテニス部の顧問の先生が連絡先を交換している姿が見える。

偶然にも、2人の携帯電話は同じだった。

こんな事もあるんだな、と思いながら俺はサッカー棟へ向けて歩きはじめる。





神童(俺の携帯電話は、かぶらないんだよな…)

店頭に並んでいるのを見た事すらない、俺の携帯電話を思い浮かべていた。




「月乃さん、先生の荷物、鞄に入れさせてもらっても良いかしら。」

テニス部顧問の女性教師が、近くに居た月乃に声をかける。彼女は頷いて、自分のスクールバックを開けた。

教師の小さなポーチに近いバック(入っているのは携帯電話と財布とカメラ)は、すっぽりと月乃のバックに収まった。

入れさせてくれと頼んだのは、他にも飲み物などがあり、教師の小さな荷物の為に1つの席は取れないからだろう。

円堂「それじゃあ、よろしくお願いします。」

顧問「はい。」

引き継ぎ事項を話し終えたらしい2人の大人を肩越しに見ながら、月乃はバスに乗り込んだ。



顧問「はい、みんな聞いて!今日のペアを発表するわよ。」

出発して数分。景色はまだ見慣れた物だからか、生徒同士の会話が弾んでいたころだった。

窓の外をじっと見つめる月乃の隣で、いつ来たのか美咲がニコニコしている。試合には出ないが、見学という事らしい。

そんな彼女も、顧問の声を聞くと他の生徒同様、視線はバスガイドの位置に居る顧問に向けた。

ダブルスの試合に置いて、ペアは自分のコンディションや結果を大きく左右する、大事なものである。

ペアは練習の様子を見て決められる事で、本番の公式戦以外では色々変わる。そう、毎回同じペアとは限らない。

バスの中が静まったのを確認して、顧問が発表する。

顧問「まず、五十嵐・工藤ペア。」

はいっ、と2人分の締まった返事。部長、副部長のペアだ。

今日出るのは、計10のペア。美咲を抜くと奇数だが、1人遅刻で偶数になった。

遅刻は、試合に出られないらしい。

顧問「…で、次に月乃・原嶺ペア。」

返事は、1人分だけだった。月乃と組む事になった、原嶺花音のだけ。

そして、少し遅れて小さな返事。

橘(…気にしてるのかな。)

原嶺花音は、過去に月乃がボールを当ててしまった相手だった。

バスの席は離れていて彼女の様子を知る事は出来ないが、恐らく今は気にしていないのだろう。

それでも、月乃にとって組み易い子では無い。



















そして、誰が想像しただろう。







あの日、万能坂戦から始まる月乃の悪夢の楽譜に、このタイミングで、












































【ダ・カーポ——繰り返し——】がある事に……





——悪夢は、繰り返される。


———【記憶】というプレゼントを背負って…