二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: KAMISAMA! 【銀魂】 ( No.3 )
- 日時: 2011/10/15 00:26
- 名前: ちづる ◆iYEpEVPG4g (ID: WPJCncTm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
01
愛というものの定義について考えてみた。例えばひとりの人間に複数が好意を持ったとする。好意の大小はあれどそれはまだ愛と呼ぶに値しない。1対1でどちらかがどちらかを好きだったとする。反対にその好かれた人間の方は相手に無関心だと仮定する。またそれも愛とは呼べない。そして2人が互いに認め合い他の誰にも比べぬことのできない何かを持っている場合。それでもまだ愛と呼ぶには少々軽々しい。そこまで考えたところで愛の実態が不確かなものであることを知った。恋と愛の堺も判断付け難いものだと知った。愛は何処にあるのか、それも理解できなく、それ無しに愛の定義など語れるはずも無かった。愛の所在から始めるべきがありそうだ。原点に戻ってシンプルに自分に問ってみた。「あなたに愛はありますか」と。ただ俯きながら答えを探すことしかできなかった自分には愛は無いのだろうかと少し心配になった。きっとそれを自分で愛と認めることができたなら、それは愛であるのだろう。わたしにはそれができないから、愛の所在だとか定義だとかくだらないことで悩むのだろうか。
「あら、珍しいですねこんな時間に。いつも来て下さってありがとうございます。」
ぺこり、と頭を下げる。つい先程お隣の定食屋さんが店を開けたので、正午か、すこし過ぎたぐらいだろう。太陽の暖かな日差しが差し込む。いつもはこの時間帯なら2,3人程度、平日はからっぽの日も多い。ちりん、とあざみのお母さんが手作りした陶器の小さな鐘が鳴る。いつもなら店の表に立っているから、食べていきますか、持って行きますか、と訊くところなのだが、たまたま店の奥に引っ込んでいたためか、来客には気付かなかった。いつもは夕時に来る銀色の髪の毛をしたお客さん。わたしの特別な、お客さん。
「どーも、今日は店の休日だからあ。とりあえずあざみちゃんいつものヨロシクー。」
「はぁい。」
くすりと笑みを零して作り置きしてあるお団子を取りに行く。少しだけ炙ってあるだんごは、まだなんにも味をつけていなから、甘辛い醤油味のたれに浸して絡める。それを串に刺していく。この辺では江戸情報誌に取り上げられたこともある、あざみ自慢のみたらし団子の完成だ。それを3本作ってから、よもぎとピンク色をしたいちごのお団子にあんこをつける。自分としてはみたらしをもっと食べて欲しいのだけれど、坂田さんはあんこの方が断然好きみたいだ。お客さんにお出しする普段の皿では乗り切らないから、大皿を2つ用意。調理場を出て直ぐの席に彼は座っていた。
「はいどうぞ。でも坂田さんいいんですか?こんな週2スペースで甘いモノ食べに通ってるとまたお医者さんに言われますよ。」
「いいのいいの。俺は甘いもん食って死ねるんなら本望だから。」
きゅう、と胸がつまる。彼のいつもの何気ない笑いですら恋をしてしまうのだから、わたしも末だなあと思う。恋、という認識はあるのだ。けど付き合いたいとは思わないし、告白する気もさらさら無い。ただずーっとこのままゆったりとした時間が続いてくれれば、全然それでいい。むしろ、満足?
会話が弾んで行くうちに、次々とお皿の上のお団子が消えて行く。そのうち席に座るよう催促されて、ちょこんと遠慮がちに畳の上に座った。坂田さんの家のちょっとばかし大きい犬が逃げたりだとか、居酒屋のババアがうざいだとか、世間話をたーくさんした。にこにこ笑っているだけで、もしかしたら彼はつまらないと感じているかもしれないけど。別にいいのだ。
「ここの団子旨いよなあ。」
最後のひとかじりを口にしたところで、あんまりにも突然接点の無い事を言い出すものだから、何かあったのか、と疑う。
「そうですか?元は両親の店なんですけど、同じ味出せてるか心配で・・・。」
「でも前より質が落ちた。」
「えっ!?え、何処が?やっぱ坂田さんみたらしあんま食べないのもわたしのせい!?」
「嘘だよ。つーか俺あんたの両親がしてた頃なんて知らねえし。でも俺が週1で通ってるスイートロイヤルストロベリーパフェに比べたらどうかは・・・。」
あざみの顔がどんどん暗くなって行く。終いには泣き出してしまいそうな雰囲気にもなっていて、いつもみたいに笑って嘘だよと言う予定だったのが言うに言えない状況だった。必死でどうにか笑いを取ろうとあざみに声を掛けるが、どうやらあざみは気付いてしまっていた。ふと自分が落ち込んでいると、にんまりと笑う銀髪の人間の顔が其処にはあって。腹立たしくて冷たい目で一瞥すると、にこりと客引きの時の誰だって信じてしまうような満面の笑みを浮かべる。今度はさっき追い詰めていた側があっという間にさあっと血の気を引かせた。
「あ、いや、すんません・・・、嘘。」
「坂田さんいい加減にしてくれますか。人を騙くらかして遊ぶのも大概にして下さい。」
ね?とあざみの言葉と同時にバックの虎が吼えるのが見えた。そこにはさっき食べ終えたばかりの串が1本だけ手に握られていて、いい加減にしないと刺すぞコラァみたいな威圧感がその場を支配していた。たった串一本。可愛らしい反抗の筈なのに、まるで喉元にナイフを突き立てられているよう。すっかり小さくなってしまった坂田さんが面白くてつい、
「なんだか親に怒られる子供みたいですね。」
と。
「うるせェ!」
素敵な捨て台詞を残して、のれんが揺れる。その先の銀色のひとが、わたしは好きだ。そんなことも認めず言えず、だから言い訳として愛の定義と素人が書いた穴だらけの推理小説のような、感情論と理屈を考えては悩んでみる。