二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜本編更新 ( No.550 )
日時: 2012/04/04 23:54
名前: 伊莉寿 ◆OIb3ToTaW. (ID: r4kEfg7B)

第57話 フィフスセクター


静かな夜だ。明日はサッカーボールを蹴れっかな。

窓の外は明るい電灯がぽつぽつと見える。稲妻町は都会な方なのかどうなのか俺には分からないけど、暗い街ではないと思う。

魁渡「雷門中あるし…」

そう言えば明日、帝国学園と試合らしい。鬼道に教えてもらった。試合は興味あるけど、リハビリ優先したいんだよなー…。

リハビリをしていると、10年の月日を感じる。自分だけが置いて行かれた感覚はすごくあるけど、自然に受け入れられた。

と、窓の外を眺めてると誰かが病室の周りを走る音がした。ドアを振り向くと、丁度ガラリと戸が開く。

魁渡「…コンバンハ☆」

とりあえず何と言ったらいいのか分からなくて、日本のあいさつを投げかける。

その人物は立ち止まって俺の顔をじっと見た後、突然俺のもとまで走ってきて覆いかぶさった。———だけど見知った人物で。

ティアラ「魁渡ぉっ!!」

魁渡「ティアラ、久し振りっ!!」

小さい頃からの友達、ティアラ・クラリス。

もう24歳なんだよな、としみじみ思う。成長したなぁ、俺は20だというのに身長変わらないから何かすっごい子供だ。

ティアラ「良かった、すごい元気で…安心した。」

魁渡「ティアラ、カードゲームやろうぜ!」

顔を見たら、やりたくなった!←

ティアラは一瞬きょとんとしてからさらりとOKしてくれた。あ、何かすんなりいくと思ったらラティアがいないのか。

一応気になって、居所を尋ねてみる。

魁渡「ラティアは?」

ティアラ「パーティーだよ。財閥が集まって小さいパーティーやるんだけど…私は魁渡に会いたくて留守番にしたんだ♪」

魁渡「…それ、良いのか?」

ティアラ「ノープロブレム!だって元々私クレープ食べたいだけだし、クレープは歌音が取っておいてくれるんだもん♪」

歌音…って聞いた事ある様な無い様な名前…。

ティアラ「あ、歌音っていうのは(「魁渡ー!」

魁渡・ティアラ「!」

ガラッ、とノックもせずに誰かが入って来た。

明るい声、オレンジのバンダナ、満面の笑顔…ハハ、変わって無いなぁ肝心な所は!

魁渡「久し振りだな、キャプテン!!」

ティアラ「守!?」

キャプテン—円堂守はティアラの存在に驚いていた。しばらく会って無かったのか、こっちでも久し振りとかいう単語が聞こえる。

そう言えばキャプテンは今何してるんだろ。まじめに働くような奴にも見えないし、あの頭だと就職なんて…。

ティアラ「守は、今雷門中サッカー部監督だっけ!」

魁渡「あー、納得。」

円堂「今の雷門も良い奴らばっかだぜ!面白い奴もいるし…」

ティアラ「松風天馬って子?」

誰だか全然分かんね…。

ティアラ「フィフスセクターって組織と戦ってるんだよね、雷門サッカー部は!」

魁渡「フィ…何?」

円堂「フィフスセクターだ。」

キャプテンがさらさら言えるなら、俺だってすぐ覚えられるよな!?←

そのフィフス…何とかは、組織名らしい。サッカーを管理するらしく、勝敗指示などを送ってくる。

今行われているホーリーロードという昔のFFに当たる大会も、その指示の元行われているらしい。

何だそれ。

何か…怒りもあるけど笑っちゃいそうだ。

魁渡「キャプテン、そのフィフスセクターについてもっと詳しく教えてくれ。」

円堂「…ああ、魁渡がいれば心強いぜ!」

そんな勝敗指示なんて、おかしい。努力が評価されないなんて、実を結ぶ事が許されないなんて、そんなのあっちゃいけない!!

サッカーは努力するだけ上手くなって、その上達がチームの得点につながる。だから試合で勝つ事が出来る。

それも無くす?フィフスセクターの言う平等はサッカー界であってはならない平等だ。

こうして夜のひと時は、キャプテンとティアラと俺の勉強会となった。


**


『悲しみの海に沈んだ私、目を開けるのも億劫
 このままどこまでも堕ちていき、誰にも見つけられないのかな』

部屋に入ろうとすると、聞き慣れない歌が聞こえてきた。

神童「月乃?」

月乃「!」

月乃が座っていた椅子から立ち、頭を下げる。音は止めてあったが、恐らくPCから発せられていたのだろう。

何の歌かと尋ねると、今日パーティーで勧められた歌らしい。

月乃「私の雰囲気に合っている、と。」

そう言う彼女は眠そうだった。

夜の11時に部屋に来るとは思っていなかったのだろうが、起きていて良かった。

『どこへ向かい、何をすれば?ふと差し込む一筋の光
 手を伸ばせば届きそうだけど、波にさらわれ見失った』

流れてくる歌詞に耳を澄ます。

月乃の雰囲気に合っている…確かにそうかもしれない。記憶という全ての土台が無く、気付けば俺の家の前に倒れていた。

どこへ向かえば良いのか、何をすれば良いのか。

今は…分かっているのだろう。記憶が無いからこその行動、転校。その先に何があるのか俺は知らない。

彼女の全てを知る義務がある訳では無いとしても、親戚という立場である以上知る権利はある。俺はそう考えた。

神童「月乃、転校とはどこの学校だ?」

画面から顔を上げ、月乃は首を横に振った。

月乃「私も、知りません。」

…え?

そして思い返してみると、彼女は誰からその情報を得たのか俺は知らなかった。

ただ騙されただけなのではないか、という予想が頭をよぎる。

神童「…転校を勧めたのは、誰だ?」

彼女の表情が強張った。PCから流れる音楽も、耳をすり抜けていく。

やがて俺を映していた瑠璃色の瞳が伏せられ、負けたように彼女は答えを口にする。

———予想外の答えを。






月乃「…聖帝、です。」




『深海少女、まだまだ沈む 暗闇の彼方へ閉じこもる。
 深海少女、だけど知りたい 心惹かれるあの人を見つけたから』


月乃「私は、何が何でも行きます。」


そこまで、強い瞳で言うのなら。

俺は、否定できる訳が無かった。

**

チュンチュンッ

小鳥のさえずりを聞いて、俺は部屋のカーテンを勢い良く開けた。

空には太陽の光と、どこまでも続く青い空。晴れた空が広がっている。俺は嬉しくなって、外に飛び出した。

天馬「サスケッ、今日は良い天気だね!!俺、今日は勝てそうな気がするよ!!」

**

勝利の女神は、雷門に微笑んでくれる。

だから私は、心配する事なんて無い。

メイドさんには出かけてきますと言っておいて、机の上には置手紙も置いた。

門の外に出て、神童邸を振り返る。

ルナが見送りに来て、一声鳴いた。

ルナ「にゃー、にゃー(行かないでー)」

この子にはルナと名付けたけれど…あの人でも分かってくれなかったのかな。

さようなら。

門を閉めて、私はもう振り返らない。

『ガシャンッ』

ルナ「にゃー!」


今日は、快晴。

新しい一歩を踏み出すには、とても良い日。



**

『兄様に、今までご迷惑をおかけしましたとお伝え下さい。』


* to be continued... *

月乃が聞いていた歌:深海少女