二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

     プロローグ ( No.2 )
日時: 2011/09/19 22:15
名前: 時氷 ◆fE6A2Vt.L6 (ID: UE6W7gUy)
参照: ライバルは無視してしまった……(笑)

「初めまして! ポケットモンスターの世界へようこそ!」

 何処からともなく聞こえてくる声に、少年は耳を澄ました。首を上下左右に振ってみるが、唯一見えるのは黒、黒、黒。この空間は真っ暗。声の主は何時か、何処かで聞いたことがある声だった。確か————

「私の名前はオーキド。みんなからはポケモン博士と慕われておるよ」

 そう、この声はオーキド、ポケモン博士——オーキド博士。

「この世界にはポケットモンスターと呼ばれる、生き物たちが至る所に住んでいる!」

 ここで、少年は可笑しなことに気付いた。——この世界には至る所にポケモンが住んでいる……!? 少年の悟りを遮るかのように、オーキド博士の声が喋り続ける。

「そのポケモンという生き物を人はペットにしたり、勝負に使ったり……」

 少年は崩れるように座り、顔が隠れるように両手で覆う。

「そして……私はこのポケモンの研究をしてるという訳だ」

 オーキド博士が言い終わった後、雰囲気が変わるように暗い空気が少年を包み込む。それは、次が少年への質問だと察したから。

「では、はじめに君の名前を教えてもらおう!」

 名前を尋ねるなら自分から——という理屈には合っているのだが、どうしても教えたくはなかった。此処は何処? オーキド博士は本当に此処にいるの? 少年は不安になった。しかし、オーキド博士は——

「ふむ……セオンと言うんだな!」

 心の中で呟いた言葉が伝わっていた。いや、呟きたくなかった言葉が伝わった。

「セオン! いよいよこれから君の物語の始まりだ!」

 セオンはうずくめていた顔を持ち上げる。やはり、漆黒の闇。

 僕の物語が始まる————。

「夢と冒険と! ポケットモンスターの世界へ! レッツ——」

 少年、セオンにはそこまでの記憶しかなかった。ただ覚えているのは、心の中で“ゴー!”と胸を膨らませ、呟いたこと。





 気が付いた時には、もう暗闇は無くなっていて、しなやかに踊る草原の上に座っていた。まだ昼の様で、雲に見え隠れしている太陽がセオンの後ろに影をつくる。白い肌に赤いレンガをかぶった家が、セオンから離れた所に建っているのが見える。

 何故、ポケットモンスター、通称ポケモンの世界に来てしまったんだろう?

 それは————ホント、何故だろう?