二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 違う、君は、 ( No.32 )
- 日時: 2011/10/25 20:41
- 名前: 兎子. ◆.UAIP8bSDA (ID: Lnsp.uM2)
——キラリ、と妖しげな光を放つその石が月光を浴び、更に艶やかな不思議な光を放つ。
ぐるりと混ざる感覚に緩く口角を釣り上げながら、私は青色のライトに照らされている少年へと手を伸ばした。彼の名前はガゼル——否、涼野風介——私は彼のことを、何も知らない。
何も映さない翡翠の瞳をじっと見つめていると吸い込まれてしまいそうになる。綺麗な色をしているのに、何時も抑揚が無く、淡々とした声で話すものだから、——光を帯びず、ただ冷たい瞳をしているようにしか見えない。
それでも私は、彼の良いところを知っている。
「——凪、またキミか」
呆れながらも、私を受け入れてくれることや、泣いている私の頭を優しく撫でてくれること。彼は彼なりに、不器用に私を励ましてはくれているのだ。だから私は彼のことを冷たいとも思わないし、必死に吉良星二郎の為に動いていることを馬鹿みたいとも思わない。
ただ、ほんの少し悲しくは思う。
彼のサッカーセンスは抜群だ。彼だけじゃない、エイリア学園の——お日さま園の皆のサッカーセンスは、エイリア石が無くても、もう少し練習を積み重ねれば世界に通じるものもあるかもしれない。彼や南雲や基山と言ったチームのキャプテンを務める者ならば尚更だ。
つまり、磨けば光る宝石の——原石と言ったところか。なにのに、吉良星二郎の為に、愚かな行為をする彼等の本当の、実力を、を何故、何故吉良星二郎は分かってやれないのか、ほんの少しだけ、悲しくなった。
じんわりと目頭が熱くなる。目の前の彼は、何も知らず、吉良星二郎の恩返しになるとそう考えて純粋に良いことをしているつもりなのだ。
「……涼野、」
「どうしたんだい? ——キミが悲しそうな顔をしてるなんて珍しいけど」
服裾を軽く引っ張ると、涼野は驚いたような表情を微かに浮かべ、そしてクスリと笑って私の体を緩く抱き締めた。やんわりと、優しく。
涼野は私が落ち込んでいる時、こうやって慰めてくれる。頭を撫でてくれるし、抱き締めて優しい言葉を掛けてくれる。だから私は涼野が好きなのに、——でも、涼野を愛するということは出来なかった。
こんなにも近くて、こんなにも綺麗な涼野を、私なんかが愛することは出来なかった。私は、止めることが出来ないのかな。涼野を、基山を、南雲を、緑川を、砂木沼を、——吉良星二郎を、救えないのかな。吉良ヒロトもこれを望んでは居ない筈なのに。
「——凪?」
黙りこむ私を見て涼野が不安げに此方を覗き込んでくる。私は軽く笑って何でもないよ、とだけ返し、再度涼野の胸に顔を埋めた。
違う、君は、悪くないんだよ。
◇
涼野難しい
10/25-兎子〆