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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: カゲロウデイズ ( No.3 )
- 日時: 2012/02/23 21:25
- 名前: 紫陽花 ◆mBFQtgCyXQ (ID: 78sNkMqs)
第2話
「嘘だ・・・これは、嘘だ・・・」
それしか、言えなかった。認めたくなかったんだ。
だって・・・さっきまで其処に居たんだから・・・
横断歩道の真ん中で、彼女は立ち止まりしゃがみ込んだ。やっと猫を捕まえたらしい。
「捕まえた!もう、車が来たら危ないでしょ?」
「にゃあぁう」
笑いながら彼女は猫に言っていた。言い訳をするように猫が鳴いた。
「おい、そんなトコで止まってたらあ」
「あぶないぞ」と言おうとして、言えなかった。
さっきまで彼女が居た所に、猛スピードでトラックが突っ込んでいったから。
ブレーキの音、血飛沫の色、さっきまで居た彼女の香り。
全てが混ざり合って、気持ち悪くて、むせ返った。
「嘘だ・・・嘘・・・だ・・・っ!」
「嘘じゃない・・・現実だよ」
耳元で、声が聞こえた。
声の主は、俺とよく似た姿をして嗤っていた。
次の瞬間、そいつの姿は陽炎のように揺らめき消えた。
夏の水色をかき回すような、五月蝿い蝉の声に
——全てが、眩んだ
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