二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第一話3 ( No.22 )
日時: 2011/10/27 13:27
名前: 天熊 ◆zdSz24mXnI (ID: tgMaGFHR)
参照: ここで初めてポケモンの鳴き声が出てきました(笑)

     《scarlet side》

「さっきから俺について来ているのは誰なんだ?」

短パン小僧も、スカーレットの目線の方を向いた。 
何もいない、誰もいない————かのように見えたが、短パン小僧の右足近くに小さな炎が強く炊けていた。



          【第三話  赤 と 泣 き   虫 と ラ ッ コ と 豚 と】

「うわぁ!」

慌ててその場を離れ、スカーレットの背中の方へ歩み寄った。 
スカーレットはそれに気付き、今度は右へ振り向く。
そこにいたのはポケモンだった。 
それも、キャタピー二匹分ぐらいの小さなポケモン、“ポカブ”。 
赤い鼻から炎を出しており、鼻から額へと黄色いラインが見える。 
体はオレンジ色の毛並みに包まれており、黒い耳はまるで兎の様だ。 
また、丸く赤の尻尾は子豚の様で、全体的にも豚のイメージが湧く。 
腹となる場所は黒く、そこには木の実を約五個、紐で縛り付けていた。 
前足を地面に擦り付け、まだ火花を鼻から散らしていた。

「お兄ちゃん、これって野生ポケモンなの?」

野生ポケモン————すなわち、人とは離れ自然の中で生きている、ポケモンの事だ。 
短パン小僧の言った通り、腹に木の実を巻きつけているので、人に飼われているように見えた。 
しかし、スカーレットはいとも簡単に物事を把握したように歯を見せ、右手に持っていたモンスターボールを空中へと投げた。

「ああ、野生ポケモンさ! 俺のバトル、見ていてくれよ!」

ボールから説明不可能な光に包まれて出て来たのは“ミジュマル”だ。 
ラッコのような身体で、水色の腹にはホタチと呼ばれる貝が付いている。 
白くて丸い顔は何とも愛らしい。 
早速ミジュマルは攻撃の態勢に入った。

「ミジュマル、“水鉄砲”!」

スカーレットにそう言われ、ミジュマルは大きく口を開けた。 
深く息を吸い込み、吐き出す。 
その時、口から水がまるで鉄砲のようにポカブに向け、流れ出した。

ポケモンにはそれぞれ“タイプ”と呼ばれるものが備わっており、現在“十七種類”のタイプの存在が確認されている。 
ポケモン一匹に最高二個のタイプが付いている。 
勿論、技にもタイプがあり、その技を発動したポケモンと、技のタイプが同じなら、攻撃力は上がる。 
そしてこの勝負の場合、ミジュマルは水タイプで、“水鉄砲”も水タイプなので、威力は上がっている。
しかも、ポカブは炎タイプ。 
水は炎に強いので、技が決まれば“効果は抜群だ”。

しかし、ポカブは難なく水の噴射を右へ避ける。
“水鉄砲”は先程ポカブがいた地面を濡らす。 
状況を察し、ミジュマルは少しガックリ。

「ッカブ!!」

次は自分の番だと言い張るポカブは赤くて丸い尾を左右に振りだした。 
これは“尻尾を振る”という、尾を持ったポケモンには容易な技である。 
ミジュマルは尻尾を振るポカブに可愛さを感じ、甲羅を無くした亀のように、まとろんでしまった。 
この“尻尾を振る”のように攻撃はしない技、通称“変化技”は、自分を有利にしたり相手を不利に陥ることが出来る。 
“尻尾を振る”の効果は、相手の防御を少し下げること。 
現にミジュマルはそうなってしまっている。

「っ!! ミジュマル、危ない! 今すぐホタチで防御をしろ!」

スカーレットが気付いた時にはもう遅かった。 
ポカブはいつの間にかミジュマルの懐へ走り込んでいて、すかさず“体当たり”。 
体をぶつけられたミジュマルは後方へ吹き飛ぶ。
“尻尾を振る”の効果のほかにも、攻撃力が高いのだろうか、ミジュマルは相当なダメージを負っているようだ。 
スカーレットはもう一度、技の指示を出す。

「“水鉄砲”!」

ミジュマルはもう一度口から大量の水を放射。 
しかし、ポカブは右へと避ける。 
“水鉄砲”を二か所に放射出来れば————。 
スカーレットは指を鳴らし、微笑んだ。

「ミジュマル、“水鉄砲”を上へと放射し、まき散らすんだ!」

言われた通りに、上を向き“水鉄砲”を発射。 
重力に押し戻される所で、水は東西南北に分かれ、まるで噴水のように辺りへまき散らした。 
先程の威力とは違い、上から降ってくる“水鉄砲”にポカブは逃げる場所がなく攻撃を喰らう。 
今度こそ、効果は抜群。 
ポカブはその場に倒れ込んだ。

「このポケモン、欲しい……。 よし、捕まえるぞ! いけっ、モンスターボール!」
「頑張れ、お兄ちゃん!」

スカーレットが投げたモンスターボールはポカブの額に見事命中し、光がポカブを包み込んだ。 
ボールは二回左右に揺れ、ポカブを捕まえた————と思ったのだが、ボールはその場で開き、ダメージを負って苦しそうなポカブを出した。

「な……! 捕獲失敗だ」

そして有ろうことか、ポカブは腹に巻いていた木の実を食べ始めたのだ。 
スカーレットは木の実の事はあまり知らなかった為、どんな効果があるのかは分からなかったが、それは“オボンの実”だった。 
おかげでポカブは元気溌剌。 
見違えるように威圧感がある。 
残りの木の実もオボンの実。
————この勝負、一筋縄ではいかしてくれなさそうだ。



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