二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 中編その1.仲間? ( No.121 )
- 日時: 2011/11/19 15:45
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
バダップが寮の外を歩いているのを見て、ミストレは彼の近くまで降りて行った。
どうやらヒビキ提督から命令された事があるらしく他言無用、との事だったから何も話してはもらえなかった。
ミ「最近俺達には何も言えない事が多い様な気が…」
バ「仕方がない。不確定要素を含んでいるからな。」
と、エスカバが2人の方にかけて来る。
エ「ミストレっ、さっきお前の部屋の近くから何か割れる音が…!!」
ミ「?!割れる物…なんて無いと思ったけど。」
エスカバに手を引っ張られて、普段なら振り切るが今回は思考を巡らせていた為、素直に従った。
バダップも気になるらしい、ついて来ている。
そこで3人が目にしたのは、割れた強化ガラスの窓。
ミ「!!」
エ「なっ…」
バ「相当の輩らしいな。」
ミ「…ッ、」
ミストレは戦闘機の類からサッカーボールを引っ張り出し、それを抱えてその部屋まで跳ねていく。
自らの身体能力がそれを可能にさせた。
エ「あれってミストレの部屋だったか?」
バ「その1つ隣だな。エスカ、俺達も行くぞ。」
エ「ああ。」
*
意識は遠ざかっていく。
何故体が動かないのか、私は分からない。きっと侵入者の方が仕込んできた何かの影響なんだろうけど…。
苦しい、もう何も話せない。
唐突に訪れる死の実感。
狭まって暗くなっていく視界、遠くで何か物音がした。何て言ってるんだろう…ラピス、って聞こえた気が…、私を呼んでる?
ラ「…っ…ぁ、」
死んじゃうの?
もう、誰も…思い出せ、な…
男「っ!!!!!?」
ラ「ぁっ!!?」
突然、呼吸が楽に…ううん、男が…ぶっ飛んで…。
ラ「カハッ…!!」
呼吸が、うまく出来ない…。
体を起こそうとして、バランスを崩した。でも冷たい床には触れずに、自分より少し冷たい肌の感触があった。
ミ「ラピスっ!!!!!!」
ラ「ミ、ス…」
無理に話さなくて良い、と言いながらミストレさんは私を抱き上げた。温かい、安心できる人の匂いがします…。
1人で歩かないと迷惑がかかる、と思ったけれど…ごめんなさい、もう少しこのままでいさせて下さい。
体が感じた恐怖を、忘れられるまで……もう少しだけ。
*
男が割ったと思われる窓ガラス、その先では男が部屋の住人に馬乗りになっていた。
住人———ラピス・フォルールは対応できていない。
男の手がラピスの首を締め付ける。このままだと彼女は、窒息死…。
ミ「ラピス!」
男がニタリ、と笑って俺を見やった……それで何かが吹っ切れた。腕に抱えていたボールを、男に向かって蹴る。
あっという間に、玄関のドアに男は打ち付けられた。
男の手から解放されたラピスが咳き込みながら呼吸をして、立ち上がろうとする様子を見て俺は駆け寄った。
案の定、彼女は俺の腕の中に倒れ込む。
ミ「ラピス!!!!」
ラ「ミ、ス…」
安心した…。
無理に話さなくても良い、と言えば彼女は安心した様に、俺の服(みぞおちより少し上辺り)を震える左手で握りしめた。
安堵してから、心が安らかになるのを感じてハッとする。
ダメだ、こんな風に思ってしまったら、今までミッションに向けてやって来た事が崩れる。
本来凶暴だったサッカーを取り戻すために立ち上がったヒビキ提督の下に居る俺が、こんな風に穏やかになるなど。
じゃあ…どうすればいいんだ。
エ「王牙学園の寮に入りこむとは、相当自信があった様だが、残念ながらこの部屋の隣は3TOPの1人の部屋。その痛みは当然の報いだと…(バ「気絶してる、言っても意味が無い。」
気付けば部屋の中に居たエスカバとバダップ。バダップは不法侵入者を縛り上げている。
エ「それにしても、この部屋の空気…」
ミ「体の動きを封じる成分が僅かに含まれている。コイツ、ラピスを本気で殺すつもりだったんだ…」
バ「この部屋が、侵入に適当な位置にあったのだろう。」
王牙の上層部がやって来た。俺達は部屋を退いて、隣の俺の部屋でまずはラピスを寝かせる。
事件の裏が分からない今、簡単に病院には行けない。
既に穏やかに眠り始めた彼女の首には、赤く締め付けられた跡が残っている。
何故、俺は迷わず彼女を助けに行った…?
これが…もし、エスカバだったとしたら、と考えてみる。きっと同じだ。今回と同じ事をする。
ミッションのメンバーだから?
ミ「…もうやめておこう。」
どちらにせよ、自問自答しても答えは出せなそうだ。
*