二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

ハロウィン番外編**魁渡君のお菓子巡り ( No.703 )
日時: 2012/10/31 23:38
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: M9rbiW/d)

「Happy Helloween! ってことでお菓子くれ!!」
「え?」

東京都内のとある病院で、小さい男子が看護婦にそう言いながら手を突き出していた。


** 魁渡君のお菓子巡り **


「どうしたの、魁渡君?」
「別に!」

 冬花は目をぱちくりさせて、橙色の髪が目立つ小さな少年——流星魁渡を見下ろした。彼は最近リハビリを頑張っている入院患者。昨日不機嫌で気になっていたが、朝の検温に訪れてみればこの言葉。表情も明るくなっている。

「……小児科病棟の子の為の飴ならあるから、それで良いなら。」
「サンキュー!!」

“小児科病棟の子の為”というのを気にしない事に冬花はまた驚いたが、笑顔で飴を受け取る魁渡に、微笑みをこぼす。
ちなみに彼はその身長から良く小児科病棟の子供と勘違いされ、2,3日でイライラを募らせていた。

「今日は外出するって言ってたけど、無理しないでね。」
「俺はもう大丈夫だって! でも早く病院と縁を切りたいからな、無理はしない。」
「そう。」

そう答えつつ体温計を仕舞い、部屋を出るためドアに手をかけて。

「飴、マジでありがとな冬花!」

部屋を出る直前に掛けられた言葉に振り返り、もう一度微笑んだ。




「ええと、これは一昨年の……こっちは違うし、」

 サッカーの名門校として全国にその名を轟かせる私立中学校・雷門。そのサッカー部の顧問を務める音無春奈は、ミーティングルームで探し物をしていた。

「もうっ、どこいったのよイナズマジャパン決勝のDVD!」
「これか?」
「あっ、そうそうこれこれ……って、え!?」

突然目の前に差し出されたDVDに、春奈は顔を上げる。

「集中しすぎだろ、俺が入って来た事に気付かないとか。」
「そう、ね。」
「Trick or treat!!」
「……魁渡君、日本にハロウィンの習慣はないのよ?」
「俺外国育ちだし。」
「5月3日。」
「憲法記念日。」
「12月23日。」
「イナイレとイナゴの映画公開日、ついでに天皇記念日。」
「天皇誕生日がメインよ!?」

ちゃんと知ってるじゃない、と溜息をつく春奈。
全く気にせずニコニコの魁渡は、お菓子頂戴と手を突き出す。

「魁渡君がそんなにお菓子好きだったなんて……知らなかったわ。」
「別に好きな訳じゃないけどさ。訳ありってやつ?」
「もしかして彼女に?!」
「……彼女って"she"だよな? 誰指してんだ?」
「……代名詞じゃないんだけど……。」

青春の学校生活を過ごさないとこうなのかしら、と心の中でもう一度溜息をついた。

「とりあえず、お菓子は持ってないの!」
「それ先に言えよ!!」
「差し入れで秋さんが昨日作ったマフィンがあるけど、余らないし。」
「そっか。じゃあ秋の家行けばあるか……?」
(そんなに食べたいの!?)

むー、とあごをつつく様にしながら考え込む魁渡が幼く見えて、春奈はくすりと笑った。
10年前と外見も変わらない少年。

「じゃっ、俺秋の家——」
≪ウィーン≫
「お、もう来てるのか早い……魁渡!?」
「キャプテン!!」

魁渡が顔を輝かせる。入って来たのはサッカー部の監督・円堂守だった。イナズマジャパン以外のチームに所属していなかった魁渡にとっては、円堂はただ1人のキャプテンだ。

「キャプテン、Trick or Treat!!」
「おお!」

魁渡はチョコを手に入れた!▼

「何で持ってるんですかー!」


**

「ええと、木枯らし荘……木暮いそうな名前だな。」

 ジョグのペースで走りながら、春奈がくれたメモを見てそう思う。これで木暮いたら笑えるなー。そんな事を考えながら走っていたせいで、俺は角から出てきた人影に反応するのが遅れた。

「「っわ!!」」

すれすれで衝突を回避——したら相手はふらついて、鞄の重さで倒れた。

「だ、大丈夫……か、」
「あ、大丈夫!」

へら、と笑う少年が来ていたのは、雷門のジャージ。
キャプテンの言ってた“面白いやつ”の特徴と一致する、茶色い髪、青い目と——。

「え、え??」
「なるほど、指突っ込みたくなるな。」
「!!?(何で初対面の男の子に髪型いじられてるの!!?)」

何か、こんな感じのパン見かけたことあるな、Gマートで。

「ごめんな前方不注意で。」
「お、俺も急いでたから……」
「じゃあお互い気をつけようってことで!」

——じゃあな、松風天馬。
注目人物に出会えてわくわくした俺の脚は、すごく軽くなってた。

(え、何であの人俺の名前……っていうか見覚えあるような??)



「すっげー、売ってるマフィンみてー!!」
「そんな、カボチャ入りなんて初めてだもの、まだまだよ。」

 微笑みながら、秋はすんなりマフィンをくれた。それにしてもハイクオリティ。これいくら?、って聞きそうになった。

「もう走って大丈夫なの?」
「ぜんっぜんへーき! え、でも何で走ったの知ってんだ?」

そんなに汗はかいてないのに。すると秋は笑って、それくらい分かるわよ、って。……すげ。

「なー秋、あとお菓子くれそうでここら辺に住んでるやつっているか?」
「……そ、そうね、円堂君の家かしら。」
「へ? キャプテンって、学校に居るだろ?」
「夏未さん、料理は好きなのよ。」

……夏未?

