二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ぬらりひょんの孫〜櫻が舞うころ〜 ( No.113 )
- 日時: 2011/10/04 16:05
- 名前: ★HITOMI★ (ID: H6c/o5GF)
第十六話
「いやああああああ!!」
やめろ・・・・! あのときの記憶が、すべての記憶がよみがえる。
「は、い、び・・・・。」
・・・・私には昔、家族がいた。それは、私がまだ幼かったときのこと—。
「灰火〜!」
まだ幼い櫻姫がコスモスの花を手にさけんでいる。
「灰火〜、どこ〜!」
すると、
「ここだよ。」
という声と共に、櫻姫の目の前に少女が現れた。
「灰火!」
と、言って櫻姫は少女に抱きついた。
「どうした? 櫻姫。」
と、少女は言って櫻姫の顔をのぞきこんだ。
「あのね、きれいなお花が咲いてたから灰火に見せてあげたかったの。」
「・・・・確かにきれい。かわいい花だな。さ、帰ろう?」
と、少女は櫻姫の手を取るといっしょに歩き出した。
彼女は灰火。腰まである長い美しい紅色の髪に、漆黒の瞳。見た目は十六歳くらいだ。灰火は妖狐だ。赤狐という神道系の妖狐で、しかも、妖狐の中でも最大の妖力を持つと云われる、『九尾の狐』だ。灰火は櫻姫が孤児院の前に置き去りにされていたあの夜、たまたま通りかかった灰火は櫻姫をつれて帰ったのだ。櫻姫たちは幸せだった。あのときまでは—。四年後。ある日突然、二人はある妖怪におそわれた。その名は—『扇女の美虎』—
「風裂鬼魔!」
「ああっ!」
「灰火!」
灰火は美虎の攻撃をまともに食らいぼろぼろだった。櫻姫は必死に灰火を守ろうとしたが、まだ覚醒して間もないころ。いくら妖怪の姿でも力が弱いのだ。そのとき、櫻姫に風の刃が—。
「櫻姫!!!」
「あっ・・・・。」
「ああああああああ!!!」
灰火は櫻姫に抱きつき、美虎から必死にかばった。そして、ズルッとくずれ落ちると、灰火は赤い毛並みのキツネの姿から人間の姿になって、
「くっ・・・・、に、逃げろ・・・・。櫻姫早く・・・・逃げろ・・・・。」
「い、いやだ!」
「バカ言え・・・・、ちきしょう・・・・。私にもっと力があれば・・・・。」
「灰火!」
「私は、あんたと出会えて幸せだった・・・・。ありがとう。櫻姫、あんたは・・・・幸せになんなくちゃいけないんだ・・・・、早く、早く・・・・、に、げ、ろ・・・・。」
灰火の目は一筋の涙と共に静かに閉じた。
「灰火? おい、なにしてんだよ・・・・。やだ、死んじゃいやだ・・・・いや・・・・。いやああああああ!!!」
櫻姫は泣きさけび、灰火のなきがらを抱きしめた。そして、
「許さねえ・・・・。許さねえ!!!」
憎しみのこもった目で美虎を見つめた。櫻姫は舞桜をギュッとにぎりしめ、
「はああああああ!!」
と、美虎におそいかかった。怒りと憎しみで、さっきとは何倍もの力を出していた櫻姫に美虎はひるんだが、大人と子供の力の差でやはり、美虎が勝った。だが、
「・・・・あなた、おもしろいわね。」
「だまれ!」
櫻姫は地面に転がりながら言った。
「櫻姫、あなたを生かしておいてあげる。」
「なに言ってやがる!」
「あなたって本当におもしろいから! 大きくなったらまた会いましょうね、さ、く、ら、ひ、め。」
そう言い残すと、美虎は去って、櫻姫だけが残っていた。
「う、ううっ・・・・。」
櫻姫は地面をはって灰火の元へ行き、声を殺して泣いていた。
すべてを思い出した。やっと、少しはふっきれたと思ってた・・・・。
「灰火・・・・。」
私は地面にくずれ落ちた。灰火は私のせいで死んだ・・・・。背後から風の刃が近づいていることに気づかなかった。そして、灰火は私をかばって・・・・。私のせいだ。私のせい、私のせい、私のせい・・・・。
「ああー、最高の記憶ねー。」
と、美虎が言った。私の耳にはそんな言葉、一つも入ってこない。
「やっぱり生かしておいて正解ね!」
私にもっと力があれば・・・・灰火はあんなことにはならなかった。今も生きていたはずだった・・・・! 灰火!!!