二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜参照100突破♪ ( No.55 )
- 日時: 2011/09/05 04:09
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第7話 moon&memory〜月と記憶〜
そよかぜステップ。緑色の風が起こり、相手を抜き去る技。
天馬が月乃に向かって技を繰り出した。周りは技に驚いていたが、月乃は目を閉じている。
月「…カゼ。」
天馬が月乃の直ぐ隣に来て、走り去った瞬間に、彼女はボールを奪った。
一瞬の静寂。天馬が驚いてボールを持った月乃を見つめた。
西「ええ??!技は完成してるのにー??!」
円「…!」
天「まだ…何かが足りないのかな…」
技は未完成なのかと天馬が考え始めるが、自分自身あれで完成してると感じていた。
月乃は天馬の方を振り向き、「技は完成です。」と一言。
月「そよかぜステップ、天馬さんの技です。」
天馬がキョトンとしてから、西園が駆けて行き「完成した」と騒ぎ始めた。本人も自覚して笑顔になる。
少女はボールを持って顔を上げ、俯く神童へ視線を移す。
月「…に様。」
神「お前達がこんなにがんばってるのに…本当にキャプテンの資格は無いな。」
目に涙を浮かべて神童が言うと、天馬達が戸惑った様な目で彼を見る。何と言い返したら分からない、という顔。
月「っ…」
円「そんな事無いぞ!」
—円堂守。
何かが崩れる。
何かが騒ぐ。
自分でも分からなくて、ただ、その会いたくない、会ってはいけない気のする男を見ていた—。
月「っ。」
目の前で舞う白い紙きれ。
フィールドに、はらりと落ちる。円堂の手から落ちた物だった。神童が今日提出した、退部届。
円「そういえば、お前誰だ?」
月「っえ…」
月乃の目の前に円堂が居た。彼女は戸惑い、なかなか言葉を発せない。
円堂は一瞬、ほんの一瞬そんな彼女を、ある少女と重ねていた。
——初めて会った時の、流星瑠璃花と・・・・
〜円堂side
俺の目の前で戸惑う女の子。
何でか知らないけど、一瞬だけ瑠璃花みたい、って思った。
何でだろうな。深い藍の目しか共通してないのに。顔とか何となく似てる気もするけど…。
神「…?」
天「雷門中の転校生だと思います!ね、キャプテン!」
神「あ、はい、明日から雷門中に通う月乃杏樹です。」
月乃…。神童達とはどんな関係なんだろ、とりあえず!
円「雷門サッカー部監督、円堂守だ!よろしくな、月乃!!」
笑いかけてみると、月乃のきつい表情が少しだけ和らぐ。
月「…よろしくお願いします。」
呟くような、挨拶だった。
〜神童side
帰り道。
さっきの監督と月乃のやり取りが頭の中に残っている。お互い一瞬、固まっていた。
月乃は緊張したのかと想像がつくが、監督まで?
そんなまさか…
月「兄様、寄り道して帰ります。先に行って下さい。」
・・・え?
そう言うが速いか月乃は河川敷のフィールド向かって降りて行く。
神「月っ…」
月「直ぐ行くので。」
下まで行き、振り返ってそう言う。俺は動けず、走る彼女の背中を見ていた。
…心配、だった…。
〜ノーマル
月「何されてるんですか。」
月乃が、隠れていたらしい少年にそう言った。
少年—剣城が振り向く。そして口を開いた。
剣「デスソードを簡単に止めて、あんな所に居るお前が、不思議に見えたんだ。」
月「…あんな所?」
風が吹いた。初夏と夕暮れの匂いを運ぶ風が、月乃の桜色の髪をなびかせる。
剣「お前…何者だ?」
深い深い瑠璃色の、瞳。
少女にとって、剣城の質問は答え方が分からない。しかし、円堂の時の様に混乱していない。
月「私…きっと人間です。」
きっと。
必要の無い「きっと」だった。でも、付ける必要がある様に、感じてしまった。
月が、大きな黄色い月が見える。
神々しい輝きに、少女は吸い込まれているようだった。目が離せなかった。
月—何故、自分はこの名前にしたのか良く分からずにいた。
「私は月すら思い出せずにいたのに。」
月光が、部屋を照らす—。
*つづく*