「……10年って、長いんだな。」
「魁渡君、知らなかったの!?」



「Happy Helloween!」
「あら、本当に元気そうね。」

 秋が電話してくれたらしく、夏未は俺の顔を見てそう言った。何て言うか、夏未は……大人になった、って感じがする。
そして玄関先で、ラッピングされた袋に入ったクッキーをくれた。

「良かったわ。円堂君を介してサッカー部の子たちにお菓子をあげようと思ってたのに、もう買ってあるって言うんだもの。」
「へー?」

すごく嫌な予感のするクッキーだ。
俺が食べるんじゃないからいいけど……アンハッピーハロウィンを過ごすのは誰かなー。どうせ知らない奴さ、うん。

「サンキュー、夏未!」
「ええ。」

礼を言って、俺は駅の方へ歩き出した。
実は楽しみにしてた場所があるんだ、最後に行ってやろうって思ってた場所!
お菓子の入った手提げをかけ直して、さっきより速いペースで走ってみた。



「Trick or Treat!!」
「……」
「ノーリアクションとか悲しいんだけど、豪炎寺。」

 フィフス何とかって組織のトップは豪炎寺。キャプテンの推測は間違ってない。一緒に必殺技撃った相手を見間違えるもんか。

「アメリカでは子供にお菓子請求権が認められてるんだぞ!!」
「……久し振りに会った相手に突然お菓子を要求されるこちらの身にもなってみろ。」
「あ、そっか。」

ビックリしてたのかー、ポーカーフェイスだな、豪炎寺は!
ちなみにお菓子請求権なんて実在しないと思う。

「そしてお菓子をポケットに入れて持ち歩いているはずがないだろう。」

組織の偉い椅子に座ってる豪炎寺は、少し苦笑した。電車賃返せ。
なんて冗談、豪炎寺に会えただけで来た甲斐あったな。受付で怪しまれたけど!

「あ、豪炎——!?」
「虎丸!!」

えっ、虎丸スーツ着てる! 意外にしっくりくるな!!

「何で君が!?」
「子供が大人にお菓子を請求する日、らしい。」
「え、俺と2つしか違わないはず……」
「残念、中身はまだ子供だぜ!」

Trick or Treat、お決まりの文句を言うと虎丸は呆れたように苦笑して、俺の後ろに居る豪炎寺をチラ見する。虎丸の右手には書類があって、それを豪炎寺に持って来たんだと分かった。

「……のど飴で良ければ。」
「何か悪いな、聖帝ってそんなに仕事あると思って無かったからさ!」
「子供が来る場所じゃないからねー!」

意外に生意気な所は変わってないな、虎丸。
ニッ、とあの頃見たいな笑顔を振り返りざまに向けられて、俺も笑顔で組織を後にした。




「鬼道、持って来たぜ!」
「午前中に来ると言ってなかったか?」
「でも部活は始まって無いだろ?」

 収穫は、パーティーパックの飴3個、チョコレート5個、秋の手作りマフィン1個、夏未の手作りクッキー数枚入りが1袋、のど飴4個。お菓子をレジ袋にまとめ、鬼道の茶色い紙袋と交換。

「ありがとな鬼道!!」
「佐久間が行きつけのおもちゃ屋で当てた物らしいがな。」
「何で佐久間はおもちゃ屋の常連になってんだ。」

佐久間の謎が1つ浮上したけど、それは良い。袋を確認すると、確かに目当ての物——カードゲームのパックが15袋入っていた!!

「よっしゃぁ最新弾!!」
「そろそろ部活が始まるから隣の部屋にでもいるといい、佐久間に送らせる。」
「りょーかい!」

実は鬼道がハロウィン忘れてて、帝国サッカー部員に差し入れしようと佐久間が提案したお菓子を用意するのを忘れてたのと、俺が入院中に知ったカードゲームの最新弾がほしいと思っていたのが同じタイミングで。昨日電話で鬼道と『等価交換だ!』となり。
ま、チームメイトに会いに行きたかったから、めんどくさいけど家に行ったりしてたってコト。
 隣の部屋には机があって、カードの仕分けしようかな、と座った瞬間に部屋のドアが開いた。

「あ、おもちゃ屋の常連。」
「どういう呼び名だ、全く……病院、戻るぞ。」

病院という単語を聞いて思い出す、とある友達。俺、アイツからしたら大人だよな。

「……」
「どうした?」
「佐久間、途中コンビニ寄って。」

何となく、アイツはお決まりの言葉を言いそうな気がする。


* Treat for my friend !! *

(魁渡さん、Trick or Treat!!)
(そう言うと思ったぜ、太陽!)


**おわり**

ただ“お菓子請求権”を出したかっただけです。←
魁渡君のターンが本編で来る予定なので、予行練習!そしてハロウィン終了まで30分もないですね、ギリギリすぎる(笑)

楽しみながら書きました、完璧自己満足ですが少しでも楽しんでいただけたらと思っています。
時間があるようでしたら、コメ下さると嬉しいです!
それでは♪