二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鬼灯の冷徹・APH:愛情をたくさんあげる ( No.12 )
日時: 2011/11/07 19:05
名前: 千李 ◆2wQbNMYBsg (ID: rCT1hmto)




「どういう、事だよ、白虎!」
 肩幅部分を掴んで俺が問いかければ、白虎は怪訝そうな表情を浮かべた後に俺の顔から視線を逸らした、それでも俺は折れずに白虎に詰め寄る。
「なあ、ホオズキって、怪我、だろ? 子を、身篭った、んじゃ、ないよな?」
 怪我でありたい、とこの欲求で俺の脳内は満たされていた、そうであってほしい、そうでありたい、そんな気持ちがごちゃごちゃになって俺の心に淀みいている、既に俺の頭はパンク状態で我を失っていた。
 ホオズキは薬草でもあり堕胎薬でもある、昔遊女等が堕胎薬として使っていた事で有名でもある、そんなものを白虎が求めている、認めたく事実が俺の頭を駆け巡る。
「………………」
「な、あ、白虎!」
 自然と俺の双眸から透明な液体が伝う、大好きな人が誰かと情事を交わし子を身篭った、喜ばしいことなのか分からないし悔しい気持ちと、その身篭った新しい命を絶とうとしている、即ち、今白虎のお腹にいる新しい命が消えてしまう、それを消そうとしているのが白虎だというショックなのか分からない。
 白虎は瞑っていた目を開けてこちらを見つめた、やはり表情はさっきよりも憂いに帯びていて、今度はなんだか泣きそうな雰囲気だった。
「そうよ、私のお腹に、赤子がいるの……大切な殿方との間に出来た、私の大事な大事な子供、私の血を受け継いでいる……神獣、とても大事な血が流れている……」
「っ!」
 俺は絶句した、目の前が急に真っ暗になったような雰囲気に襲われた、全身を流れている血がいきなり止まったような感覚にもなった。
白虎に子供が出来た?
誰との?
いつ?
どこで?
どうして?
「じゃあ! 何で殺そうと!」
「完璧じゃないの!」
 俺の声を遮るようにして白虎は小刻みに震えながら大きな声を発した、帯で見えないけど、たぶんまだあまり子は成長していないと思う。
「完璧じゃ、ないって、どういう事だよ」
「この子は、完璧な神獣じゃない、人間の血も混じっているの……」
「なっ……!」
 神獣と人間の血が混じった子なんて、聞いた事も無いし見た事も無い、否、そんなものが存在出来るのか? 未だにそんな例なんて聞いた事がない。
人間と神獣の血が混じっている子、正確な人間でもないし、正確な神獣でもない、一生自分がどんな種族なのか分からないまま一生を過ごすのか? 神獣にもなれない人間にもなれないというレッテルを一生背中に貼り付けて、下手をしたら晒し者になるかも知れないような人生を?
 神獣と人間の恋なんて聞いた事がない、ましてや情事を交わせるのか? いや、実際にそう言っている人物が目の前にいる、人間か神獣か分からない子供をお腹に宿している……あ……もしかして……。
「人間か、神獣、どちらでもないから、堕胎するのか?」
「っ…………」
 白虎は黙って頷いた、ああ、そうか、だからか、一生晒し者や恥じらい者として生きていって苦しい思いをさせるくらいならいっその事殺して楽にしてやって、新しい命としてまた生まれ変わらせてやろうとしたのか? 白虎らしい考えに俺は息を黙って呑んだ、だけど、そんなのは間違っている。
「だからって、殺すのかよ、せっかく最愛の人との間に出来た子供なんだろ? たとえ混血でもお前が一生を通して守ってやれば良いじゃ無いか! お前がそう簡単に愛する人を殺すような奴だったのかよ!」
「私も、いつか死ぬの! そうしたらこの子はどうなるの? 混血人間、種族も分からないという理由で苦しい思いをするかも知れないのよ! だったら私以外の元へまた生まれ変わって幸せになった方が」
「そんなのは自己完結だ! お前のお腹にいる赤子はお前に母親になって欲しいからお前の元へやって来たんだろう! その想いをそんな理由で踏み躙るのかよ! 例え、苦しい人生が待っているとしても、それでもお前のお腹にいる赤子はお前を選んだんだ! この人の元へ行きたい! この人の子供になりたい、そういう思い出この赤子はお前のお腹に宿ったんだろ!」
 頭が爆発して想いを全てぶちまけると白虎は驚いた表情をした後に涙をボロボロ流して崩れ落ちた、嗚咽を数回した後に声をあげて泣き出した、俺はそのままゆっくり膝をついて黙って白虎の背中をゆっくり摩る。
「人間の奴には、言ったのか?」
「う、ん……一緒に、育てよう、って……」
「なら、良かったじゃないか、そう言ったんだから、何で殺そうとしたんだ」
「自信、なかった……あの人は近いうちに死んでしまう、だから、そこから先、どうすれば……!」
 確かに、女としてみれば支えがいないという事は大きな問題になってしまう、精神的に、何かが抜けてしまうかも知れない、俺は白虎を抱き締めて。
「そいつが死んでしまったら、またここへ戻って来い、その時は俺も協力してやる」
 そう耳元で囁くと白虎は「有り難う」と言って俺の肩に額を乗せて来た、俺はゆっくり彼女の銀色に輝く髪の毛の上に手を乗せて子供をあやすようにゆっくり、ゆっくりと撫でた。



 それから数年後、彼女の子供と俺の子供が出会うのはもう少しだけ先の話……。

Fin