二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜本編更新 ( No.544 )
日時: 2012/04/01 18:28
名前: 伊莉寿 ◆OIb3ToTaW. (ID: r4kEfg7B)

第55話 フィフスセクターへご招待

〜神童SIDE

倉間「人数は9人か。」

走り去った天馬が見えなくなると、倉間が屈伸をしながら呟いた。その言葉にうなずきながら辺りを見渡す。

ギリギリだったんだな、サッカー部は…。

剣城は練習に参加しない、試合には出てくるかもしれないが…。天馬はしばらく帰ってこないだろうし、練習はどうするかな。

アルティメットサンダーの練習にしておこうか。完成させないといけない、帝国戦は明日に迫っているのだから。

と、背後から足音が近付いてくる。

歌音「キャプテン、今日月乃さんは…?」

神童「ああ、月乃なら今日はびょ(橘「あっキャプテン!」

言いきれなかった。呼ばれて橘を振り向くと、一緒に走って来たであろう葵たちが後方に見える。

…速い。

橘「つきのんサッカー部やめちゃうって本当ですか!?」

サッカー部「!?」

橘の言葉に、全員の視線が俺達に集まる。倉間が視線で「どういう事だ」と訴えてきた。

ただ、残念な事に。

神童「…?」

歌音「聞いてませんでしたか…」

そういう事は聞いてない。ただ、ただ昨日…。

橘「…本当かぁ。」

神童「…否、しばらくは休部と言う事になる。」

橘「え?」

肩を落とす橘に、しっかりとした声で念を押す。

神童「やめる事は無い。それに今日は病院に行くだけだ。」





『記憶を取り戻す事に、専念したいです。』

部活の時間も使って、記憶を取り戻す手掛かりを探したいのだと言う。

俺はそれを認めた。記憶が無いのはつらい事だろうし、サッカー部の今の試合より一生に関わる事だ。

ただそのために部活をやめるというのには、首を縦に振れなかった。

休部という方法もあると提案すれば顔をしかめ少しの沈黙が生まれたが、頷いて認めてくれた。

もし彼女がいつも通りサッカーが出来る状態ならアルティメットサンダーの練習を見てアドバイスを貰いたかったが…。

…いないんだから、あれこれ言ってもどうにもならない。

神童「練習を始めるぞ!」

浜野「アルティメットサンダーやる?」

霧野「順番はいつも通りでいいか?」

俺の声に応えてくれる仲間達に頷いてフィールドへ。

一歩足を踏み入れると、校舎の上でカラスが鳴いて飛び立った。それだけの事が、妙に引っ掛かって振り返る。

カラスは俺を見ていた。

胸騒ぎがする。何か悪い事が起こるのではないか…そんな気がしてならない。

霧野「神童?」

神童「あ、ああ今行く。」

背中にまとわりつく視線は、あのカラスの鋭い視線なのか。


**

月乃「……もう話、終わった。」

病室を出た直後、部屋脇の壁に寄りかかっていたのは…ついさっきまで脳裏に浮かんでいた少女で。

本来疑問形であるべき言葉を、自分の事のように言っている。

剣城「……」

月乃「…私に何か。」

まずなぜ病院に居るのかと問いたい。…ただ好都合すぎて怖いな。

兄を助けるためには、フィフスセクターに従い手術費を工面してもらわなければならない。

そのフィフスセクターから月乃を組織本部へ連れて来いと言われている。その事を忘れていた訳ではなかったが…。

まあ、いい。今丁度月乃を組織へ強制的に連れて行くのが良いと考えていたところだ。

連れて行った先は、慎重な聖帝の事だ悪い目には遭わせないだろう。

細い両手首を右手でまとめ頭の上で固定すると、突然の事に月乃が目を見開いた。

辺りを見渡すと、その目には少し離れたところに居る黒木さんが映ったのか。俺を見てそう、とだけ呟いた。

剣城「悪いが…これも命令だ。」

月乃「……逃げないから、手離して。」

直視され、気付くとその手を離していた。月乃は逃げる様子もなく、黒木さんの居る方向を見つめていた。

ただ動く様子が無かったので、背中を押して外へ出る。そして押した勢いのまま車の後部座席へ押し込んだ。

誘拐現場だな…。

思わずため息をつく。バタン、と後部座席のドアが閉められ黒木さんが笑みを浮かべた。満足された様だ。

言葉もなく彼は運転席へ乗り込み、去っていった。またため息がこぼれる。

これで良いはずなのに、納得していない自分がいた。


**

聖帝「良く来たな。」

月乃「…こんにちは、聖帝。」

堂々としているわけでも、小さくなっている訳でもなく、ただこの空間に違和感なく存在する少女。

彼女はフィフスセクターの望む存在。組織が目をつけない訳が無いのだ、雷門中に突如現れた圧倒的な力を持った少女なのだから。

ふと彼女が私の背後を凝視して固まる。私も自分の背後を見てみると、誰より彼女を望んでいたであろう男が立っていた。

月乃「ーっ!?」

男「……初めまして。(ニコッ」

月乃「…どうするつもり、私を魔…」

男「今はまだどうしようもしない、会いたかったのは確かだが…見つけてくれた聖帝の方でしばらく働いてもらえるかな。」

やはり2人は知り合いか。

月乃は男の顔を確認した瞬間、顔を強張らせた。わずかだが体を震わせている。

嫌な思い出でもあるのだろう。

聖帝「月乃、お前は————。」

月乃「!!」

本心に背く事だった。ただこの男と、もう1人見張っている男の存在がフィフスセクターの聖帝である事を強要する。

写真をひらつかせれば、反抗する気は瞳から消えていた。

聖帝「ただ、無くした記憶がそこには存在する。」

月乃「っ……分かりました。」

男の言っていた通りだ。記憶の為に、そう言えば彼女が逆らう事は無い。

あまりにも簡単に、雷門の牙を抜く事が出来てしまった。このままで…次の帝国戦はどうなるのか。


**

神童「月乃、どこまで出掛けてたんだ!?」

月乃「…それは、」

帰って来た月乃に不安だった勢いのまま質問すると、彼女は何も言えないらしく俯いて黙ってしまった。

服装は制服のままで、傷も汚れも見当たらなかった。

はあ、とため息をつく。

床を見つめる頭をポンポンと叩いて無事で良かったと俺の今一番強く想う事を言えば、ごめんなさいと蚊が鳴くような声。

月乃「兄様、私、早く記憶を取り戻したいです…」

神童「俺も、月乃の記憶が早く戻ると良いと思っている。」

月乃「だから…だから、転校、します。」



** to be continued... **