二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: コナンと黒の組織の死闘 名探偵コナン File8 up! ( No.19 )
日時: 2011/11/11 17:17
名前: 未熟な探偵シャロン ◆jtHtMr3tGQ (ID: QCG7hJgu)

File9 匂い


「———そして、私は運よく生き延びた。力は少ししかなくって。かなり眠っていたクセしてね。でも、ここにずっといるのはまずいから、奴らに見つからないように、その場を離れて、あなた達に遭遇したってわけよ」
「ふぅん……」


時計は八時半を指していた。
長く話したような気がしたが、30分しか話していないことに、愛理は少々驚く。


「お兄さんに連絡しなくていいの?今頃、心配してると思うんだけど……」
「あ」


愛理は半笑いを浮かべた。

(オイオイ……)

今日、何度愛理に呆れたのか。こんな人がどうやって組織にうまく潜入してたのか、不思議に思った。
愛理は博士の電話を借りて、部屋の隅で話し始めた。


「何だか不思議な子じゃの……。高校生のしっかりた感じもあれば、本当に子供みたいな仕草もするし……」
「全くだよ。所で、博士、灰原は?」
「あぁ、哀君は……」


地下の研究室に繋がるドアを博士は目で教えた。


「愛理から貰ったCDを解読してるのか……?」
「多分な」


すると、急に地下室のドアが開いた。
白い白衣をまとった哀が立っていた。


「何よ、二人してここをジロジロ見て」
「あ、いや、別に……。何しに?」
「喉が渇いたから、水を飲みに来たのよ」


哀はキッチンに行った。蛇口をひねる音がしたと思ったら、すぐに水の出る音が聞こえた。
愛理は受話器を持って、コナンのいる場所に来た。


「お兄ちゃん、すっごく安心してた。まぁ、当然か。明日、服とか色々届けに来るって」
「え、お兄さん、博士の家知ってるの?」
「ううん。毛利探偵事務所のほうに。良かったら会ってみる?私と違って、しっかりしてるし、イケメンだよ」


どうやら愛理は自分の事はドジだとわかってるようだ。
コナンは密かにお兄さんがしっかりした人間であることを願った。
すると、突然チャイムが鳴った。


「何じゃ、こんな夜に……」


博士が玄関に向かった瞬間、キッチンのほうでコップの落ちる音、水がこぼれる音が同時に聞こえた。


「哀ちゃん!大丈夫!?」


愛理とコナンはキッチンのほうに走りよった。
哀は両手で両腕をつかみ、抱きしめてるような格好で、うずくまっていた。


「哀ちゃん、怪我は?」
「……」
「哀ちゃん?」


愛理は哀の顔を覗き込む。
哀の表情は強張っていて、視線は床に向いてるが、床を見てるような感じではない。
すると、哀は震える手でコナンの服にしがみついた。


「灰原……まさかっ……」
「博士を……博士を止めて!……こ、殺される……殺される……」


哀は呪文のようにブツブツと呟いていた。
すると、玄関からドアの開く音がした。
哀は咄嗟に顔をあげて、玄関のほうを見つめた。額からは汗が噴出している。
愛理はただならぬ感じを予感した。
コナンもそう察知して、哀をかばう様に前に出た。


「博士……っ!」


哀はかすれた声で、叫ぶような感じで呟いた。


「昴さん!」
「えっ?」


博士の陽気な声が聞こえてきた。
コナンは期待はずれのような声を出した。


「どうも、夜分すいません。これ、実家からじゃがいもが届いて……。でもこんなに食べられないので、阿笠博士達にもと思って……」
「いやぁ、すいませんねぇ。ありがとうございます」
「いえいえ」


哀は我に返り、玄関に立っている博士と若い男性を見た。
(匂いが……消えた……)
哀は落ち着いて立ち上がった。


「哀ちゃん、大丈夫?」
「えぇ……」


哀は額にある汗を裾で拭った。


「良かった、コップは割れてなかったみたい……」
「まったく、灰原。昴さんは黒の組織じゃないって。あんまり騒ぐなよな」


コナンはまるで子供を叱り付ける様な感じで哀に言った。
哀はコナンを睨み、足音を立てずに地下の研究室に戻っていった。
コナンと愛理はキッチンから出て、昴という男性の傍に行った。


「こんばんは、昴さん」
「やぁ、コナン君。それと……君は?」
「私は安藤愛理です。あなたは?」
「僕は沖矢昴。隣の家に居候してるんだ」
「居候……?」
「工藤新一君の家だよ」
「へっ?何で、新一君の家に?」


愛理はコナンに目をやった。


「実は、僕の住んでいたアパートが火事になっちゃってね。犯人はコナン君が捕まえてくれたんだ。でも、住む場所を失って、阿笠博士にここに住まわせてくれるように頼んだら、コナン君が工藤新一君の家は今誰も使ってないから住んでいいよ、って言われたんだ。それで、新一君に断って、僕が居候してるのさ」
「へぇ、そうなんですか〜」
「じゃ、僕はもう戻るよ。それではおやすみなさい」
「おやすみなさーい……」


昴は隣の新一の家に向かって歩いていった。
博士はドアを体で閉めて、じゃがいもが入ったダンボールをテーブルの上に置いた。


「ねぇ、哀ちゃんはどうしてさっき……?」


愛理は哀がこぼした水を雑巾で拭きながら、コナンに尋ねた。


「あぁ。灰原は組織にいる人間についている独特の匂いを感じることができるらしい。それで、度々組織の人間が傍にいるときは、さっきのように過剰に反応するんだ」
「じゃ、じゃあ、さっきの沖矢昴って人も……!?」
「いや。それはねーよ」


コナンはきっぱりと否定した。
愛理は体を起こして、首をかしげた。


「どうして?」
「だって、昴さんは……ホームズファンだし!」


愛理は頭が真っ白になった。
ついでに目も点になってるだろう、そう愛理は確信した。


「え?……な、なんで?」
「ホームズファンに悪い奴なんていないからよ」
「……あ、そ……」


愛理は消え入りそうな声で、返事をした。
愛理は窓側に行き、昴が居候している家を眺めた。