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第４０話「失いすぎた少女」


『最初に聞くけど……最近の体の調子はどうだい？』

沙「……そういえば咳とかしなくなった。」

ふと数週間前までは吐血までしてた自分が信じられない程ピンピンしてる。
はて。

『へぇ……まぁ君らしいけど。』

「らしい」って何ですか。

『後でその事は話すよ。』

人の心を読まないでー「親しき仲にも礼儀あり」だよ。

『ぶっちゃけ言うと１回目に君達２人をトリップさせたのはちょっとした悪戯気分だったんだ。２次元に３次元の人間を送ったらどうなるかなーとかそんな感じで。』

沙「……それってさ、私達をわざと殺した、ということか？」

『その後ちゃんと生き返る選択もあげたから水に流して。』

え、これ流せる事なの？
あんたの悪戯でこっちは殺されてるんですよ？

『で、２回目は……』

全力で無視ですかい。
あぁいいよ、まじで最初に会った時にぶん殴ってやるから。








『未羅ちゃんの頼みだったんだよ。』

沙「は？」

思いがけない人物の名前が出てきた。
未羅？未羅が何の為に私を……当然の疑問が出てくる。

『出来過ぎてると思わない？銀行強盗で殺されてトリップなんて。まず君があの日座っていたところは犯人達に一番遠く、出口に限りなく近い所。人質にされる確実なんて一握りもありやしないんだよ。』

沙「……じゃあなんで気まぐれな神様が未羅のお願いを聞いたんだよ。」

よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりに笑う電話越しの神。
その笑い声が少し不気味に思えた。

『僕の良心が働いたのかな？悲惨な人生を送りながらもここまで生きてきた未羅ちゃんに少しばかりご褒美をあげようと思ってｗｗ』

沙「それ、本当？」

『あ、気付いちゃう？そういうのは建前で見たかったんだよねぇ……生き別れみたいに別れた姉妹がまた巡り会うとどんな事が起こるのかっていうのが!!』

いままで感じていた異様なまでのこいつのおちゃらけ。
こいつは子供なんだ。

まるで人間を科学実験の道具のように扱って自分の好きな事をやっている、そういう奴なんだ。

『そうしたらおもしろいっていったらありゃしないｗｗ片方は馬鹿らしい程の恨みを感じ始めたし君は何もかもを捨てちゃうなんて……なんてくだらないんだｗｗ』

沙「私が……捨てた？」

笑うのをやめて心底不思議そうに語り始めた。

『まさか無意識？それは滑稽だね。だってそうだろう？まず最初のトリップをした最終日に君はここで見つけた希望を捨てた。人生最大の友達も見捨てたわけだし？ｗｗその後どうかな、またトリップして今度は記憶のない仲間を見て。自分は覚えているのに向こうは何も知らないんだよ、さぞ苦しかったでしょ？』

沙「…………。」

『それなのに最近はそんな感情も捨てて彼女達を突き放した。もともと持っていたものを捨てるなんて馬鹿だね。それに加えて一度捨てた妹を２度も捨てる？これは傑作だったよｗｗ』



















『失うばかりなのに自分から捨てるなんて……本当に馬鹿だよ。”失いすぎる”っていう言葉は君の為にあるようなものだね。』




神様は最後、今にも泣きそうな声でそれだけ言うと電話を切った。