二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 Episode/004. ( No.5 )
日時: 2011/11/09 10:47
名前: 兎子. ◆.UAIP8bSDA (ID: YJqsGTFd)

 あの後、目が覚めた凪は急いでコトアールエリアへと足を速めた。大事にはならなかったものの、薄暗くなってきた頃にようやく戻ってきた凪を見たロココと夏未は勿論心配し、大介に至っては心配ではなく怒っている様子を見せていた。こってりと怒られた後に、凪はリトルギガントの宿舎にある自室のベッドへと倒れ込んだ。
 ちらちら、と開け放たれた窓から迷い込んだ小さな虫が明かりの下で飛んでいる。
 其れをぼんやりと眺めつつ、凪は小さな掌を明かりへと翳してみた。小さく開いた指と指の隙間から明るい光が差し込む。ゆっくりとその手を心臓部分へと押し当て、凪は呟いた。生きてる、と。死にたいと思ったことは無いし別に今現在死にたいなんて馬鹿なことを考えているわけでは無い。ただ、自分が生きているかどうか、時折分からなくなってしまう。

「——嗚呼、明日は確か、」

 ぽつりと小さく呟く。明日は確か、イナズマジャパン対ナイツオブクィーンの試合が合った筈だ。イナズマジャパンはこれが世界大会本線の初戦になる。そう言えば、イナズマジャパンの、——否、円堂の元に何人かの他国のキャプテンが集まって何かをしていた、という情報を聞いた気がする。
 ほかにも、親善パーティとかが有ったりした、とか。凪は楽しそうに笑う弟のことを想像しながら、ゆっくりと意識を落とした。目を閉じ、ものの数分も経たない間に凪の意識は深い眠りへと落ちていた。





 翌日、目を覚ました凪は急いでウミヘビスタジアムへと向かっていた。ナイツオブクィーンとイナズマジャパンの試合を見逃すわけにはいかない。偵察にも似ているが、彼女が応援しているのは勿論イナズマジャパンだ。
 大方、キャプテンである弟は試合に必ず出るのだろうと考え凪は独りでウミヘビスタジアムへと向かう。夏未やロココと一緒に行こうとも思っていたのだが、生憎寝坊をしてしまい試合ギリギリに漸く辿り着いたわけで。それに、皆の姿なんて見かけなかったし——。
 実況の声と歓声が響き渡る中、凪は適当な席に腰掛け、スタジアム内へと視線を配らせた。フィールドに立つ青いユニフォームの中にキーパーの証である黄色のユニフォーム。記憶の中にほんの微かに残る面影とその幼い顔立ちは重なった。

「守、」

 大好きな、弟。
 ピッチサイドで行われているコイントスの様子をうかがっている円堂に凪は口元を綻ばせた。

「やっと——会えたね!」


( だいすきなきみに )