二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: モンスターハンター ( No.7 )
- 日時: 2013/04/02 14:42
- 名前: えびピラフ (ID: JryR3G2V)
プロローグその2
「おい、誰だその子は」
試験会場である闘技場に着くと、さっそく入り口で仁王立ちしていた試験官であろう女性に呼び止められた。
「お前の言い訳次第では牢屋に入ってもらうこともありえるからな」
「いやいや待ってください。この子はこの近くで寝ていたから一緒に来ただけです」
もちろん牢屋になんか入りたくないので、必死に弁解する。それにしても、この試験官から発せられるものすごい殺気は何なのだろう。この少女がさっき放っていた殺気とは比べ物にならないのだが。
「ほう、こいつはそう言っているが、それは本当か?」
試験官は少女のほうを向くと、そう聞く。
「…だいたいあってる」
「そうか」
試験官はホッとして、殺気を引っ込めた。そして、俺を思い切り睨み付ける。
「この少女のことはまあいいとして、なぜこんな大事な日に遅刻した?」
「いや…遅刻したって言っても、たった5分じゃないですか…」
「たったの…5分だと?」
試験官は更に俺を睨み付ける。
「その5分の間に、今日行う試験内容が告げられた。その内容はなんだかわかるか?」
「…いや、わからない、です」
「ならば、その試験に必要な物や、試験に受かるコツは、分かるか?」
「…いいえ」
試験官は一気にそこまで言い切ると、わざと大きくため息をつく。
「…親がどれほど偉大であっても、お前がその親と並ぶわけではないのだぞ。そのことをよく覚えておけ」
「…はい」
試験官はそれだけ言うと、闘技場と反対側を向き、遠くを見て仁王立ちした。
「…あなたの両親って偉大だったの?」
「…ああ」
「ふうん」
少女は興味がなさそうな顔を俺に向けたと思うと、振り返ってさっさと闘技場へと入っていってしまった。それを俺はとぼとぼと追いかけるのであった。
あえてもう一度言っておこう。
この村の闘技場は小さい。
なぜそんなことを何度も言うのかというと、それには理由がある。
それは、闘技場が狭ければ狭いほど、大きいモンスターは入らないということ。小さいモンスターが相手と分かっていれば、少なからず自分の中に油断が生まれる。
それはつまり、闘技場が小さい=試験で使うモンスターも小さい。こういった偏見を生むということだ。
しかし、試験内容を聞いていなかった俺には、所詮予想しかできなかったのだ。
「うわぁぁぁぁぁ!」
闘技場中に響き渡る悲鳴。
闘技場に入るや否や、いきなりそんな声が聞こえてきた。多分、俺と同じ受験者だと思うのだが…
「何だよあれ…」
問題なのは、モンスターのほうだ。全体的に青っぽい体。鋭い爪と牙。頭の大きなトサカ。あいつは…まさか…
「…ドスランポス」
唐突に少女が口を開く。ひどく退屈そうでいて、その中にやっぱり殺気がこもっている様で。てか、どんだけ殺気放ってんの?どんだけ俺を殺したいの?
「鳥竜種。ランポスたちのボス。あのカギ爪で相手を捕獲し、牙で止めを刺す。その後獲物を巣へ持ち帰り…」
淡々とドスランポスのことを説明していく少女。なんというか、怖いね。かわいい女の子がこうも淡々とモンスターの捕食方法を説明する少女を見ると、ちょっと…アレだね。
「多分あの子、死んじゃうね。クスッ」
「…」
怖えええええええ!
なんだよクスッて!何かおもしろい事でもあったのでしょうか!?あの無愛想な黒服の少女の初めて笑った顔を見れたという嬉しさとその理由があまりにも怖すぎるというギャップで俺の心はオーバーヒート寸前だよ!
「…あ、捕まった」
少女が俺を戦慄させている間に、勝負がついたらしい。勝者はドスランポス。決まり手は飛びかかり。一発でチャレンジャーは気絶してしまった。
と、そこで試験管たちが登場し、ボウガンの睡眠弾を次々と打ち込みドスランポスを眠らせる。
「…殺させないんだ」
と、露骨にがっくりしている黒服の少女。そこはがっかりするところじゃないよ、と、優しく言ってあげようと思ったが、今の状況はそれすらも許してくれないほどに重い空気が漂っていた。
「「「…」」」
固まる受験生たち。それをあざ笑うかのように眠りから覚めて動き始めるドスランポス。誰も動かずに、次に試験を受けるチャレンジャーが選ばれるのを待っていた。
…ただ一人、黒服の少女を除いては、ね。
「…つまらない」
唐突にそんなことを言っちゃう黒服の少女。
一斉にみんなの視線が黒服の少女と隣の俺に集まる…アレ?なにこのとばっちり。なんだかすっごい殺気のこもった視線を感じるよ?今日でもう何回目だろう?
「おいそこの受験生、そこの少女は何だ?」
「あ、あの…この娘は… 試験を見てみたいと言っていたので、連れて来てあげました!」
ふう…なんとか切り抜け…
「そうか、ではお前は村の牢屋にでも入っていてもらおうか」
られていなかった。
「ちょ、ちょっと待ってください!俺はこの娘の望みを叶えただけです!なんかサンタさん的な役割?」
「サンタさんは子供の夢を叶えても少女誘拐はしない。言い訳なら後で聞くから」
試験管がニコニコしながら近づいてくる。って、ってまだ捕まるわけにはいかないんだよ!なんとしても逃げなくては…!
「…私は自分の意思でここに着た。だからさっさとこの余興を続けろ」
ちっちゃいのに果てしなく上から目線で、黒服の少女は試験管に言い放つ。
「な、ん…え?」
試験管も何が言われたのかわからないように困惑中だった。まあ当たり前だが。
「…早くしてほしい。このままでは日が暮れてしまう」
「そ、そうだな…では、再開するとしよう。おい、そこのゆう…そこのお前、次はお前だ、出てこい」
「ちょ、今誘拐犯って言おうとしただろ!それはさすがに失礼だろ!」
「そうか、うん、ついて来い」
俺の悲痛な叫びなど完全に無視し、、半ば強引に引っ張られながらドスランポスが闊歩する闘技場へと放り込まれる。後ろを向くと、ギャラリーの受験者たちが心配そうな顔をしてこちらを見ていた。黒服の少女を見ると、やっぱり殺気を放ちながらこちらをみていた。…俺なにかしたかな…