二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: コナンと黒の組織の死闘 名探偵コナン File7 up! ( No.18 )
- 日時: 2011/11/03 19:07
- 名前: 未熟な探偵シャロン ◆jtHtMr3tGQ (ID: QCG7hJgu)
File8 賭け
「どこへ行く、シードル」
同じ質問を二回繰り返して、シードルにジンは言った。
リサことシードルは自分の背中に冷や汗が落ちていくのが、嫌というほどわかった。
シードルは平然を装いながらこう答えた。
「別に、なんでもありませんよ。ちょっとトイレに行きたくなったので。では、失礼」
シードルはジンから逃げるように去ろうとすると、急に腕をつかまれた。
これが好きな人であったら、仲のいい男友達であったら、意識してドキドキいってて、かなりいい感じに映るのかもしれないが、相手はジン。
ジンの手は普通に温かいのだが、シードルに感じるのは、氷のような冷たさだった。
シードルは振り返り、ジンを見る。ジンの目は帽子で隠れて見えない。
「ポケットにあるCDを出せ」
「はぃ?」
そういわれて、心臓が大きく跳ね上がった。
ジンはゆっくりシードルの方を向き、射るような視線でシードルを見た。
シードルはゆっくり、もう片方の手でポケットを探り、CDケースを取り出した。
「ただの……音楽ですよ?」
ジンに手渡し、ジンはCDを見る。
CDには今流行のバンド名が印刷されてあった。
「よかったら聞いてみます?ジンには興味のない音楽だと思い———っ!?」
ジンはすばやい動きで、シードルの首をつかんだ。
ジンはシードルを壁に押し付けて、コートの中から銃を取り出した。
その銃口をシードルの額に当てた。
「あの方からの命令だ。お前を殺すようにと」
「あ……ぐっ……うぅ……」
徐々に首がしまっていく。
シードルは手を離すように試みるものの、ジンの力のほうが圧倒的に強かった。
「わ、私が……何をしたとでも……言うんですか……」
「お前はスパイだろ。組織の情報を持ち出そうとした」
「組織の情報なんて……持ってませんよ……」
「あるだろ、お前の白衣の内ポケットに」
「くっ……」
ジンは後ろにいるウォッカに頷き、ウォッカはシードルの内ポケットを探ろうと手を伸ばした。
その瞬間、シードルは隠していたナイフを右腕の裾から取り出して、思いっきりジンの腕にさした。
ジンはかすかにうめき声をあげた。
ジンの手はかすかに緩み、シードルは隙を見て全力疾走した。
ジンはよろめきながらも、拳銃を逃げていくシードルに向けた。
引き金を引き、銃弾はシードルに向かって猛スピードでいった。
「ぅあっ!」
銃弾はシードルのわき腹をかすった。
シードルはよろめきながらも、走った。傷口を手で押さえて。
シードルは目の前にあったガラス窓を突き破った。このぐらいのことは前になんどもしていた。……父親の真似だが。
しかし、ここは五階。下に何も無く、ただ地面が覗いていたら、無傷ではすまなかっただろう。
だが、下にはちょうど木々が生い茂っていた。
木々がクッションとなり、シードルは切り傷だけで済んだ。
体制を整えて、走り出した。
一方、ジンは無線でこう伝えた。
「キャンティ、コルン!やつがあっち行った!しっかり狙え」
《あいよ!可愛い子猫ちゃんの頭をぶち抜いてみせるさ!》
建物の屋上では、狙撃銃を構えた二人組みが、シードルを目で追っていた。
「俺、頭、うつ」
「えぇ〜、それはアタシがやる!」
「嫌」
「チッ。じゃ、アタシは心臓を狙うよ」
キャンティ、コルンと言われた、男と女は奇妙な会話をして、狙撃銃についてあるレンズを通して逃げているシードルを見た。
「白衣は最高。真っ赤な血がハッキリと写るからね。3、2、1でいくよ……3、2、い……っ!?」
キャンティはレンズから目を離した。
「獲物、いない」
「どういうことだい!?さっきまでいたじゃないか!」
《どうした?》
「獲物がいなくなっちまったんだ!」
《よく探せっ。まだ遠くにはいないはずだ》
二人はレンズでいたるところを探したが、いなかった。
キャンティは苛苛した様子で、コルンに怒鳴りつけた。
「場所移動するよ!まったく、どこいったんだ……」
キャンティは舌打ちをした。
シードルはというと、シードルは前から穴を掘っていた場所に隠れていた。
そこをなんとかして、人一人が入れる状態にして、隠れ家のような感じにしていた。
もちろん、外からは全くわからない。
「ハァハァ……。くそ、救急箱でも持ってくれば……」
耳につけている小型携帯からはノイズの音ばかりで、たまに兄のアルフィオの声が聞こえる。
しかし、シードルは無視して、小型携帯を取り、かかとでなんとか踏み潰した。
証拠を残してはいけない。
もちろん、組織の建物にも自分を証明するような物は一切置いていない。
組織に登録している自分のことも、架空の人物。
一旦行方をくらましたら、絶対にわからない。
シードルは血だらけの左手で、ズボンのポケットを探る。
そして、目的のものを取り出して、笑みを浮かべた。
「お兄ちゃん……もし私から一週間、連絡がこなかったら、ちゃんとここに来てよ……」
左手には赤と白のカプセルがあった。
組織の建物の研究室に、奥深く眠っていた薬。
名前は『APTX4869』。
組織にいたシェリー、つまり宮野志穂が作った薬。
死ぬかもしれないが、記録によれば一匹だけ幼児化したマウスがいたという。
シードルはそれに賭けてみたかった。
死んだらしょうがない。けど、もしも、小さくなれたら……。
かすかな希望を胸に、APTX4869を口に放り込んで、その直後、意識を失った。
薬によるものなのか、ただ眠たかったのか、傷のせいなのか、シードルにはわからなく、深い眠りにおちた。