二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*new:Good bye. ( No.569 )
日時: 2012/04/23 18:34
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

第60話 彼らの良心は裏目に出る


前半終了のホイッスルでハーフタイムへ。あたしはソフィアからかかって来た2度目の連絡の内容に立ち尽くしていた。

『悪魔に隠されていて、どこにいるか探れないわ。』

つきのんの事だった。

『最後に居た場所は稲妻総合病院、剣城京介と会話をした後姿が隠されてしまったの。』

どうして。

もしも、彼女が悪魔の近くにいるのだとしたら…もしも、彼女が悪魔に捕えられてしまったら。

フローラ様は…!!!!!!

橘「絶対にダメっ!!」

剣城「…どけ。」

我に返る。そうだ、今いる場所はフィールドに繋がる通路だった。

剣城君は走って来たみたい。…って待って待ってもしかして剣城君って!!!

橘「待ってっ!!」

剣城「!?」

あたしをスルーしようとした彼の腕をつかむ。あんまり力を入れる訳にはいかないから、逃げられない程度に…。

剣城「っ!何の用だ、橘…」

…あれ?何か嫌な音がしてるような。あ、やば!聖力使ってたぁぁ!!!ソフィアに怒られる!!

慌てて離すと、剣城君はため息をついた。

橘「…ごめん痛かったよね。」

さすがに聖力発揮した時の力は常人には…。

剣城「…別に、邪気のない痛みは大した事無い。」

橘「へー、邪気のある攻撃ってどれく…。いいや、そう言えばつきのんには会った?」

嫌な思い出のカケラが見え隠れ。フィフスセクター詳しく調べた事無いからどんなのか分からないけど、結構ひどい事するなぁ。

あたしの問いかけに、剣城君は顔をしかめて黙りこむ。…あれ、もしかして聞かれたくない事だった?

橘「ごめん、つきのんの事は他人事と思えないから、次の問いかけには答えてほしい…つきのん、どこにいるの?」

剣城「!」

一歩、剣城君に近付く。気付けば、涙がにじんでいた。

剣城「なぜ、そこまで知りたがる。」

橘「あたしも雷門イレブンだし、それに彼女は今危険な状況に居るんだって事分かってないの!?お願い、場所を教えて!!」

すがるように剣城君に言えば、彼は眉をよせて、悲しげな声で返事をした。思わず、聞き返すような言葉。

剣城「……場所を教えた所で、お前は行けない。」

橘「……何で、」

あたしの言葉に対する返事はない。しばらくして、剣城君が口を開く。

剣城「俺も、反省している。ただ、あの状況で俺が月乃に出来る事は何もなかった。アイツは望んでフィフスセクターに入り、そこで他の場所では手に入らない何かを手に入れるという…強い意志を持ってた。自分を見ているようだったが、だからこそ何かをしなければいけないという想いと同時に……もう、どうしようもないとも思ったんだ。」

橘「っ…。」

兄を助けたい一心で、組織に入った彼。

その事情はソフィアから聞いてたし、その彼が言うんだからつきのんはどうしようもなかったんだと思った。

もう、どうしようもない?違う、あたしは…あたしは、天使なんだから。今3番目に強い天使なんだから…。

剣城「だからこそ、兄さんとアイツが望む雷門の勝利だけは、叶えないといけないと思った。それが今俺に出来る、精一杯の罪滅ぼしなんだ。」

強い意志のこもった瞳をあたしに向けてから、剣城君はフィールドへ走って行った。

取り残されたあたしは、考える。

天界で3番目に強い天使が何も出来なくて、1人の人間である剣城君は精一杯彼女と兄の願いを叶えようとしていて。

…ダメだよ、考えないと。

橘「あたしに…出来る事。」

助ける事?違う、つきのんなりに考えて懐に飛び込んで行ったんだよ。やっぱり、これしか選択肢はないよね。






橘「あたしからも、お願いしますっ!」

剣城「橘…」

倉間「お前まで何言ってんだよ!」

倉間の声に、橘はビクリと体を震わせた。そこまで強く言わなくても良い様な気はするが、倉間の意見も一理ある。

練習に来ない、今日の試合は前半どこにいたのか分からない…信用を失うには、十分だった。

それでも橘はあきらめず、剣城の隣に立って俺たちを説得する。

橘「だけど、剣城君のキック力なら成功させられるはずです!」

天馬「俺もそう思います!…剣城を、信じます。」

剣城「!松風…」

橘「ありがと、もう絶対あだ名で呼ばない!」

…お互い、すごく嬉しそうな顔をしていた。

思わず笑みがこぼれ、隣の霧野に顔をのぞかれる。ああ、真剣な話の最中だったな。

橘「…霧野先輩とキャプテンはどうですか。」

霧野「!」

全員の視線が、俺と霧野に集まった。本当の事を言うと、すでに決まっていたが。

神童「俺も剣城を信じる。その目の光は、前と違うからな。」

俺達を潰しに来た時の目じゃない。きっと、俺達と同じ道を剣城は今通ってるんだ。

純粋な強い想いが、宿ってる。

霧野「剣城、アルティメットサンダーを絶対に完成させよう。」

天馬「霧野先輩!」

こうして、全員が賛成してくれた。円堂監督が、剣城に着替えて来いと笑顔で指示を出す。

雷門イレブンは、ようやく11人揃う。

そして各自休憩をとりだす中、俺は着替えに行く剣城の背中を見ていた。…剣城なら、きっと完成させられる。

アルティメットサンダーを。



橘「…良かったね、剣城君、つきのん。」

**

「聖力の反応?」

助手席に座る男の声に、後部座席に座らされていた月乃の肩が僅かに跳ねる。車道を見ていた視線を、そっと男へ向けた。

「問題ない、我々のターゲットでは無いのだからな。恐らく低いクラスだ…高くともAクラス。敵ではない。」

月乃の表情は動かない。車が右折する。少し前まで見えていたホーリーロードスタジアムは、もう遥か後方だ。

「ただ…相手を確認しておいて損はない。」

月乃「っ!」

すぐ隣に座る監視役の男に不審がられない程度だが、月乃が息をのむ。その男の言葉が意味する事は……。

「1人で良い、悪魔を帝国FWに乗り移させろ。」





後半開始、悪魔は悲劇を連れてくる。