二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

(第三話)とあるマネージャー達の一枚 ( No.24 )
日時: 2011/09/13 18:37
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: /HyWNmZ0)


 ボールが当たる音がする。掛け声が遠くで聞こえる。
 ぼんやりと座りながら、サンサンと降り注ぐ日の光に彩音は目を細めた。暑いなあ、と関係のないようなことを考えつつも彩音は練習風景に目を向ける。次いで、見たことのない少女が視界に入る。

「秋ちゃん、あの子……」

 少女——冬花の方へと視線を向けながら、彩音はさも不思議そうに問いかけた。秋は彩音が今日からマネージャーになったばかり、ということもあり知らないのは選手だけじゃなかったかあと考えながら、紹介を始める。

「あの子は久遠冬花さん。久遠監督の娘さんで、マネージャーなの」

 へえ、と秋の説明に頷く彩音。冬花がその視線に気づいたらしく、怪訝そうに彩音を見やるもすぐにパッと表情を少し明るくさせて彩音へと近づいてくる。
 近くで見ると、より整った顔立ちは何処か儚げで彩音は息を飲んだ。美少女、という言葉が合っているかもしれない。最も、彩音は自分以外の——否、マネージャーのほとんどは"美少女"と思っているのだが。自分自身を可愛いと言えるほど彩音はナルシストじゃないし、例えナルシストでも自分の容姿は可愛くないと自負しているもので。
 冬花はその儚げな顔に薄く笑みを浮かべて、彩音に手を差し出す。彩音はその白い手を握って名前を口にした。

「さっき紹介して貰ったけど、体験としてマネージャーになった彩音です」
「彩音さん、? ……宜しくね」

 ふわりと綺麗笑みを浮かべたままの冬花に彩音も薄く笑う。ぎゅ、と軽く握る手に力を込めて彩音は綺麗だなあ、と改めて思うのだった。

「彩音ー! ちょっと手伝ってー!」

 次いで、後ろから声が掛かる。澄んだ声に、彩音は誰かすぐわかった。ティアラ・クラリス。彩音の親友であり、容姿は可愛らしく、ついでにお金持ちという何処のヒロインだ、と言える存在である。その隣で仏頂面をしたまま選手を睨むように見ているのはマネージャーの仕事を熟しつつも選手の悪い箇所を指摘する冷静な少女、ラティア・クラリスだ。ティアラの双子に妹にしてその性格はどちらかというと姉のようにも見える。
 彩音はティアラの声に、うん、と頷きながらも冬花を再度見た。冬花は何処かむ、としたような表情を浮かべている。彩音にはその意味が分からず、こてんと首を傾げた。

「彩音ちゃん、同性人気凄いのね……」
「あはは、ですねー。亜美センパイが見たらきっと嫉妬しそうです」

 くすくすと笑い合う秋と春奈には気付かず、彩音はティアラの方へぱたぱたと走り出した。


(マネージャーさんの一時!)







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