二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 中編その1.堂々と ( No.125 )
- 日時: 2011/12/04 17:15
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
カ「…あれ、おかしい…」
帝国戦は、ひどいことになっていた。雷門イレブンは圧倒的な力の差で帝国イレブンにねじ伏せられ、段々崩れていく。
円堂がまたシュートによってゴールネットに突き刺さる。帝国のスコアは20にまで跳ね上がった。
諦めない想いでキーパーグローブを叩き仲間を鼓舞し続けた円堂、その闘志と帝国の脅威にメガネは逃げ出してしまった。
傷付く雷門イレブンに、弱さを嘲笑う帝国。怒りを通り越して、この状況に魁渡が目を背けたくなった時だった。
魁「おかしいって、何が…?」
カ「豪炎寺さんが、現れない…確か、帝国が20点目を入れた直後に来るはずなの、に……って…」
まさか、というかすれた声。魁渡も思った事は同じだった。
魁「歴史の介入??!」
カノンが慌てて周囲を見回した。と、雷門の背番号10のユニフォームを着た豪炎寺の姿。
しかし、顔は驚きと困惑に満ちている。
カ「豪炎寺夕香さん…!!?」
豪炎寺を潤んだ瞳で見つめる幼女、それは彼の妹。昏睡状態のはずで、正史では登場しない少女だ。
動き出したか、とカノンが緊張気味に呟く。魁渡はその言葉を聞き、インカムで未来のキラードに連絡を取ろうとした。
そしてその手をはたと止める。
夕香「おにいちゃん、いっちゃだめ…」
潤んだ瞳から、涙がこぼれた。豪炎寺は一歩引いた姿勢から動けない。
魁「カノン、俺から離れててくれ。」
カ「え?!」
魁「俺はジッと草葉の陰から見守るなんて性に合わないから、堂々と宣戦布告してやるんだ。」
驚いて目を見開くカノンは、言葉の意味を悟って止めようとした。今敵に姿をさらすなど危険極まりない。
魁「最近は瑠璃姉からの報告も無い、俺の存在も素性もバレてるかもしれない。」
瑠璃姉からの報告、と言う単語を聞いてカノンは俯く。
王牙学園に潜入中の瑠璃花は、何か動きがあったら報告する様に、また何も無くても毎日報告する様にとキラードから言われていた。
しかしここ数日、何も報告が入っていない。
キラード側から通信を入れると王牙側にバレてしまう可能性が高いため通信は不可、どうなっているのか全く分からないのだ。
夕香「お兄ちゃん、忘れたの?」
魁「俺はこれから円堂達にくっ付いて行く、よろしくな。」
カ「魁渡君っ!!」
ニッ、と笑って魁渡は草陰を飛びだした。
夕香「サッカーなんて、」
豪炎寺の目が、鋭いものに変わる。
そして魁渡は夕香に近付いた。夕香は口を閉じて魁渡を見る。
表情が、驚きに変わった。
夕香「なっ…」
魁渡「あのさ、」
一瞬だけ笑みを浮かべて、それからホークアイで夕香を見つめて。
「早く帰って、ダミーさん。」
*
評議員達は驚いた。椅子から立ち上がる者も少なくない。
口々に少年の介入に驚く文句を言い、バウゼンもディスプレイを凝視している。
何者かは分からないが、幻影夕香を消滅に追い込んだ少年は未来からの者と見て間違いないのだ。
すると、評議員達の敵という事になる。
ヒ「静まれ、まだ手は有る。」
過去の映像では、今まさに夕香の幻影が消滅した所だ。豪炎寺が橙の髪の少年を見て、少年は早く行けと彼を諭す(サトス)。
こうして、これから大きな影響を及ぼす雷門の背番号10、豪炎寺修也は帝国学園との戦いに出る事になった。
歴史の通りだ。ただ、過程が異なるだけで。
バウゼンは今までの流れを逆再生した。そこで驚き息を呑む。
バ「提督…、少年は突然出現しています。」
ヒ「?!」
評議員達がバウゼンに注目する。もう一度逆再生すると、確かに少年は突然幻影夕香の付近に出現していた。
ヒ「今の流れを確認する。戻せ。」
バ「はっ!」
豪炎寺は無言でピッチに入り、少年はその後ろ姿を見送っていた。
と、少年がカメラを振り返る。
カメラ目線で、不敵な笑みを浮かべて見せた。そして何語か分からない言葉で何かを言い、豪炎寺が居た木陰へ移動する。
評議員A「何といったんだ…?」
顔を見合わせざわめく評議員達。それを静めたのは、ヒビキ提督の一言だ。
『俺はお前たちによって過去を変えさせはしない。必ず俺が潰してやる。』
ヒ「…どう思う、バダップ。」
提督の隣に居る少年、チームオーガのキャプテンであるバダップは、無言で少年の顔を見つめる。
ヒ「これで、アイツがスパイである確率は90%以上だ。」
バ「はい。」
バダップは、小さく息を呑んだ。
それから、心の中で1人呟く。
似ている、と。
*to be continued...*