二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第一話2 ( No.12 )
日時: 2011/10/27 13:28
名前: 天熊 ◆zdSz24mXnI (ID: tgMaGFHR)
参照: この小説にまだイッシュのポケモンが出ていないだと? そ、そんなわけ……

     《Noah side》

          【第二話  キ ャ タ ピ ー は 泣 き 虫 が お 好 き ! ?】



「じゃあ、教えてもらうわよ?」

ノアの高い声が目の前にいる短パン小僧の耳に響く。
この少年は膝を地面について、かなり悔しそうにしている。 
ノアの隣にはバンギラス。 
短パン小僧の手元には、黒い擦り傷や噛まれた跡が生々しいキャタピー。 
地面を見ると、砂嵐が舞った形跡があり、この二人は、正確に言えば、この二匹はバトルをした様子。 
結果、傷痕が一つもないバンギラスの圧倒的勝利らしい。

「手加減してくれてもいいじゃないか〜! わーん!」

泣き出す短パン小僧を前にバンギラスは空に向かって吠え出す。 
その威厳さに驚いたのか、短パン小僧はキャタピーを胸に抱え、逃げてしまった。

「あっ、待ってよ! 勝ったらこの近くのジムを教えてくれるって言ったじゃん!」

呆れた。 
バンギラスの意地っ張りには。 
ノアは心の中でそう思う。 
基本は物静かな彼女だが、興味がある事には性格が裏返ったかのように積極的になる。

ジムバッジには特殊な力があるのか、集めるほどに言うことを聞かないポケモンでも命令に忠実に従うようになる。 
第一、バンギラスのこの性格を直すために、ジムリーダーに勝ち、ジムバッジを手に入れたかったのだが、ノアは場所が分からなかった。 
ちょうどその時、先程の短パン小僧と目が合い、勝つとジムの場所を教える約束をして勝負をしたのだ。
ノアのリスクは何も無しに。

「あのキャタピー、額に“V”があるから“Vジェネレート”でも出来たらいいのにね。 つまんないなぁ」

天地が引っくり返らない限り、絶対的に無理な話だが、ノアは自然に呟く。 
短パン小僧とのバトルは、相手がキャタピーだと分かったので、こちらは攻撃せず、“悪あがき”で自滅するのを図ったのだが————バンギラスはその計画を完全無視。
ガブリアスが、変身したミュウだと正体を知り、バトルが出来なかった苛立ちが溜まっていたのだろうか、効果抜群の“炎の牙”でキャタピーは蒸し焼きになってしまったのだ。 
無論、ノアはそんなことはする気もなかった。

「どうしようか、ランス? 今回は貴方の責任だからね」

少し怒り調子で言ってみたのだが、効果は無し。 
バンギラスは少し休憩にと、その場で眠り始めたのだ。 
命令を無視するほかに、モンスターボールに入ることも嫌がるので、ノアは堪ったもんじゃない。 
引っ張ってみるが、約二百㎏の体重はノアの力では動かせなかった。

「今日中に、一つ目のジムに行こうと思ったのになぁ」

流石にバンギラスをここに置いて行く訳にもいかないので、ノアは起きるまで待つことにした。 
空はまた一段と、白から黒に変わっていくようで、灰色の雲がここ、「イッシュ地方」全体を包んでいるように見えた。



                    change



     《Scarlet side》

スカーレットは楽しそうにスキップをしながら一つのジムを目指していた。 
それは、“サンヨウシティ”と呼ばれる町にある“サンヨウジム”。 
彼が調べた結果、三人のジムリーダーがいるとかいないとか。 
ただ、勝てばいいという訳ではなく、彼には絶対の自信を持つ、勝負の“戦術”があった。 
スカーレットの一番得意なポケモンバトルの方法は“作戦”。 
一般的には“コンボ”とも呼ばれており、ポケモンの技、特性、特徴を知っておかないと“作戦のバトル”は有利に戦えない。

スカーレットが道路から草原に入った時、遠くから泣き声と共に走ってくる少年を目撃した。 
この少年は紛れもない、先程ノアと戦った短パン小僧。 
だが、スカーレットはそのことを知る由もない。

「ん? どうしたんだい?」

優しく声を掛けてみる。 
短パン小僧は立ち止まり、泣いている理由を教えた。
それを聞いたスカーレットは腕組みをして、短パン小僧に微笑む。

「それは許せないな。 俺がそのキャタピーを元気にしてやるよ!」

短パン小僧の顔からは涙の跡は消え、彼もスカーレットに微笑み返した。 
キャタピーを地面に置くと、ヒップバッグから“良い傷薬”を一つとガーゼを一つ取り出した。 
スプレー式の良い傷薬をキャタピーに与える。 
少しずつ痛みも消えているみたいだ。 
ガーゼを傷口に巻き、スカーレットは短パン小僧に言う。

「これで良し! もうすぐしたら、もっと元気になるよ。 それまでゆっくり休ませておくんだ」
「うん! お兄ちゃん、ありがとう!」

短パン小僧は威勢の良い返事をすると、キャタピーの身体を撫でた。 
キャタピーは安らかな寝息をたてはじめ、スカーレットはヒップバッグから、もう一つある物を取り始めた。

「さて、と————」

スカーレットは下ろしていた腰を持ち上げると、後ろを振り向いた。 
取り出したものはモンスターボール。 
左手にしっかりと握りしめている。 
短パン小僧は不思議にスカーレットを見上げる。 
その時、スカーレットは声を鋭く張り上げた。

「さっきから俺に付いて来ているのは誰なんだ?」



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