二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- きみとずっと、いっしょにいたいの。 ( No.33 )
- 日時: 2011/11/02 16:53
- 名前: 兎子. ◆.UAIP8bSDA (ID: a1/fn14p)
「——南沢さん、」
震える唇が、オレの名を紡ぎ出した。目の前で泣きそうな表情を浮かべてオレをまっすぐ見据える迷子は今にも崩れてしまいそうで、嗚呼、この子はどうして人の為にこんな表情を浮かべられるのだろうか。ゆっくりと口許に笑みを刻めば、迷子はほんの少しだけ安堵したようで。でも、すぐにキュッと唇を結びオレを睨んでくるから小さく苦笑し、その小さな頭を撫でてやる。そうしたら迷子は泣き出しそうな顔になってオレに思い切り抱き着いてきた。震えている小さな背中が、妙に愛しい。
「ごめんな、迷子」
小さく、後悔するように呟けば迷子は小さく嗚咽を漏らし、何で、と呟いている。じんわりと迷子の涙がオレの服に滲み込む。悲しいのも苦しいのも、きっとこいつだけなんだろう。オレは、誰かが悲しむなんてことを考えたことも無い。置いていかれる寂しさすら、知らない。
転校する、と。そう言った時の迷子の反応は明らかにショックを受けた様子を見せ、焦ったようにオレを引き留めはじめた。転校すると決めたけど、迷子にこんな反応をされるなんて思ってもみなかったから、どうしようかと少しだけ迷った。其れでも、オレは松風とかいう奴にはもう着いて行けないと感じたから、——すまない。
迷子は暫くオレの服にしがみついてぐすぐすと泣いていたが、やがて顔を上げると傷付いたように笑った。
やめ、てくれ。
「南沢さんの道ですから、私、何も言えませんよ」
「——めい、」
「大っ嫌いです、南沢さんなんか」
「——迷子っ、」
怒ったような、冷めたような口調——でも、まや泣きそうな表情を浮かべて去っていく迷子を引き留めることはオレには出来なかった。何て弱い人間なんだろう、なんて愚かな奴なんだろう。
もし、もしも——オレが、本当のサッカーを認めていれば、こうなりはしなかったのか? 内申書だ成績だ、そう言って逃げていたのは自分だったのに。責任を松風に押し付け、自分は逃げる? 馬鹿らしいよ、な。今更サッカー部になんか戻れねえよ。
『 さようなら 』
そう言って笑った迷子の顔からオレは目を逸らすことしかできなかった。
◇
後悔してももう遅いと漸く気づいた南沢さん。
がっさんくにみさわェ……
11/02-兎子〆