二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜 ( No.507 )
- 日時: 2012/01/23 19:09
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
第49話 失踪!?
先輩達は、険しい顔で対戦校の校舎を見上げた。ピリピリとした雰囲気が漂う。
————重々しい、雷門と正反対の空気。
足がなかなか前に進まない部員達の先頭に立った顧問は、彼女達を振り返り思いやるような笑みを浮かべる。
そして「行きましょうか」、とそっと言い、正門の奥へ進んでいった。
その時、美咲は顔をしかめて一瞬立ち止まる。
橘「…?何か、嫌な予感が、」
彼女の声は、誰にも聞こえないほど小さかった。
————————〝今度こそ〟逃がさない…
人を殺せるのではないかと言うほど鋭い視線で、テニス部を見つめる者がいた……。
*
足音が跳ね返ってくる。薄暗い道を照らすのは、非常灯しかなかった。
所々に、緑色のこの学園伝統の制服を着ている生徒がいる。部長は顔をしかめた。歓迎されていない雰囲気だ。
五十嵐(監視されてるみたい・・。)
つかつか歩ける顧問が、本当にすごいと思えた。
美咲が口を真一文字に結んで、すぐ後ろを歩いていた月乃の手をぎゅ、と強く握りしめるた。
突然の出来事に驚いている彼女に、困った表情で美咲は言う。
橘「ごめんっ、怖くって…離れないでね?」
〜美咲side
月乃「……。」
ごめん、嘘。
嘘をついたの。つきのんは分かってるけど、きっと言わないんだろうな。
探るような瞳で見ていたつきのんは、手を振り払わなかった。ありがと、とお礼を言ってそのまま歩く。
これも、つきのんを守るため。この学園に満ちる闇色から、彼女を守る私の役割。
顧問「じゃあみんな、一旦休憩をとりましょう。」
そして休憩が終わった時。
「嘘っ、月乃さんは!?」「い、いなくなっちゃった!?」「探してっ!!」
暫らく顧問が沈黙、そしてああっ、と大声を上げた。
顧問「携帯…月乃さんに預けたまま…!!」
*
月乃「っ!」
声にならない悲鳴を上げた。
辺りは暗く、物がハッキリとは見えない。その中で、月乃は何とか脱出できないかと考えを巡らせる。
吸い込まれるようにして入った部屋は倉庫と化していて、ハッと我に返った時、既に扉は閉じていた。
ぼんやりと見えるのは、古ぼけたサッカーボールの山。
脱出の為に内側から扉を開こうとボタンを押したりしても、何の反応もない。
閉じ込められた、と認識した。
と、その時部屋の奥から物音がした。それは息が止まりそうなほどの空気を身にまとい、彼女に近づく。
背後を振り返ると、見慣れたシルエットが。
月乃「剣城さんの体に入って、何をしたいの。」
剣城京介。…の体に入った、悪魔。
「一度逃がした獲物を、今度こそ仕留めに来たんだ。」
月乃「…前とは違う悪魔、ですか。」
「ご名答。」
以前月乃の首を絞めた悪魔とは違う、余裕な態度…言っていることは正しく(まさしく)悪魔だ。
月乃「…前の悪魔が逃した、ということ?」
暗くて、相手の表情は良く見えない。毅然とした態度で月乃が尋ねるが、今度は何も答えが返ってこなかった。
嫌な予感を感じたのか、月乃は自分の荷物から顧問の携帯を探し当てアドレス帳を開く。
「時間があまり無い…直球で用件を言おう。」
自分の体に、視線で穴を開けようとしているとも思えるその視線。彼女が顔を上げると、視界が雨空の、黒い雲の色に染まった。
風が吹き荒れる。
「早く力を解放して…大人しく捕まれ。」
体が捻られる様な感覚に、目を閉じて耐える。右手に持った携帯を、放さないようにと強く握りしめた。
妙にぬるい、相変わらずの強風が頬を撫でて行くと、捻られる感覚が消えた。そっと目を開けると————別の世界だった。
*
彼女は知っているはず、この世界を。
「…ようこそ、貴女が失くした世界へ……」
カタカタと体を震わせる彼女の背中に声をかけた。ハッとして振り返る彼女は、瑠璃色の瞳に涙を潤ませている。
ああ、似ている。やはり獲物は間違っていない、あの時の少女だ。
確信した。
記憶に残っている惨劇を見せたのだ。
黒い炎に包まれた戦場、彼女が父親を失くした——————俺が当時の次期魔王候補、否裏切り者を殺した時の様子を。
炎がくすぶり、花園を消してゆく。
月乃「っ、ぁぁっ…!!!」
口を両手で押さえ、後ずさった。その時、ポト、と携帯が落ちるのが見えた。
「思い出せ、消した記憶を。」
俺の物ではない口から、俺の物では無い声が出る。
悪魔とはもろい。人間の体を借りなければ、人間界に存在出来ないのだから。
*
GKのユニフォームを着た少年が、慌ただしいテニスコートを見つめていた。
サッカー部のコートとテニスのコートは、扉一枚で繋がっている。練習がまだ始まらないサッカー部に入る彼は、様子を見ていた。
今日は練習試合だと聞いていたが、その対戦校が彼のサッカー部と大会で次に当たる中学校だった。
違う部活を見ても参考にならないと思った。
が、どうやらサッカーの大会ですごい活躍を見せた選手がテニス部の練習試合に出ると風の噂で聞いたのだ。
「雅野、準備を始めるぞ。」
彼は、その声に振り返る。白い外跳ねの髪の少年、雅野麗一。
雅野「龍崎…何の騒ぎか知っているか?」
龍崎「ああ、雷門中テニス部の生徒が1人いなくなったらしい。」
雅野「迷子か。」
この校舎ならあり得るな、と心の中で彼は呟いた。
後から来た少年、龍崎はコーチが呼んでいるぞ、と雅野を促す。扉の向う側を見ると、青い髪のコーチがこちらを見ていた。
佐久間「雅野、今日からの総帥の紹介がある。」
集合している場所に駆けて行き、佐久間が紹介した男を見上げる。そして何者か認識した瞬間、体中を電流が走った。
「鬼道有人だ。早速だが、今から対雷門中の特訓を始める。」
鬼道が挨拶したその時から帝国学園は変わり始めた、と雅野は思う。